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石ノ目/乙一
2001年07月28日(土)
この本、表紙が目のアップで、「ホラー短編集」って書いてあるんだよね。それが間違いだったんだと思う。しかも彼のデビュー作が「夏と花火と私の死体」だったでしょ。ちょっと怖い話ばかり書く人なんだと思ってたのね。
私は怖い話は嫌いじゃないし、時々読むし、何よりミステリ好きだし。でも、ホラーを開拓しようという気は起きなかったので、今まで読む機会がなかったんだよ。でも、他の本読んでみたら、「ちょっと不思議なせつない話」を書く人なんだと認識が変わったので、この本も読んでみたくなった。
そして読んでみて、やっぱり、「ホラー短編集」じゃないよ〜と思った。(それとも、そう書いた方が売れるの?)

「石ノ目」
表題作。目を見ると石にしてしまうという妖怪(?)を元にした話で、「砂の女」ばりの話が展開する。これはちょっと怪談風な雰囲気が漂っている。
でも、展開は想像がついてしまった。もう少し、違う終わらせ方があったかもしれない。

「はじめ」
電車で読んでいたにも関わらず、ちょっとうるっと来てしまった。
小学生だった主人公ともう一人の友達が、ちょっとした嘘から架空の女の子を作ってしまう。その女の子ははじめという名前で、主人公とその友達の二人にしか見えない。でも、彼らはずっと友達で、何年も一緒に遊んだりしていた。
この話がおもしろいのは、彼ら三人ともが、その少女が「架空の存在」だということをわかっているということだ。少女自身も、自分が架空の存在だということをわかってるのだ。普通は、これはなんなんだ?と悩むところなんだろうけど、それをありのまますんなりと受け入れてしまっていることがおもしろいと思う。そのうえで、はじめの存在をどう現実に重ねていくかがさらにおもしろい。
架空の存在だと三人ともが認めているにも関わらず、はじめの存在は架空の存在に終わらない。そのあたりが泣かせる。最後の一文が、すごいいいなあと思ったよ。

「BLUE」
これも、泣きそうになっちゃったので、一度読むのを中断した。
ぬいぐるみの話。動いて、心もあるぬいぐるみ。王子と王女と白馬と騎士、そして余り布で作られたために、歪んで真っ青な顔をした「ブルー」。
ブルーはかわいくなかったから、女の子の家に買われていっても、見向きもされず、しまいには乱暴な弟のものにされてしまう。
…と、筋を書くといかにも、という感じの童話風の話。展開なども、ほんとにありがちな童話みたいというか…。
なのに、おもしろかった。私、泣きそうだった。
大切なものや、守りたいものがあるということは、どうしてこんなにせつなく泣きたくなるんだろうね。

「平面いぬ。」
腕に彫ってもらった犬の入れ墨が、身体を自由に動き回るという話。そして、自分以外の家族が、そろいもそろって癌になり、あと半年の命と申告される話。
この話でも、不思議なことはなんの抵抗もなく主人公たちに受け入れられている。(個人的には、犬の入れ墨が動くことより、家族がいっせいに癌にかかってたことの方が不思議だ)
話があっちこっち行ってしまって、主題がしぼられてない感じはするけど、なんとなく気持ちはわかるというか、なんだかせつないんだなあというか。
ねえ。家族というのも、せつないね。


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