Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ジュリアン・ストックウィン キッド新刊
ジュリアン・ストックウィンのトマス・キッド・シリーズ8巻が出ました。
ジュリアン・ストックウィン「謎の私掠船を追え」(トマス・キッド8) http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/31263.html 表紙はジェフ・ハント氏。 夜の海が綺麗。 オブライアンにもありましたよね、ハント氏描くマルタ島のグランドハーバーの夜の海。 もっと大きな表紙で見たいなぁ。
私これ7月25日発売だと思いこんでいて(ハヤカワNVは25日過ぎに発売が多かったので)、25日に本屋に行ったら無いんですよ。 これまで早川の新刊で売り切れの目に遭ったことがなかったので、おかしぃなぁと思ってレジの方にお伺いしたところ、 「20日発売でしたが、少ししか入荷しなかったので売り切れました」 と言われて愕然。 自分のことはさて置いて、この事態を喜ぶべきか悲しむべき悩みました。
「売り切れた」という事実は喜ぶべきことだけど、「少ししか入荷しなかった」っていうのは…。 今やハヤカワで続いている海洋小説はこのシリーズだけなので、売り上げ実績がないと続かなくなるかも…と案じており、とにかく売り切れてくれたのは(私自身が入手できなくても、)ありがたいことです。私は他の店の在庫を減らしに行けばいいんだから。 それで昨日、となり駅の別の本屋に探しに行って無事購入してまいりました。 その本屋は残り2冊です。 さぁ皆さん>書店にGo! 少ししか刷ってないらしいので、急がないと手に入らないかも。
はぁぁ、それにしても、 ちょっと愚痴っていいですか? 早川書房で新刊売り切れなんて私、初めての体験でした。 いや25日発売だと思いこんでいた自分が悪いんだけれども、でもハヤカワNVって何時から20日発売になったの?20日はミステリの発売日でNVとFTはその後、SFやJAは月のはじめの10日前後…っていう発売日でずっと来てたと思うんだけど、最近は…たぶん変わってるのね発売スケジュール、でも最近って何時から?っていうか私、じつはハヤカワNVの新刊を買うこと自体が凄く久しぶりで、…たぶん、この前にNVの新刊を購入したのはキッドの7巻だったのではと。
むかしは3ヶ月に一度くらいはハヤカワNVの冒険小説やスパイ小説を買っていたのに、たぶん今でも持ってる文庫の中では早川が一番多い筈なのに、私ったらこの事態はいったいどういうこと!ってちょっと個人的にこの状況を憂慮してます。 21世紀に入ってからの冒険小説にあまり手をのばす気にならないのは、欧米人の描くテロリストをやっつけろ!ネタの冒険物語にあまり共感できないからなんですが、海洋小説は昔ながらの良いものがまだ未訳で残っているのに、出版されないんですよね。
映画化で再版されたジョン・ル・カレを読んで、あぁいいものは時代が変わっても(もはや冷戦の時代でなくても)いぃなぁと思いました。 じつは6月頃は、ル・カレの「スクールボーイ閣下」にすっかり心を持っていかれておりました。 最近は早川文庫の「冒険・スパイ小説ハンドブック」を参考に、ブクオフで未読の昔の冒険小説を探しています。
アレクサンダーケントのボライソー・シリーズはまだ一作、未訳がありますし、パトリック・オブライアンのオーブリー&マチュリンは半分しか翻訳・出版されていません。 ハヤカワもFT文庫などは昔の良いものを再版されているようですが、NV文庫も版権を持っていらっしゃるのなら未訳のものを翻訳出版されていはいかがかと、 いいものはいつになっても良いものです。ル・カレが良い例でしょう? 海洋小説は現代を舞台にするスパイ小説と異なり、もともと200年前の話なのだから、30年たっても180年前が210年前になるだけのこと、現代から見たら、昔に変わりはありません。 出版社さまには、ぜひその当たりをご検討いただきたく、お願いさしあげる次第です。
2012年07月29日(日)
五輪週間
ロンドン五輪開幕で、世の中お祭り騒ぎですね。 ダニー・ボイル演出の開会式ショーは、あぁこれこそが英国人の言う「ウィット(機知)」ってやつね! こちらの予測を見事にはずして裏切ってくれて、思いがけない形で笑わせてくれる。 御年85才の女王陛下がジェームズ・ボンドと一緒にパラシュート降下!? お洋服も合わせていらして、宮殿のシーンは御自身ご出演で(ヘレン・ミレンではなく)、二匹のわんこがまた名演技。
