Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ポーツマスのスピットバンク要塞が豪華ホテルに
海洋小説ファンにはおなじみの英国ハンプシャー州の軍港ポーツマス1マイル沖のソレント海峡に位置するSpitbank要塞は、1878年に完成した人工島で、第一次大戦までは砲台として使用されていました。 写真と地図は下記(英語) http://en.wikipedia.org/wiki/Spitbank_Fort
この要塞というより人工島が、このたび超高級ホテルとしてオープンしたとのこと。1泊朝食付きでなんと360ポンド(53,800円)! ホテルのホームページによると、「あなただけの島」の贅沢を…ということのようです。島へはポーツマス港のゴスポートからモーターボートの送迎あり。
スピットバンクフォート・ホテル(英語) http://www.spitbankfort.com/
周囲をぐるりとソレント海峡に取り囲まれたロケーションは、まぁ絶景と言えば絶景でしょうか? 関東近郊で言えば、お台場の日航ホテルかグランパシフィック、横浜みなとみらいのインターコンチネンタル…というところ?
でも写真を見るに内装は豪華ですが、もとが石造だし海面に近いからかなり湿気はありそうです。 どうせ要塞をホテル化するなら、ホーの丘の高台にあるプリマス要塞とか、ファルマスのペンデニス城とかの方が住み心地…ではない滞在心地(?)がよいのではないかと思ったり。
2013年08月24日(土)
残暑お見舞い申し上げます
残暑お見舞い申し上げます。
今週はニュース更新は夏休みさせていただだきます。なんかもーこう暑いとアタマがまわりませんで。海外にネタはいくつかあるんですが、補足情報を調べなきゃならない(英文HPまわり)のがたいへんで。
私の職場は暦通りでお盆も出勤。夏休みは各部で替り合ってとるということで、帰省のない私はお盆に休んだことがありません。 …ので、ここくらいちょっと夏休みにさせてね。仕事でも英語つかってるんですけど、暑さでぼーっとしているせいか今週は頭の回転が落ちてて、土日休みは英語オフにして頭もお休みさせてもらおうと。
先週の日曜は集英社文庫「夏の文庫フェア」に入っていた角幡唯介氏の「空白の5マイル」というノンフィクションを読んでいました。
空白の5マイルとはチベットのツァンポー川の未踏査区間を指します。 ここはその昔、英国のインド統治時代にインド測量局が踏査・地図作成のできなかった空白域でしたが、人工衛星の時代になり上空からの撮影が可能となり地図上の空白域は埋められたものの、厳しい地形から人跡未踏でありつづけた渓谷です。
「空白の5マイル」という本は、筆者自身がこの空白区域に挑戦するルポルタージュ部分と、これまでこの区域を踏査しようとしてきたインド測量局を初めとする各国探検隊の足跡をたどる歴史書部分から構成されています。
英国の海洋小説を長年読んでいると、未踏区域への挑戦というテーマには繰り返し出会いますが、この角幡氏の視点は、英国の海洋小説や冒険小説で親しんできたテーマを別の角度から眺めることができた…という意味で、私は興味深く読みました。
しかし何というか、本当は角幡氏のこの視点が本来で、ずっと英国人視点でアジアの探検史を追ってきた…という方が、おかしいのかもしれませんけれど。 インド測量局というのは、どうやら東インド会社の所属のようですね、そのあたりもう少し詳しく知りたかったので、アマゾンでこのあたりの専門書もぽちっとクリック入手してしまいました。 専門書はゆっくりと読んでいこうと思っています。
2013年08月18日(日)
読み比べで楽しむ海洋冒険小説
ヨット・モーターボートの月刊誌「Kazi」の9月号(8月5日発売)に、「読み比べで楽しむ、海洋冒険小説」という記事(P.86-91)があると教えていただいて、雑誌を買ってきました。 この9月号には「関東エリア主要マリーナ入港ガイド」という付録(?)がついてまして、地図好きとしてはこの航路図と海図も見て楽しい。
この海洋冒険小説案内は、現在書店で入手できる本について、6種類のジャンル分けで紹介されています。 ジャンル1:捕鯨、ジャンル2:海賊、ジャンル3:漂流、ジャンル4:海上保安庁、ジャンル5:少年少女、ジャンル6:イギリス海軍。 長年海洋小説を読んできましたが、この分類分けはけっこう新鮮でした。「海賊」で1ジャンルは思いつきますが、「捕鯨」と「漂流」という視点がなるほど!と。 確かにこれで1ジャンルですよね。
紹介作品は下記の通り 捕鯨:「白鯨」ハーマン・メルヴィル、「深重の海」津本陽 海賊:「海狼伝」白石一郎、「海賊モア船長の遍歴」多島斗志之 漂流:「十五少年漂流記」ジュール・ヴェルヌ、 「無人島に生きる十六人」須川邦彦 海上保安庁:「太平洋の薔薇」笹本綾平、「怒涛の牙」今野敏 少年少女:「ツバメ号とアマゾン号」アーサー・ランサム 「コンパス・マーフィー」スティーブン・ボッツ 英国海軍:「ホーンブロワーシリーズ」C.S.フォレスター 「ボライソー・シリーズ」アレクサンダー・ケント 「女王陛下のユリシーズ号」アリステア・マクリーン
