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Ship


Sail ho!
Tohko HAYAMA
ご連絡は下記へ
郵便船

  



Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
世界一周ヨットレースのCATV放映予定(但しブラックパール号は早々に船体損傷)

5月4日の日記で、世界一周ヨットレースと、ディズニーがスポンサーとなるブラック・パール号@パイレーツ・オブ・カリビアンのレース参戦をご紹介したのを覚えていらっしゃいますか?
このレースの模様が日本でもTV放映されます。…ただし、地上波ではなくGAORAですから、ケーブルテレビでしょうか?
この情報はFさんからいただきました。ありがとうございます。

第1回
12月8日 (木)23:00〜23:30
 再放送12月9日 (金)18:00〜18:30
 再放送12月14日 (水)6:00〜6:30
第2回
12月15日 (木)23:00〜23:30
 再放送12月16日 (金)18:00〜18:30
 再放送12月21日 (水)6:00〜6:30
第3回
12月22日 (木)23:00〜23:30
 再放送12月23日 (金)18:00〜18:30
 再放送12月25 日 (日)翌朝5:30〜6:00
 再放送12月28日 (水)6:00〜6:30
第4回
12月29日 (木)23:00〜23:30★
 再放送12月31日 (土)深夜2:00〜2:30
詳しくは、GAORAのホームページ : http://www.gaora.co.jp/surfing/volvo/index.html

おそらく放映内容はスペイン・ヴィゴ〜南アフリカ・ケープタウンの第一レグ(11月12日〜12月4日)になるものと思われます。
この航海の様子は、実はリアルタイムで下記サイトで見られます。

http://www.volvooceanrace.org/index.aspx?bhcp=1 (英語)

各艇の位置が緯度経度で示されていてレースの進行状況が一目瞭然。各艇からのレポート、迫力満点の写真、動画映像を見ることもできます。

ところで話題のブラック・パール号ですが…実は今、いません。
レース当初、スペイン沖だかモロッコ沖だかで暴風に遭い、船体を損傷、第一レグをリタイアし、現在修理中です。
修理が終了次第、ケープタウンで合流し、レースに復帰するとのこと。
初っぱなからリタイアしたにもかかわらず艇長はたいへん強気で「ミハエル・シューマッハも初戦をリタイアしながらシーズン終わりにはF1チャンピオンになっている。ブラック・パールにもまだまだチャンスはある」というコメントを発表していますが…、うーん。F1は年間19戦あるけど、このレースは9レグしかないけど…大丈夫かしらん?

スペイン沖だかモロッコ沖の暴風って、あれですかね? ラミジの2巻に出てくる、この海域特有の暴風…レバンターってやつ? なんでもジプラルタル海峡が狭いために、ここを地中海側から大西洋側に吹き抜ける風は暴風になりやすく、昔からこの海域は帆船の難所なのだとか、この暴風に船乗りはレバンターという名前をつけていたのだとか。
ブラック・パール号もこれにやられた?
映画と違って帆がぼろぼろになってしまったら走れませんからねーヨットは。…って私は5月4日に書いたんですけど、まさかしょっぱなから現実になってしまうとわ…。
口はわざわいのもと。くわばら、くわばら。

それでも、第一レグ(長距離レース)開始前にスペイン沖で行われた短距離レースでは、その勇姿を見せている筈ですからブラック・パール号。
それにたぶんこの短距離レースにはキーラお姫様がクルーとして乗り組んでいるのではないかしら?(当初予定ではスペインはキーラ・ナイトレイの担当でした)

GAORAの受信できる方>ご覧になってみてくださいまし。

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トラブルPC、応急措置でとりあえず離礁しました。
で、いったんは浮いたのですが夕方にまたsafeモードになってしまって根本解決には至らず。
これはやっぱり再インストールしかないのでしょうか?
でもそれはもう来週末の仕事ですね。
はぁぁぁっ。(ため息)
とりあえず貯蔵品(ファイル)は無事とりだせましたので、何時沈んでもとりあえずは大丈夫ですが。メールもサーバーに残す設定にしたし…、

ハードディスクに問題があるのでは?というアドバイスをいただきました。ありがとうございます。
でも素人にはハードディスク交換はムリそうです。それに2000年10月購入、メモリ64MB(だから64門艦アケイティーズ号=オールドケイティなんですけど)のPCにそこまで手をかけるのはちょっと…とも思いますし。
まぁ根本的には買い換えしかないってのはよくわかってるんですけどね。
でもその前に、再インストールやってみよう。私に出来る最後の手段。それでダメだったら…、はぁぁぁぁぁ。(またため息)

