Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ジェフ・ハント氏ホーンンブロワーの艦を描く
10月19日〜25日まで、ロンドンの画廊 Mall Galleries で開催されている Annual Exhibition of the Royal Society of Marine Artists (英国海洋画家協会展)に、ジェフ・ハント氏がホーンブロワーのレナウン号とホットスパー号の新作絵画を出品されているそうです。
下記パトリック・オブライアン・フォーラムの書き込みにこの絵画の画像が貼り込んでありますが、 http://www.wwnorton.com/cgi-bin/ceilidh.exe/pob/forum/?C350e5a913KHc-7234-845-07.htm こういう書き込みって著作権的にどうなのでしょうか? 問題ありと判断されると書き込み削除されてしまいますので、レナウンとホットスパーをご覧になりたい方はお早めに。
展覧会は明日10月25日午後3時(ロンドン時間)までだそうです。現在ロンドンにいらっしゃる方は至急、行かれた方良いかと 会場のMall Gallariesは、地下鉄ピカデリー・サーカス駅、またはチャリング・クロス駅下車 地下鉄駅からの地図 http://www.mallgalleries.org.uk/index.php?pid=5
こんなこと終了日直前に言われても困る!…て? すみません、でもこの書き込みがされたのは米国時間の10月22日(日本時間10月23日)でして、私も読んだばかり、もっと早くに書き込んでください!とお願いしたいのはこちらの方だったり(英国在住者の方がもっっと切実かもしれませんが)。
この絵画、即売されているようですが、お値段は12,500ポンド、本日の為替相場(1ポンド=155円)では194万円となります。 ホットスパー号は既に売約済のようですよ。
明日は外出の予定があるため、この週末の更新はこれだけです。よろしくお願いします。
2009年10月24日(土)
先週のフォロー
恐縮ながらこの週末多忙で長文が作成できず、今週は先週のフォローのみにて、 短い更新ですが、お許しください。
先週の疑問「なぜリチャードでは問題がなくて、ディックだと問題か」について、 教えていただきました(ありがとうございました)。
ディックって隠語なんだそうですね。 だから問題だということのようですが、
でもディックが隠語って、そっちの方が問題…というか困るのではないでしょうか? あまりにも普通に普及している名前ですし、
隠語としての意味が広まったのは最近のことのようなので、リチャード・ボライソーの時代は問題なかったのかもしれませんが、 しかし、 パトリック・オブライアン好きで知られるついこのあいだまでの米副大統領はディック・チェイニー。 いろいろと困ったりしないんでしょうかね?
2009年10月18日(日)
まだらのディック
今週はニュースがありませんので、不本意ながら(笑)ひじょーにくだらないネタをお蔵出しいたします。
これをオブライアンフォーラム(掲示板)で読んだ時には笑ったのですが、あまりにアホかしらんと思って、ご紹介せずじまいになっていたもの…と言ってもネタ元は天下のBBCニュースなのですが、
Spotted Dick back to council menu(斑点のあるディック、メニューに戻る) http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/wales/north_east/8270460.stm
英国ウェールズのFlintshire郡役所の食堂では、メニューから消えた「斑点のあるディック」が、再びメニューに戻ることとなった。 市民からの投書により、2週間前、郡はメニューに載せられた「斑点のあるディック」という名のプディングを、「サルタナ・プディング」または「斑点のあるリチャード」と改名したのである。
spotted dickというのは、ジャックの好物としてM&Cにも登場するスエット・プディング。 M&Cにはspotted dog(斑のある犬)という名前で、艦での晩餐シーンなどに登場します。dick も dog も異名のようで、いずれもspotted dough(斑点のある練り粉)が訛ったものようです。 小麦粉に砂糖とナツメグ、シナモン、干し葡萄を加え、これをスエット(牛脂…すき焼きの時についてくる白いあぶらの固まり)で練り、茶巾のようにふきんに包んでゆでたものですが、干しぶどうが斑点のように見えることから、「斑点のある練り粉 spotted dough」と呼ばれます。 ウェールズのこの地方では「ドッグ」ではなく、伝統的に「ディック」と訛っているようです。
「斑点のあるディック→あばたのディック」というのは失礼な名前ではないか!これを郡役所の食堂に置くのはどうか?という投書が郡役所に寄せられ、郡はこれに対処し、役所内の食堂のメニューを改名しました。 ところが、「伝統的にディックなのだから、ディックで良いではないか」という苦情が殺到し、郡は2週間後にメニュー名をもとにもどした…というのですが、
これがオブライアン・フォーラムで話題になったのは、もちろん、このプディングがジャックの好物だからなのですが、 日本人的にはピンと来るような来ないような。
わからないのは、「サルタナ(葡萄の一種)・プディング」はともかく「あばたのリチャードSpotted Richard」は問題ないと考えられているところなんですが。 確かにディックはリチャードの愛称ですが、だったら「あばたのリチャード」ってもっと失礼だと思いませんか? このあたりが今ひとつピンとこないんですよね。
でも改名したら苦情が殺到というのは、わかるような気がします。 以前に、関西の公的機関で職員が「おおきに」と言っていた挨拶を「ありがとうございます」と標準語に直す指導をしたところ、市民には大変不評で、「おおきに」に戻った…という話を聞いたことがあるのですが、それと同じような感じでしょうか?
