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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ザ・ロープ 帆船模型展

ザ・ロープ帆船模型展、先週木曜日の夜にやっと行くことができました。
海洋小説ファン的なみどころとしては、ホーンブロワーのホットスパー号1/75モデルが展示されていること。
ホットスパーは実在の艦ではないのですが、この帆船模型研究会ザ・ロープの創始者のお一人で亡くなられた竹内久氏の設計されたキットが、グンゼ産業から発売されていたとのこと。



歴史ファンに興味深いのは、チャールズ・ヨットと17世紀のテムズ川(と倫敦塔)を再現したジオラマでしょう。
塔の上にはぬかりなく大砲と砲兵、チャールズ二世ご自身も桟橋にお出ましです。



またヘダ(戸田)号という、ロシア軍艦の代船として、現在の静岡県戸田でロシア技官の指導の下に建造された西洋式帆船の再現模型も今回展示されています。
ヘダ号は、幕末に日露和親条約締結のため日本に渡航しながら安政地震の津波で沈没した、ロシア軍艦ディアナ号の代船として1855年に建造されました。
設計図はもはや現存していないため、旧戸田村博物館から提供された資料から設計した、スクラッチビルドの力作です。



今年の隠れテーマは「はたらく帆船たち」だったのでしょうか?
帆船模型というとどうしても、快速帆船や帆走軍艦が多いものですが、今年は、アメリカの捕鯨帆船、フランダースの武装商船、マルタの貨物船、北アフリカのダウ、ドイツの蟹トロール船、フランスのロブスター・カッター、テムズ川のバラ積船などなど、普段なかなか目にする機会のない帆船模型が数多く展示されており、興味深く拝見してまいりました。



来週日曜2月3日まで、東京銀座の伊東屋ギャラリーで開催中です。


2008年01月27日(日)
H・レッジャーのこと

23日に仕事でyahooニュースを見ていて、訃報にちょっと愕然としました。
IMDB(映画データベース)を見に行ったら、もう没年が入力されていてしんみり。
まだ30才になっていなかったんですね。

「ケリー・ザ・ギャング」でのリーダーっぷりが板についていて、今年30才になる共演のオーランド・ブルームより年上なんだろうと思ってたら、実は2才年下だったとは意外です。

一般的には「ブロークバック・マウンテン」が有名なのかもしれませんけど、彼は歴史ドラマが多かったので、私はそちらでよくご縁がありました。
「パトリオット」
「ロック・ユー」
「ケリー・ザ・ギャング」
「サハラに舞う羽根」
いそがしくて行けなかったけど「ブラザース・グリム」と「カサノヴァ」も見たかったな。これはTV放映を楽しみに待ってたんですけど。

米国のオブライン・フォーラム(掲示板)でもショックを受けた方が多く、というか若い頃20台のジャックをやらせるなら彼だろう、という声が多かったのだそうです。
言われてみると、なるほどと思いますね。
若い頃を彼が演じて、ラッセルに引き継ぐというのもありえたかもしれません。

同国人の先輩として、そのラッセルのコメント
In Los Angeles, Russell Crowe said: "He was a gentle, beautiful man, a fine actor, a loyal friend. I feel deeply for his family."

loyal friendというのは、最高の言葉だと思います。
演技派の若手でこれからが楽しみだっただけに、とても残念です。


2008年01月26日(土)
ネタぎれで大ねずみなど

伊東屋帆船模型展のレポートをupしたかったのですが、多忙にてまだ会場に行くことができません。

米国のオブライアン・フォーラムのニュースをさらってみても、「スマトラの大ねずみ」…とか?
こんなものニュースにもならないと思うのですが、スティーブンのせいか、フォーラムにはけっこう大真面目にこの手のネタが上がってきます。

英国からの書き込みとしては、
英国の民放チャンネル4で、18世紀のロンドンを舞台にした歴史ミステリ・ドラマの放映が始まったが、これが歴史考証がしっかりしていて面白い、というニュースにちょっと興味をひかれて、

日本で言えば「鬼平犯科帳」のような番組だと思われますが、いずれミステリチャンネルとかにまわってこないかなぁと。
City of Vice
http://www.channel4.com/history/microsites/C/city-of-vice/tv_series.html
ちょっと地味すぎますか?