というわけで、何時また沈むかわからないので、しばらくは、デソレーション島へ向かうレパード号状態だと思ってくださいまし。
メールの返信が時間がかかっていたら、また沈んでるな〜と思っていただければ…スミマセン。

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ところで、こんな状況の時に何なんですが、
今朝とんでもない夢を見ました。シャープの夢。はじめてです。

我が家から駅までの道は、あまり広くない一方通行。
そこを歩いて花屋の前まで来た時、後ろから巨大な砂利運搬トラックがやってきました。どうみてもこの道を走るには大きすぎるトラックが。
そのトラックが私を追い越しざま、停車して、窓が開いて、ドライバーが身を乗り出すんですね。
それが、何故かライフル銃隊の緑の軍服を着たシャープなんです。

びっくりした私は、「いったいどこへ行くところですか?」と尋ねます(日本語で尋ねたような気がします)。
すると、彼の答えは、「M25号線の拡幅工事現場に砂利を搬入に行く」というものでした。
そしてトラックは行ってしまいます。

……………。

私が歩いていた道は東京都内です。M25号線は英国ロンドンの環状高速道路です。
都内を走っているトラックが、いったいどうしてロンドン郊外の建設工事現場に行けるんですか?
だいいち何故、200年前の陸軍将校が砂利トラを運転しているんですか? 彼は工兵隊将校ではないんですよ!(それは彼の上官の仕事)
でも似合ってたけど、砂利トラ。

何がどうなって、どうなると、こういう夢が出来るのか? 誰か私に教えてください。
自分の深層心理がわからない。私っていったいどういう人間なんでしょう?


2005年11月28日(月)
オールドケイティ座礁(PCトラブルのお知らせ)

自宅のネット接続パソコン、オールド・ケイティと名付けているNECのValuestarが座礁してしまいました。
週末になんとか離礁…それが駄目ならせめて大型艇(ランチ:外付けHDDのこと)を横付け(USB接続)するか、雑用艇(ジョリーボート:フラッシュメモリー)を使って、貯蔵品(ファイル)を救いだしたいのですが、どうなることやら何ともわかりません。水兵のバケツリレー(フロッピィディスク)だけは嫌だよ〜。今や人間わざでは持ちきれないファイル(1.4MB以上)が一杯あるのよ〜。

というわけで、今週末の更新は難しいと思います。
ネタはあるし準備もしていたので、週が明けてから他のPCを借りてupできればと思っていますが、週末は無理そうです。

それより、こちらの方が重要なのですが、そのようなわけですので以下、御連絡です。

23日以降私にメールを送られた方、私にメールを送ろうとされている方>
25日朝までの分はネットから読むだけは読めておりますが、週末は送受信が出来ません。メールは音信不通になりますので、オフラインをご存じでお急ぎの方は、電話かFAXか郵便でご連絡くださいますようお願いいたします。
月曜にはネットからメールを見ることが出来ると思います。

また次週以降も、復旧の如何によっては、メール対応が滞ることが予想されます。
急ぎのものから順に返信していきますので、返信の手がまわらないメールが出てくる可能性もあります。あしからずご了承くださいませ。


はぁぁぁ。日曜日は予定が入っているのに。そんなにこちらに時間を割いていられないのに。
すんなり離礁してくれたらいいけど、再艤装(再インストール)なんてことになったら、来週まで引いてしまうわ。

最近、ネットの海は物騒だから、サブに使ってるフリゲート(XPのノートパソ)をちゃちゃっと繋いで代替というわけにはいかないのです。なにせこのフリゲートは船体(Windows)を更新補強(アップデート)していないし、砲(ノートン先生)も旧型で。このままでは危険だから、ずっとネット海には出していなかったのでして。
というか、このノートPC、Windowsが不安定でSP2に更新してもあまり変わらず、ネットつないで更新しようとすると途中で落ちたり切断されたりしちゃうんですけど。
…だからフリゲートは乾ドックに入れたまま、安定したWindows98のオールド・ケイティでずっと航海していたのに。
はぁぁぁぁぁぁ。
すでに作業前からどっぷり疲れている私でした。

ラッキージャックの後編はともかく、12月になる前にご案内したいニュースなども一つ抱えているので、とにかく11月のうちにもう一度、他のPCからでも1件ニュースはupする予定です。

とほほほほほ。


2005年11月25日(金)
ガラパゴスゾウガメのハリエット

土曜日の朝に「週間海外ニュース」のような番組をぼ〜っと見ていたら、ガラパゴスゾウガメが画面に映っていました。
あれっ?と思って真面目に見たら、「このゾウガメはオーストラリア・クイーンズランドの動物園にいる世界最高齢のカメで175歳。チャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島から連れ帰ったカメである」と言うじゃありませんか!