最近、テレビドラマは放送禁止用語に苦労しているようですが、時代劇などは言葉がその時代に密接に結びついているものもあり、なかなか難しいもののようです。
2009年10月12日(月)
横須賀帆船模型展
今年の秋の帆船模型展は、小田急と船の科学館だけではありません。 横須賀の記念艦「三笠」展示室で、横浜帆船模型同好会による秋の帆船模型展が、9月16日〜11月15日にかけて開催中です。 11月からのNHKドラマ「坂の上の雲」放映を前に、三笠の見学も兼ね、横須賀まで足をのばされてはいかがでしょうか?
横浜帆船模型同好会:秋の帆船模型展 期間 : 平成21年9月16日(水)〜11月15日(日) 期間中無休 時間 : 9:00〜17:30(9月) 〜17:00(10月) 〜16:3011月 場所 : 横須賀市の記念艦「三笠」内 特別展示室 神奈川県横須賀市稲岡町82−19 Tel:046−822−5225 京急「横須賀中央駅」から徒歩15分 入場料 : 「三笠」観覧料として 大人500円 高校生300円 小中学生無料
詳細は下記、横浜帆船模型同好会HP http://www5.famille.ne.jp/~ysmc/ トップページより、「秋の帆船模型展in横須賀」の「詳細はこちら」をクリック。
2009年10月04日(日)
三人の女王
先週の火曜日に、BS-Japanでヘレン・ミレンの「クイーン」を放映していましたね。 現在の英国女王エリザベス二世を描いた映画ですが、ミレンは同じ年にテレビドラマでエリザベス一世も演じていて、一世と二世で2007年ゴールデングローブ主演女優賞をダブル受賞しています。 エリザベス一世のドラマの方は以前にNHK-BSで放映されて見ることができたので、これは二世の方も見るしかないわねと思いました。
1997年のダイアナ妃の交通事故死からウェストミンスターでの葬儀までの一週間の舞台裏を描いた作品で、 ダイアナが離婚という形で王家を出た以上、きっちりけじめをつけて葬儀は実家スペンサー家のものとすべき…と考える王室と、ダイアナを慕う国民との意識のギャップ、その間に立って奔走する若き首相(労働党のブレア)というセミ・ドキュメンタリー・ドラマです。
まぁ実際のところ、どこまでがフィクションで、どこからがノンフィクションなのかはわかりませんが、 やはり象徴としての高貴な家を擁した別の国に住む、戦後価値観世代の一人として見ていると、なかなか興味深く、
女王(エリザベス二世)がよく用いる「duty」という英語の概念。 日本語では「義務」ですが、よく言われる「ノブリス・オブリジェ」という概念と同じような意味なんでしょうね。 上に立つ者には「私」よりまず「公の義務」がある。
ダイアナを慕う国民たちの意識は「私」の、ごく普通の家のお葬式感覚なのですが、王家の人達はまず「私情」ではなく「公」の判断を優先させる。 それが理解できない国民は、女王を冷たい人だと考えてしまう。 でも女王は、元王妃に対しては女王として公の判断をするけれども、母を亡くしたばかりの孫二人に対しては一人の祖母としての情があり、そのあたりの矛盾を映画はわかりやすく描き出しています。
女王を理解しながらも、国民への譲歩を求めるブレア首相が女王を、「ウィンザー公の退位から、予期しなかった女王の地位へ、戦争の時代に育ち、20代で即位してまず国のことを、と教育されてきた方」と評するのですが、 この映画に繰り返し出てくる「duty」というキーワード…映画の中でそれを最も尊重するのは、女王の夫エジンバラ公。 この「duty」の概念、英国海洋小説を読み慣れているせいか、「あ、なるほど」と腑に落ちるものがあります。…陸での私生活(家庭生活)を犠牲にして海に出て行く海軍士官たちに通じるものがありますから…もっともエジンバラ公は大戦中に巡洋艦で戦場に出ていた海軍士官でしたから当然かもしれませんが。
映画を見終わって思ったのですが、 日本にも英国と同じように皇室がありますが、似ているようでいて日本の場合はちょっと違うんじゃないかって。 英国王室の守ろうとしている「duty」は、皇室が守ろうとしているものとはちょっと違うような、日本が守ろうとしているのは義務ではなくて、もうちょっと抽象的な「ミステリアスな権威」みたいなものじゃないだろか…ということ。 それと日本国民も英国国民とは違って、やっぱりまだ皇室の方を普通の家族としては見ないでしょう? やっぱり半分雲の上の方みたいな意識があって、 英国民はダイアナを、不幸な結婚をして離婚した普通の女性に近い意識で見ているところがあり、王家にも普通の家の葬儀の常識感覚を求めてしまうんだけれども、日本人はまだまだそういう目では皇室を見られないんじゃないかって。
ところで、先週のレディスデーにひさびさ日比谷シャンテに行ったら、上映前の予告がなんと「ヴィクトリア女王」でした。 これ3月15日の日記でご紹介した「Young Victoria」ですよ。ポール・ベタニーが首相役(メルボルン卿)です。 12月下旬から公開だそうです。よかった〜、日本公開されるんですね。
ついでに、シャンテでは10月下旬から「ジェイン・オースティン」、「高慢と偏見」などで有名な18世紀末〜19世紀初の女性作家の伝記映画が公開されます。 あの時代の映画なので、ご興味をもたれた方は行かれてみては?
2009年10月03日(土)
|