2008年01月20日(日)
「ツバメ号とアマゾン号」映画化

アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」の映画化、以前から噂はありましたが、下記1月5日のタイムズ紙によると、本決まりとなったようです。

The Times January 5, 2008
BBC hopes youth of today will thrill to Swallows and Amazons
http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/tv_and_radio/article3134106.ece

製作はBBCフィルムズとハーバー・ピクチャーズ(「カレンダー・ガールズ」を製作したプロダクション)、2009年公開予定。
BBCフィルムズのエグゼクティブ・プロデューサーによれば、「子供たちが小帆船で航海しキャンプするこの映画は、SFXに満たされたスーパーヒーロー映画が溢れる中、逆に子供たちには目新しく魅力的にうつるだろう」
「自然の脅威、子供が大人のように責任を自覚して行動すること。腕白な遊びを禁じられ、家の中でポテトチップを抱えテレビばかり見ている、ぬるま湯のような生活で肥満が問題とされるようになった今の子供たちに、今こそランサムの冒険の世界は必要だ」

またこの映画公開に併せて、コーンウォール州ファルマスの海事博物館では今年(2008年)後半、アーサー・ランサムの業績についての企画展が開催されるとのことです。

この記事の終わりには、この物語が世界各国で翻訳紹介されていること、日本にもアーサー・ランサム・クラブが存在することまで紹介されています。
そしてこの情報は、(日本)アーサー・ランサム・クラブの方に教えていただき、転載させていただいています。
ありがとうございました。


2008年01月14日(月)
テメレア戦記

12月末にソニー・マガジンズ社から発売されたナオミ・ノヴィク「テメレア戦記」、
米国オブライアン・フォーラム(掲示板)でいろいろ、前評判は読んでいたのですが、実際に手にとってみると…、

私にとっては、近来まれに見る最高に面白い物語でした。
夢中になって電車を乗り過ごすという、ここ10年ほど無縁だった失態を、ひさびさにしでかしてしまうほど、ぐいぐい引き込まれてこの世界から帰ってこれなくなってしまったんですが、

作者のノヴィクいわく「テメレア・シリーズの家系図を描くとすれば、パトリック・オブライアンとアン・マキャフリイが最初のご先祖さま」になるのだそうです。
アン・マキャフリイは「パーンの竜騎士」シリーズを生み出した米国のSF作家、日本では1980年代からハヤカワ文庫SFで翻訳紹介されていて、現在13巻まで刊行されています(米国では14巻まで、未訳1冊あり)。

これは米国のオブライアン・フォーラムでも言われていたことですが、「テメレア戦記」の基本はマキャフリイ、というかドラゴン・ライダーの物語で、そこに歴史海洋小説(オブライアン)テイストがまんべんなくふりかけられている形です。
ですから、この本を読まれる方は、海洋歴史小説を読むのではなく、ドラゴン・ライダーの物語を読むつもりで接した方が良いと思います。

ただし、

ドラゴン・ファンタジーを読むつもりで読むと、テイストの違いに違和感を覚えることになるでしょう。

何故かといえば、テレメアを始めとするドラゴンたちは、英国空軍という組織に属していて、物語そのものは軍組織を舞台に展開するのですから。
ゆえに物語の展開、主人公の価値観などはオブライアンやアレクサンダー・ケントなどの海洋小説、または同時期の陸軍を描いたバーナード・コーンウェルのシャープ・シリーズなどに極めて近いものになり、中世の砦やギルドを思わせる世界を舞台にくりひろげられるアン・マキャフリイの竜騎士物語とは、かなり雰囲気が異なります。
「テメレア戦記」で言うドラゴン・ライダーはマキャフリィ的な竜騎士ではなく、空佐の階級を持った空軍士官たちなのです。
私たちがよく読む海洋歴史小説は、英語ではNaval historic fiction(海軍歴史小説)と呼ばれるのですが、「テメレア戦記」を表現するのに一番適切な表現はAir Force historic fictionつまり空軍歴史小説なのではないかと、私は思うのですが、