さらに、このカメは「いったん英国に渡ったものの、その後オーストラリアに移された数奇な運命」
なのだそうですよ。
ふぅ〜〜ん。じゃぁ「あのナマケモノ」とか、「そのウォンバット」とかも世間一般的には数奇な運命?
まぁフツウのナマケモノはお酒のんで修道院に入ったりしませんけど。

このニュース、日本ではあちこちのTVに映っていたらしいので、ごぞんじの方も多いと思いますが、

CNN(日本語)のニュース
http://cnn.co.jp/science/CNN200511150010.html

上記にはカメの写真がないので、写真は下記の記事(英語)
http://news.yahoo.com/s/nm/20051115/od_uk_nm/oukoe_uk_australia_tortoise_1

さらに!こんなもの見つけました。
ガラパゴスゾウガメのハリエットと、博物学者ダーウィンの相性占い(日本語)!!!
http://www.moonage.info/entertainer/lovers/darwin&harriet.html

このサイト「芸能ニュースを占いで分析します」というのが売りらしいんですけど、先週ハリエットは芸能ネタになったんですね。
でもこういうのがわかるのなら、ナマケモノとスティーブン、ナマケモノとジャックの相性占いとか、ツチブタとスティーブンとか…ねぇ?

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この2週間、週末をネットワークウォークマンに潰されております(先週、更新がなかったのは、はっきり言ってこのせいです。ゴメンナサイ)。
いぇ今週あたりSONYから新しい携帯音楽プレーヤーが新発売になるでしょう? それで、前のモデルが秋葉原で大安売りになってたんです。
でまぁこの際だから、あこがれのミュージックタンク生活もいいかな?と思って。前のモデルをお得に購入。

ミュージックタンクを手に入れたら、ほら、例えば「ロード・オブ・ザ・リングのサントラ3枚をHDDに放り込んで一気に聴く」とかやってみたかったんですよ。
昨日はそれに挑戦してたんですけど、慣れないもので機械に振り回されて、結局3枚のCDを入れるのが1日仕事に。
何が問題かというと、ほらPCは馬鹿正直にABC順にソートをするので、普通にCDデータをそのまま携帯音楽プレーヤーに転送すると、3作目のThe Return of the King(王の帰還)のReturnが、2作目のThe Two Towers(二つの塔)のTwoの前に来てしまうんです。
それで、転送前に各ファイルのデータをちょっと書き換えないといけないんですけど(LOTR1、LOTR2というように数字を入れました)、これが結構たいへんで。

さらに!ひとつ「お〜やおや!」なオリジナルデータの入力ミスを発見。
The Two Towersの日本版サウンドトラックCDには、CDにデータ入力された曲のタイトル名にミスがあります。そのまんま転送するとミスがミスのまま送られてしまいますよ、ご注意!

「勇者サムワイズ」のテーマ、という曲がありますが、このCD入力データが「Samwise The Trave」なんです。
ライナーノートとか印刷物はすべて「Samwise The Brave」なんですけど、CD入力データだけ「Trave」。
これたぶん、携帯音楽プレーヤーに転送しなかったら気がつかなかったでしょうね。携帯プレーヤーって現在演奏中のトラック(曲名)をご親切に表示してくださるので、その表示を見て初めて「あれ?Traveってなに?」と気づいたというわけ。
辞書を引いてみたところ、traveって、「格間(ごうま)」という意味だそうですよ。こういう日本語も初めて聞きましたが、建築関係の専門用語で桁の間隔のことだそうです。

それで、まぁ、知ってしまった以上、「格間サイムワイズ殿」ではあまりにも気の毒なので放置しておけず、仕方なくデータを一旦、携帯プレーヤーからPC本体に戻して、タイトルだけ書き直そうとしたら、SONYのソフトの場合タイトルをいじるとアルバム名が変わってしまう(=「二つの塔」のアルバムから「勇者サムワイズ」が放り出されてしまう)ことがわかり、仕方なく更にその前のCD取り込みまで戻ってデータを直した…という。
そこまで苦労するほどサムのファンではないのだけれど、でもやっぱりあれだけ一生懸命だったのに、勇者じゃなくて格間じゃ気の毒だろうと思ってしまって…。

M&CファンとLOTRファンには共通する方が多いらしんですけど、
LOTRの日本版のサウンドトラック「二つの塔」を購入された方>
…というわけなので、CDを携帯音楽プレーヤーに転送される場合には、気の毒なサムのことを考えて、CD取り込み時点でデータの訂正をされることをお勧めいたします。


2005年11月21日(月)
ラッキー・ジャックと不運な3隻の艦(前編)

