白月亭通信別記
老い先短い残照の日々、
おりふしの所懐を、
とりとめもなく書き留めて…

2001年08月04日(土) 金持ち

 不道徳といえば、金持ちこそ不道徳を敢えてしているのだ。去年の冬,誠太郎がよこした長い手紙にも、およそ富豪とうたわれるほどの人たちは、残らず戦時における暴利によってその財をなしたのだと、るる、のべてあったではないか。もし他人を害し、他人に迷惑をかけることが法律的にも道徳的にも悪というなら、進吉を戦野に狩り出して死に至らしめた権力者や、戦時に巨富をなした財閥こそ、太陽の下に肩身を狭くすべきなのだ。──「橋のない川」(第二部)


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