ごぞんじの通り、軍組織が陸海空の三軍になったのは20世紀に入ってからで、現実の歴史では空軍に近代化以前の歴史はないのですが、ノヴィクのこの世界では、古代から人間は「竜」という空軍力を有していたことになっています。

ナイルの海戦で、フランス艦ロリアン号が爆発・炎上したのは、英国艦の砲撃から火薬庫に火が入ったからではなく、英国と同盟を結んだオスマン・トルコ軍の火吹きドラゴンによる空中からの攻撃によるものなのだそうです。
それより何より、13世紀に日本がフビライ・カーンの大陸軍を撃退したのは、風を操る能力のある日本独特の竜の力なんだそうですよ、こんな世界史ごぞんじでした?
同じく大陸からの脅威にさらされた島国として、当時の英国人たちは、このかつての日本の事例に勇気づけられたのだとか。
………。
いやその、私は20年ちかくナポレオン時代の英国海洋小説を読んできましたが、あの時代の英国の状況を元寇当時の日本の状況と重ねたことはついぞなかったので、
はぁぁぁ。アメリカ人のファンタジー作家の目で世界史を見ると、そう見えるのか…っていうのはえらく新鮮なオドロキでしたけれども。

というわけで、もしこの小説を読まれるのであれば、既存の歴史観や先入観は一度捨てて、白紙の状態でナオミ・ノヴィクの1805年に入っていかれることをおすすめします。

と言っても、私たちの場合は全く知らない世界に飛び込むわけではありません。
主人公はフリゲート艦リライアント号の勅任艦長ウィリアム・ローレンス。
彼が拿捕したフランス艦アミティエ号が、皇帝ナポレオンに中国から献上される竜の卵を輸送中であったことから、彼は拿捕艦のみならず竜の卵の面倒も見ることになり、英国にたどりつく前に艦上で卵が孵化してしまったことから、ローレンスは竜から飛行士と認定され(孵化時に竜が乗り手を選ぶというこの設定はマキャフリイと同じですね)、空軍に転属になることになります。

竜に乗るのも、海軍と勝手が違う空軍組織も、ローレンス(と私たち読者)にとっては初めてのものですが、ローレンスが海軍時代の経験と引き比べていろいろと物思うので(命綱をつけて飛行中の竜の背中を移動するのは、嵐で揺れるマストのヤードを移動するのと似たようなものであるとか)、海洋小説ファンには馴染みやすい…というか想像しやすいのではないかと思います。

実際、ナオミ・ノヴィクはかなりの海洋小説ファンでいろいろ読み込んでいるのでしょう。
細かいところの描写にぬかりがなくて、思わず苦笑させられます。
竜の体重が増えると、艦の喫水調節のために船倉の積荷を移動する騒ぎがありますし、元が船乗りであるローレンスは本能的に風に敏感…とか、妙なところにリアリティがあって、海洋小説ファンにはたまりません。
ちょっとだけ残念なのは、翻訳がノヴィクの海軍知識についていってないことなんですが(翻訳経験は豊富でも海洋歴史用語はちょっと特殊なので)、そこはみなさまの頭の中で適切な日本語に訂正していただければ。