じつは私の読書傾向は翻訳作品に偏っているので、日本人作者の作品には知らないものもありました。 「コンパス・マーフィー」は2005年邦訳刊行の児童書(原著出版は2001年、作者のポッツは1957年生まれ)ですが、舞台は19世紀半ばの北極海のようです。 読み比べ評がなかなか面白いので、ぜひ本誌を手にとってご覧ください。
「Kazi」という雑誌は、実際に(ヨット、モーターボートに)乗る人のための雑誌なので、英国海軍のところに、オーブリー・シリーズではなく、ボライソー・シリーズが来るのは納得です。もし現在入手可能でさえあれば、ラミジ・シリーズが来ただろうと思います。 最後の最後にユリシーズ号が来るのは誰しもがうなづかれるところでしょう。
日本の海洋冒険小説って北方謙三くらいしか知らなったのですが、保安庁っていう手があったんですね。 さて、明日は本屋に行って未読の日本人作家作品を探さねば。
2013年08月11日(日)
コランタン号の航海 第4話更新
コランタン号の航海「フィドラーズ・グリーン」第4話が更新されています。 サブタイトルであるフィドラーズ・グリーンの意味が明らかに
コランタン号の航海「フィドラーズ・グリーン」 http://www.shinshokan.com/webwings/title05.html 上記ページから「最新話を読む」をクリック。
今回は個人的に興味深かった。 マードックが「神を信じることと、幽霊や妖精を信じることは別次元だと思っていたけど、インドではすべてがごった」なことにカルチャーショックを受けるんですけど、まぁ一神教を信じる人はそうなのかもなぁ…と。 そのあと、マードックとウィタードが「あちら側」とは何?という話をし始めるのですが、何らかの過去をもつウィタードの「あちら側」感覚はマードックとは違うらしい…でもその肝心の過去がまだ明らかにならないんですよ。
日本は多神教で、近所の神社は蔵王権現つまり山の神を祀っていたり、死者の魂は山に帰ると考えられていたりする。 マードックが考えているようなことを現代で真面目に考えたことはないんですけど、彼のように「完全に別次元」と分離できるかというと、たぶん難しいんじゃないかと。
私は漁師さんとか日本で海に生きる人がむかし何を信じていたか?などについては全く知識がないんですけど、 山に関していうと、むかし修験者が入山するような奥山(里山ではなく)は、日本では「あちら側」の異界でしたよね。ロープウェイで立山に行くと、「山に帰った死者が田植えをすると信じられている田んぼ」とかあるでしょう? 山と同じように、海のかなたにも日本では「あちら側」があるのかなぁと何となく思ったりするのですが、少なくとも浦島太郎の民話上では「海の底の竜宮城」は「あちら側」だと思う。
次号、楽しみにしています。
2013年08月04日(日)
アポロ13
先週の土曜日にNHKBSプレミアムでロン・ハワード監督の「アポロ13」の放映がありました。 私にとってはこの作品が、90年代に見た映画のベスト1作品なのですが、ちょっと考えてみたら、今世紀に入ってから見直すのはこれが初めてでした。民放のテレビ放映(洋画劇場)を見たのは99年のことだったのです。
海洋小説好きのお仲間の中にはこの映画が好きだという方が多くいらして、ネット仲間のオフ会で話題になったこともありました。 乗組員を救助に行く米艦の艦長役が、じつは原作者でこの映画の主人公であるジム・ラベル本人のカメオ出演であることも、その時に教えていただきました。 今回初めてそのシーンを確認しましたよ。
ロン・ハワード監督はその後「ビューティフル・マインド」で2001年度アカデミー賞監督賞を受賞します。 この授賞式を放映したNHKBSの番組で解説者から「ここで監督賞をあげるなら、アポロ13にあげれば良かったのに」という発言があったことを覚えているし、私もその時は「まったくだ」と思いました。 ちなみにこのアカデミー賞授賞式に出席したラッセル・クロウはもうオーブリー役の話が決まっていて、役作りのために髪を伸ばしている最中でした。 でも今回「アポロ13」を見直して思ったのは、いや確かに「アポロ13」の方が訴えかけるもののインパクトは強いんだけれども、構成の緻密さでは「ビューティフル・マインド」はよく出来ているんだな、ということ。クライマックスの感動の種類が異なりますから、簡単に比較できるものではありませんが。
この映画が訴える一番のポイントは「人間、智恵を絞れば奇跡もひねりだせる可能性がある」ということでしょう。 二酸化炭素除去装置の工夫とか、4アンペアを絞り出す試行錯誤など、復興途中にある日本が学ぶものは多いと思います。 実際に、節電、防災、除洗や高放射線下の無人作業などについては、この2年で様々な技術開発が進められていますし。 時を経ても、いや今だからこそ価値ある映画だと思ったのでした。
2013年08月03日(土)
|