「現れた音」 コンクリートの上に砂がまばらに散っている。 そこを僕の運動靴が乗る。 ギシギシと音が鳴って、気分が悪い。 あぁ、砂とコンクリートが擦れているんだなと思う。 擦れるとこんな音が出るのかとも思う。 なんで音が出る? 何を伝えるため? 喉の一部分を震わせ、空気に乗せて、相手に信号を送る。 それには個人の意志がある。 相手に何かを伝えたいという。 ただ、僕にはコンクリートの上の砂を踏んで誰かに何かを伝えたい、というのはない。 ないなぁ。 ただ誰の意志にもよらない音が、そこには現れた。 その音が。
「この指にとまる僕たち」 ずっと一人だ。 生まれてこのかた、僕はずっと一人。 何にも変わらない。 例えばちょっと習う前よりはピアノがうまくなったりはしたけど、今はもう弾かなくなって下手になってるだろう。 そうやってちょっとずつ自分の能力に変化はあるけれど、基本的には変わっていない。 よく、<今の俺はあの時の俺じゃない>って言う人がいるけれど、(そういうセリフを何かの物語で聞いただけかもしれない)今も昔もその人は<俺>には違いないわけなのか・・・という冗談は置いておいて、とにかく本当に違うのだろうか?と疑わざるを得ない。 そんなに変えなければいけなかったものを人に宣言までしておいて、 もし変わってなかったらどうするのだろう? 大袈裟だな、と思う。 変わった変わったって、そんなに気安く言うもんじゃ焼き。 しまった、ついつい<もんじゃない>って言おうとして、これだ。 そう、とにかく・・・考え方がたとえ変わろうと、僕自身が変わるわけじゃない。 頭痛がしなくなっても、頭痛があったことは覚えているし、忘れても僕は僕だ。 何が変わっても、僕は僕なんだ。 僕は一人なんだ。 だから、僕は自分の指に自分の存在の全部をとまらせるんだ。 その指にとまれるのは僕だけなんだ。 これって結構贅沢なことかもしれないけど、どっかで飽きちゃうんだよね。 でも、飽きても逃げないしさ、この指。 案外都合がいいんだ。
―END―
|