「炎のランナー」も、…素敵すぎる。劇場公開を見に行った(当時はナイジェル・ヘイバースのファンでした)世代ですので、海岸を走る映像のどこをどうパクって入れ替えてあるかわかりすぎてしまい、畳を叩いて笑い転げました。 …こういうの英国のお家芸ですね、いや先週放映(今日も22:00-BSプレミアム放映)の「シャーロック2」もそうなんだけれども、元ネタを知ってるマニア相手に、予測を見事に裏切ってしっぺ返しで笑わせる…おさすがでございます。
聖火を船首に、まるで船首像のようにロングヘアの女性選手が掲げて、タワー・ブリッジの下を抜けるっていう演出に泣いて喜び、でもモーターボートはベッカム自身がちゃんと舵輪で操舵してたので、慣れてるなぁパワーボート個人所有してるんだろうなぁ…とか余計なことを思ったり。
今日午前中に自転車競技を放映していましたが、緑の田園の中を走り抜けるコースが綺麗で、見て楽しいコースっていうのが素敵。 マラソンはスタート直後の選手たちが、どわーっと海軍門を抜けてトラファルガー広場に出てくる映像を、今から楽しみにしています。 (あぁそう言えば、ダニー・ボイルの開会式映像ではチャーチルの銅像が動き出すんですが、あのとき「ネルソンは動かないの?」って期待したのに、それは無くてちょっとがっかりした)
こういうのを見てしまうと、英国なんだから「馬術とボートとセイリングは見たい!」って思ってしまうんですが、 カヌーは1日と2日の午前、馬術は4日の午前に放映があるようですが、ボートとセイリングの放映日がわからない。NHKBSは全種目放映!と言っているので、1日くらいは見られる筈なんだけれども。 セイリングはウェイマスで、イギリス海峡を舞台に競われるので、ぜひ是非みたいのですが。
さて、先週から今週にかけて生じた、とてもマニアックな疑問。 どなたかおわかりの方がありましたら教えてくださいませ。
疑問その1:五輪開会式の国旗掲揚の時に、陸軍と空軍は男女各1なのに海軍が男性2人なのは海軍と海兵隊各1で定員いっぱいになってしまったから??? 国旗を受け取って掲揚台のロープに結びつける役は、女性の水兵さんでした。これが3人目ってこと? まぁロープワークで水兵さんに勝る者はないので、妥当な人選だとは思ったんですが。
疑問その2:先週日曜22日放映のNHKBS海外ドラマ「シャーロック2」、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンが宮殿に呼び出されて(MI5に拉致されて?)行くと、兄のマイクロフトと一緒に縞柄のネクタイをしたハリーという依頼人が待ってますよね。 ハリーはワトソンと握手して、 「やぁドクター・ワトソン、第五ノーザンバーランド・フュージリアーズ連隊」 って言うんですが、こういうこと(初対面のくせして元の所属連隊を持ち出す)をされると、別にシャーロックほど頭が良くなくても、このハリーという男も赤エビ野郎(陸軍さん)だろうって思っちゃうのよね(まぁ海軍さんだとこれが「○△号の軍医」に変わるだけで、同じこと言うことには変わりないんだけどね)。 でもフュージリアーズってなんだっけ?って辞書をひいたら、え?fusiliersって火打ち石銃?そんなのあり?いや英国って今でもありえないものがあるからなぁ…って思ってwikiで調べたら、やはりさすがに今はこの連隊はありません…でも1968年まではあったみたいですよ。そしてドイルの原作(19世紀)でワトソンが軍医として所属してたのがこの連隊だそうですが。でも昔のワトソンの時代だって火打ち石銃ではないわよね?
あ、で知りたいのは、依頼人ハリーのゴールドとブルーの縞柄のネクタイなんですが。 これひょっとして、ジャック・ヒギンズの小説によく出てくるレジメンタル・タイって奴では?って思ってるんですけど、違うでしょうか? 大学の紋章入り指輪みたいに、除隊しても自分の所属連隊のタイを締めてる赤エビさんって多いんらしいんだけど、もしレジメンタル・タイだったらどこのレジメント(連隊)かわかる方あります? なんか彼のあの尊大な態度からして誇り高き近衛連隊くさいんですが。気になる〜。 余談ながら、マイクロフトが「子供の頃は海賊になりたかった」とか言うので、(あんなヒドイ兄なのに)好感を持ってしまった私です。 でもマイクロフト>あなた今やってることはドレイク(海賊)ではなくてウォルシンガム(スパイの親玉)だと思うけど?