本来は存在しない筈の空軍力を有するという設定ですから、英国本土侵攻をめぐる英仏軍の戦いも、実際の歴史とは多少異なってきます。
ツーロン沖の封鎖任務に当たる英海軍海峡艦隊と英本土の間の連絡通信や補給を、空軍の逓信使(小型で速い飛脚ドラゴン)が受け持っていたり、これは海峡艦隊にしてみれば、本当にありがたい援軍だっただろうと思います(苦笑)。
もっともその反面、フランス軍の重装備ドラゴンが、ドーバー海峡を越えて飛来し、英国本土に直接攻撃をかけることもできるわけで、一巻の最後のクライマックスは、ドーバーの白い崖を背後に、フランス重戦闘竜部隊(!!)を迎え撃つバトル・オブ・ブリテン1805とあいなります(旗艦ならぬ空将が搭乗する竜には、空将旗がたなびいてしまったりするんですよ、こういうところが、この作者ぬかりないなぁと思うわけですが)。

まぁこれも、あまり真面目に考えすぎると、戦略上の穴とか見つかるのかもしれませんが、この本に関してはあまり細かいことを言わず、片眼をつぶって海洋歴史テイストだけを楽しむのが、賢いたのしみ方かもしれません。
私は、近来まれにみる面白い本だと思うのですが、皆様はどのような感想をおもちでしょう?


2008年01月13日(日)
伊東屋 ザーロープ帆船模型展

新年明けましておめでとうございます。
本年も細々ながら、宜しくお願いいたします。

伊東屋のザ・ロープ帆船模型展、今年は1週間遅れの1月17日スタートのようです。

ザ・ロープ帆船模型展
2008年1月17日(木)〜2月3日(日)
於:伊東屋銀座店 本館9Fギャラリー
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座2-7-15、TEL:03-3561-8311
営業時間:水曜日〜土曜日/10:30am〜8:00pm、月・火・日曜/10:30am〜7:00pm
※1月31日・2月3日 本館9Fギャラリーは午後6時閉場
http://www.ito-ya.co.jp/communication/event9f.html#s2

ところでこのお正月、私はテレビを見ていて仰天いたしました。
とつぜん画面に、ジェームズ・ダーシー登場。
1月3日にTBS毎日系で延々4時間半にわたって放映していたローマ帝国特番!
塩野七生の「ローマ人の物語」にもとづき、BBCの再現ドラマを織り込み…とあったので、録画しておいたのですが、
その録画を少しずつ見ていたら、どこかで見た顔が、
護民官グラックス…え?これもしかして、プリングス副長?

あわてて調べてみましたら、これBBCが2006年に制作した「Ancient Rome: The Rise and Fall of an Empire」というドラマシリーズからの抜粋なんですね。
このドラマについては、英語ですがこのページが詳しい
http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Rome:_The_Rise_and_Fall_of_an_Empire
ダーシーだけではありません。ホーンブロワーのソーヤー艦長ことデイビット・ワーナーも共演しています。

さらに、コンスタンティヌス帝はキリックことディビット・スレルフォルのようです。
ようです…というのは、私がまだそこまで録画番組を見進んでいないからなのですが、いやそのいくらお正月とはいえ4時間半番組なんて一気に見られませんので、少しずつということで。

ちなみにハンニバルとスキピオのドラマは、やはり同じBBC制作2006年の「Hannibal」(http://www.imdb.com/title/tt0766213/このサイトは英語)、ハンニバル役は「キングダム・オブ・ヘブン」に出演していたアレクサンダー・シディグ。
こちらも見応えたっぷりです。

ハリウッド歴史ドラマの波が去ってしまい、昨年は映画化通いも減ってしまっていた私ですが、今年はお正月から豪華お年玉を頂戴してしまったような気分です。
こんな内容だとわかっていたら、もっと早くに皆様にお知らせしたのですが、私も当日朝の新聞解説で「BBCドラマ」とあって、初めてちょっと興味をそそられた次第だったので、申し訳ありません。
でもお金をかけた番組だったから、きっと深夜にに少しずつでも再放送があるのでは?と思います。


2008年01月06日(日)