矛盾スルニモ程ガアル
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2003年06月27日(金) 結果。(後編)

 彼は少しだけ迷った。私は「抱きしめて欲しい」というように両手を広げる。そしてまっすぐに彼を見た。

 弾ける様に彼と私が動いたのは、同時だった。

 彼は思ったよりずっときつく深く私を抱きしめた。私は泣いた。泣きながら、この腕を、この肩を、決して忘れまいと誓う。目は閉じないようにして、できる限り彼の全てを焼き付けようとした。
 私の感触を確かめるように、彼が回した腕を動かす。その手で、髪に肩に腰に触れる。
 回した腕をほどきたくない。
 回された腕をほどかれたくない。
 少し泣き止んでは背中にまわされた強い力を感じてまた泣きながら、私は今までのことを思い出していた。彼と共にあり、そしてそれが当たり前だと思っていた日々のことを。
 思い出せばまた泣けてくる。けれど、どこか私には諦めのようなものがあった。「戻らないつもりだ」と彼が言ったとき、私は、私が彼をそうさせてしまったのだと思った。今までの私の言動や態度が彼をそんなにも疲れさせていたのだと。
 もう、手遅れだ。
 気付くのが遅すぎたことに気付いて私はショックを受けたが、仕方ないと思った。どうあっても今しか気付けなかったのだから、私は。
 だから私は、抱き締められながら彼に謝る。
 ごめんね、恋愛に拒絶反応を示すようにさせてしまってごめんね。けどきっとそれは一時的なものだから、時間が経てばまた他の人を好きになれるようになるから。ごめんね。これから誰かと、幸せになってね。
 そして彼を強く抱き締める。包むように。
 
 ふと、腕にこめられた力が一段と強くなった。
「……っ」
 抑えた声が響く。彼がこらえながら嗚咽していた。泣いてくれていると分かって、私もまた泣きそうになる。そうしてそっと、良かったと思った。嬉しかった。私との別れに泣いてくれるんだと。私のことを、まだ好きだと思ってくれているのだと分かったから。
 彼はいつまでも私を強く抱き締めた。これで離れたら最後だと分かっているから、二人とも離れることが出来ない。
 そんなに泣くのなら、よりを戻せばいいのに。本当はそう言いたかった。けれど私は言わない。よりを戻すと言い出すのは、この場合彼でなくてはいけなかった。そうでなければ意味がないのだ。彼の決断でなければ。そんな気がして、私は何度も言い出しそうになるその言葉を飲み込んだ。
 私をきつく抱き締める、彼の手が私の髪を撫でる。
 ばか。私が頭撫でられるの好きだって、知ってるくせに。そんな風に首筋に触られるのに弱いことも、耳がすごく感じることも、知ってるくせに。
 
 …ずるいよ。



 温かいその手は、私の頬を包んだ。
 



 あ、と思った時には、口付けられていた。
 また涙が溢れてくる。拒むことなど出来ない。
 私達はまるで初めてキスしたときのように、唇を決して離すことなくキスをし続けた。時折彼の舌が私の中に深く入ってきたが、私は唇を触れ合わせること以上のことはしなかった。
 これは悲しいキスだ。そう思った。
 私達は恋人同士じゃない。もう別れているし、彼にはやり直すつもりもない。なのにキスをしている。好きだけど、私達は一緒にはいられない。だから私達はキスをしている。これはなんて、悲しいキスなんだろう。ただそう思った。
 苦しく切なく幸せだから、私はこのまま流されてしまいそうになる。けれどそれは駄目だ。自らあのベッドに誘えば、私は幸せにはなれない。彼がこのまま押し切ろうとしても、私は幸せになれない。
 彼と繋がるときは二人が恋人同士のときだと、私は決めていた。だから必死で自分の心と闘った。抱き締められているときも、キスしている今も、本当は何度かもう離れようと体を動かしたのだ。
 けれど彼がその度に腕に力を込めるから、私を逃がさないようにするから、私はそれでもと彼を振りほどく力などなくそのまま抱かれてしまう。
 越えてはならない線を越えたくなる気持ちに、ずっと抗いながら。

 彼が首筋にキスをしてきた。それはいけないと私は思った。私は彼から身を離し、首を横に振る。彼はたまらなくなったように更に私を強く抱き締めた。どうしても私は、この腕を拒めない。
 私達はたくさんキスをした。たくさん抱き締めあった。激しさが消え穏やかに抱き合うようになった頃、私は残りの勇気をかき集めて
「じゃ、そろそろ帰るね」
 と彼を見た。
「夕飯は?」
 彼は引き止めるような視線だ。
「ううん、いい」
「食べないの?」
「うん」
「どうして?」
「どうしてって…」
 私は彼を見上げた。
「まだ、気持ちがついていかないから…。すぐには友達として、いれない」
 精一杯の科白だった。
「友達としては、無理なの?」
「うん」
「恋人としてなら?」
「それは、大丈夫だけど、でも…」
 苦しく次の言葉を告げようとした私に、



「じゃあ、いてよ」


 と、彼が私の胸を貫く瞳で言った。
 私は大きく目を見開いた。本当に?と聞こうとして、否定されるのが怖くて聞けない。彼は何も言わず頷いて、私にまた涙を流させた。
 言葉が出てこない。
 離れていた距離をもう一度縮めて、私達は唇を重ねる。


 それはもう、悲しいキスではなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…という感じです。
何だかうまく文章にならないから、小説風にお伝えしてみました。(←更に文章になってない)長くなってしまってごめんなさい。まあ要するに、



より戻りました!



ということです。←先に言え。



メールくださった方、掲示板にカキコしてくださった方、これを読んでくださってる方、皆様本当に本当にありがとうございました。
まだいろいろ思うところはあるのですが、それでも一応やり直すようになったことを、ここに報告いたします。






本当にありがとうございました!!(涙)


 
 
 
励まし応援ご助言本当に有難く助かりました。
感謝することしかできませんが、本当に最大限の感謝を。
ありがとうございました。 



                              ぼむ


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