以上、どこまでもマニアな私にはまだしばらく楽しい週間が続きそうです。 …呆れないでくださいね。
2012年07月28日(土)
暑い時には南極へ
暑くなったり寒くなったり、気温乱高下激しい今日この頃ですが、皆さま体調を崩されたりされていませんでしょうか? 先週の水曜日(18日)にこの記事をオブライアン・フォーラムで発見した時には、今の季節にぴったり!と思うような猛暑だったのですが、
「こんなの暑すぎる!」と思ったら、南極へ! Too hot for you? Go to Shackleton and Scott's huts http://googleblog.blogspot.co.uk/2012/07/become-antarctic-explorer-with.html
Googleストリートビューの南極編です。 涼しげな映像です。
南極探検で有名なシャクルトンとスコットの小屋の映像もあります。 もっともこちらは、こんな粗末な小屋であの酷寒に耐えたのかと思うと感嘆させられるものです。
アメリカの東海岸と中西部は今年、猛暑なのです。南極の景色を見て涼みたくもなろうというものです。 これに対して、まもなくオリンピックの始まるイギリスは冷夏。
関東は明日からまた暑さが戻るようです。 南極映像をご覧になるのは、今週の水曜過ぎの方が良いかもしれません。
2012年07月22日(日)
マチュリンのスーツ / カエルの王子さま
オブライアン・フォーラムに「マチュリンが着たであろうスーツ」というタイトルで紹介されていたものです。
Day Suit(1800-1817 made) http://collections.vam.ac.uk/item/O13951/day-suit-unknown/
1800-1817年製、医者、弁護士、牧師、学者などのスーツとあります。 マネキンをポール・ベタニーに置き換えて想像してみてくださいませ。 でもこの地味さだと金髪の方が映えるかしらん。
この書き込みをされた方は、下記のジェーン・オースティンのサイトでこのスーツの存在を知ったそうです。
Jane Austen's World http://janeaustensworld.wordpress.com/2012/07/02/a-regency-gentlemans-wardrobe-thomas-coutts-banker/#
このサイトも面白そうですね。
上記と全く関係ありませんが、思わず苦笑してしまったニュース
Frog named after Prince of Wales http://www.hurriyetdailynews.com/frog-named-after-prince-of-wales.aspx?pageID=238&nID=24907&NewsCatID=351
チャールズ皇太子は、絶滅の心配される蛙の保護活動を熱心になさっておられるそうで、この活動に謝意を表して、エクアドルで発見された新種のカエルが「Hyloscirtus princecharlesi」と名付けられることになったそうです。
私が最初に読んだ記事はFrog Prince(カエルの王子さま)という見出しだったんですけど、ナポレオン戦争時代の小説を読み慣れていると、イギリス人はフランス人のことをカエル野郎と呼ぶので、なんだか皇太子さまがカエルの王子さまというのは妙な気がします。
2012年07月15日(日)
勢古宗昭 海洋画展
一昨年に亡くなられた海洋船舶画家 勢古宗昭氏の海洋画展が今週水曜日(11日)から、東京・新宿の小田急百貨店美術画廊で開催されます。
勢古先生の海洋画をまだご覧になられたことのない方は、この機会に是非足をおはこびください。 とても印象的な絵の数々です。
場所:小田急百貨店新宿店 本館10階美術画廊 開催日:7月11日(水)〜7月17日(火)最終日16:30閉場 小田急百貨店の営業時間:10:00-20:30(上記期間中定休日なし) http://www.odakyu-dept.co.jp/shinjuku/event/index.html
2012年07月08日(日)
ボストン OpSail2012
6月30日〜7月5日まで、米国マサチューセッツ州ボストン市で「OpSail2012」という帆船まつりが開催されています。
OpSail 2012(英語) http://www.opsailboston.com/about.html
上記HPの写真によれば、多数の帆船が集結しなかなか壮観な光景で、ボストンにコンスティテューション号を見に行くのであればこのタイミングか?とも思いますが、英国海洋小説ファンとしては、ちょっと今年は抵抗感が、
今年2012年は、米英戦争(1812年)から200年の節目の年…ということで、OpSail 2012では7月4日の独立記念日に米英戦争200周年のイベントがあるそうです。
それは結構なことなのですが、今年アメリカに行っても、心情的に私は米国勝利のお祝いには乗れないだろうなぁと。 ジャックもスティーブンも、アダム・ボライソーも米英戦争では痛い目に遭っているので、コンスティテューション号はいつか見学に行きたいけれど、米英戦争200年のこのタイミングはちょっと…と思ってしまうところが、英国帆船小説の読み過ぎなのかも。
2012年07月01日(日)
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