HOME ≪ 前日へ 航海日誌一覧 最新の日誌 翌日へ ≫

Ship


Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船

  



Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
英国のいたずら文化

トピックがあるような、ないような…。
ウェリントン公爵なので、同時代ネタと言うことで。
私が面白いと思ったのは、むしろ、イギリス人の文化感。

彫像へのいたずらは「文化」、市民が死守 スコットランド
2013年11月14日 13:40 発信地:グラスゴー/英国
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131114-00000029-jij_afp-int

イギリスやフランスの都市…とくに中心部は、彫像だらけと言っても良いほど銅像が山ほど建っていますが、そのような場所だからこそ「いたずらも文化」という価値観が生まれるんでしょうか(苦笑)。

日本はそもそも銅像が少ないし、偉い人の銅像に何かするなどとんでもない!という価値観が先行するから、こういう発想は思いつきませんね。
銅像を建てるという発想そのものが明治以降のものだしね。もともと仏像文化があるから日本にはなじまないのかしらん。
明治以降の銅像はどうしても簡素な服装になりますし、

イギリスの銅像は19世紀以前のものが多いので、金モールやマントちゃらちゃらの礼装で見ていて目に美味しいです。このウェリントン公爵もですけど。


2013年11月17日(日)
ボノム・リシャール

今週はこれといった海外ニュースもないので、お休みにしようかとも思ったのですが、先々週の記事で、ちょっと時間を置いたほうがいいかと紹介をとりやめた話題があるのでそちらを。

先々週、11月1日のやふうニュースを見ていて、200年前の海洋小説ファン的にはあら?と思った記事がありました。

米海軍:佐世保の強襲揚陸艦艦長を解任「漏えいで調査」
http://mainichi.jp/select/news/20131101k0000m040168000c.html

問題の艦は今もめているオスプレイ絡みの問題もあり、200年前の海洋小説的な、つまりニュース本筋の問題点を離れた視点で、このニュースを取り上げるのもいかがなものか? と思って1週間待ってみたのですが、

200年前の海洋小説ファン視点で見てちょっと驚いたのは、問題の強襲揚陸艦が「ボノム・リシャール」という艦名で、かつ佐世保、つまり太平洋西側の第七艦隊所属だったことなんです。
こんな点はニュース本筋の問題点とは全く関係ないことなのですが。
「ボノム・リシャール」は、230年ほど前、アメリカが独立する前の、アメリカ海軍がまだコンチネンタル・ネービーと呼ばれていた時代の英雄、ジョン・ポール・ジョーンズが艦長を務めていたフリゲート艦です。

アメリカ海軍では特別な艦名でしょうし、現代でもその名前を継いでいる艦があるだろうとは思っていました。
でも、ジョン・ポール・ジョーンズが初代ボノム・リシャールで活躍したのは、大西洋でしたので、その名を継ぐ艦は大西洋に所属する艦隊にいるのだろうと思っていたんです。
佐世保と聞いてちょっとびっくりでした。
いや、それだけの話なんですけど。

話題がなかったらお休みにします、とか言うと、3週連続話題があるものなんですね。たまたま毎週更新できてますけど、もし更新がぬけたら、「今週は話題ないのね」と思ってください。

コランタン号は隔月更新のようで、10月末の更新はありませんでした。先が待ち遠しい。


2013年11月10日(日)
スコット・カーペンターによせて

スコット・カーペンター(Scott Carpenter)氏が死去されたことを、先々週のTIME誌で知りました。享年88才。

同氏は元宇宙飛行士という肩書きが一番有名でしょう。マーキューリー・セブン、すなわち米国初の有人宇宙飛行マーキュリー計画のために選ばれた7人の宇宙飛行士の一人、1962年5月に打上げられたマーキュリー・アトラス7号で、地球を周回、帰還しました。

同氏はもともと海軍士官だったのですが、マーキュリー計画終了後は、海軍の改訂居住プロジェクトシーラブ計画に従事し、深海に長期滞在した経験も有します。

このあたりはすべて1960年台の話で、私には歴史の部分なのですが、
私がスコット・カーペンターという人物知ったのは、マーキュリー計画を描いた1983年の映画「ライト・スタッフ」と、海洋小説です。

カーペンター氏は自身の、宇宙や深海での貴重な経験をノンフィクションとして出版すると同時に、フィクション(小説)も2冊執筆しています。私のカーペンター氏の認識は海洋小説作家でもある。
著書のうちの1冊The Steel Albatrosは「海底の戦場」というタイトルで翻訳され二見文庫から出版されました。
これは、ネットで海洋小説ファンの交流が始まった10年ほど前に、海洋小説仲間のKさんから教えていただき、古本やで入手しました。

海底の戦場
http://www.amazon.co.jp/dp/4576930958/
本当に海底を知る人が書いている本だな、というのが実感。元プロが書いた本ならではだと思います。
ギャビン・ライアル(元英国空軍)の航空小説やジョン・ル・カレ(元SIS)のスパイ小説同様、第三者の想像だけでは描けない世界を読むことで体験できると思います。

当該のTIME誌は表紙がベネディクト・カンバーバッチなので購入された方もあるかもしれませんが、P.18のジェフリー・クルーガー(「アポロ13」の著者)によるカーペンター氏の追悼文も是非お読みになってみてください。

カーペンター氏がカリブ海に着水したあとの、ライフボートで救援を待っていた間のエピソードがなるほどと思います。
マーキュリー計画で彼が搭乗したロケットは逆推進エンジンをマニュアルで噴射しなければならなかったために、着水点が500km近くずれてしまいました。そのため救援艦がかけるけるまで40分間、救命艇でカリブ海にただようことになったのですが、カーペンター自身は救命艇をおだやかに揺する波とカリブ海を見下ろし、また頭上に広がる大空を見上げて、深い平穏に満たされ、調和の美しさと差異を同時に併せ持つことに深く思い入った、とのことです。

宇宙と海のシンメトリーとはこういうことなのでしょうか。


2013年11月03日(日)