今回のサブタイトルは「虚構と史実のあいだ」…とでも。
なんだか格好いい副題ですが、中身は気軽なおしゃべりなので、このテキストを間違っても資料とされませんように。

さて、ジャック・オーブリーは、「ラッキー・ジャック」と呼ばれるほど幸運がついている(いた?)筈の男ですが、5巻以降災難続きで「これで本当にラッキー・ジャック?」って思われますよね?
6巻に至っては、確かに自分はラッキーにも生き残ってしまうんですけど、便乗した艦が次々に沈んで…、本人はラッキーかもしれないけど、便乗された側にとってはこの人、疫病神以外の何者でもないんじゃないかと。

インドネシアからの帰り、ジャックが最初に便乗させてもらったのは、チャールズ・ヨーク艦長の20門艦ラ・フレシュ(La Fleche)号、この艦は火災を起こして沈みます。
命からがらボートに分乗して逃げ出し、漂流していたジャックを拾ってしまったのは、38門艦ジャワ(Java)号のヘンリー・ランバート艦長。
ところがこの時既に、アメリカとイギリスの間には米英戦争が勃発しており、途中アメリカ海軍最新鋭55門フリゲート艦コンスティテューション号に出くわしたジャワ号は奮戦するも及ばず降伏、アメリカ軍の命令でジャワ号の船体には火がかけられました。

重傷を負ったジャックと付き添いの軍医スティーブンはその他の将兵とともに捕虜となり、二人だけはボストンに移送されますが、いろいろあった挙げ句にボストンから大脱走(こそこそ逃げたから小脱走か?)、この二人を拾ってしまったのが、同じく38門艦シャノン(Shannon)号のフィリップ・ブルック艦長。
さりながらこのシャノン号はアメリカ海軍のチェサピーク号と戦闘になり、相手を降伏に追い込み、今度は沈まなかったものの多大な死傷者を出し艦長のブルックは重傷を負いました。

とりあえずジャックとスティーブンが無事ボストンから逃げ出して、めでたしめでたしの6巻ですが、でもその他のひとびとは?
パトリック・オブライアンはこういうところが、意外と冷たいですよね?
5巻で病に倒れ、重症のまま南米の病院に移された副長のトム・プリングス。すでに10巻を読んでいる皆さまは、プリングスが回復してまた元気に海に戻っていることをご存知でしょうけれど、発行順に読んでいくと、これがわからないんですよ。
6巻には何にも書かれてなかったでしょう? レパード号と別れて南アフリカに向かったミスタ・グラントや、バビントンの犬の運命はわかるのに、プリングスのその後がわからないんですよ!非道いと思いません?!
プリングスの無事がわかるのは7巻なんですが、私はそこまでたどりつくまで、彼が南米で下船するシーンを読んでから5ヶ月かかりました。あぁもう!ずっと密かに心配していたんだから、ちゃんとフォローしてくださいよ〜。

今回の6巻も気になりますよね?
ジャックに関わった彼らがその後どうなったか?
でも実は読者が知ることができるのは、ジャックの幼なじみ(という設定になっている)フィリップ・ブルックのその後のみで、それもかなりたってからのことです。
まぁジャックもスティーブンも、引き続き7巻でも波瀾万丈の運命で、他の人の心配をしている暇がないのも事実ですが。

というわけで、自力でなんとかすることにしました。
パトリック・オブライアンがまえがき(著者覚書)で述べているように、ジャックが立ち会ったことになっている二つの戦闘は史実なので、調べればそれなりに記録が残っているのです。
というわけで、まずはジャワ号の乗組員のその後について。

ジャワ号とコンスティテューション号の戦闘は1812年12月29日のことでした。コンスティテューション号は5日後の1813年1月3日に、ブラジルのサルバドールに入港しました。
オブライアンによれば「ジャックは重症だったので、陸に移送することができなかった」ため、そのままコンスティテューション号に残り、必然的にスティーブンも残ったので2人はそのままアメリカに行くことになりました。

その他の英国人たち(重傷のジャワ号艦長ランバート、副長のチャド、などの士官たち含む――おそらくはバビントンも)はブラジルでコンスティテューション号から降ろされました。
オブライアンも書いている通り、重傷のランバートは上陸の2日後の1月5日に容態が悪化してサルバドールで死去、この港町のサン・ペドロ要塞に葬られました。
副長のチャド以下残りの士官たちは、しかし長くは留め置かれず、その年の春までには英国に戻っていました。

ジャワ号喪失に関する軍法会議は1813年4月23日に開かれましたが、副長のヘンリー・チャド以下士官たちは艦喪失の罪を問われませんでした。
チャドはその後、新たな指揮官を与えられ、海尉艦長に昇進しています。

バビントンもおそらく、チャドたちと一緒に英国に戻ったのでしょう。
ジャックたちがボストンを脱出したのは、5月末のことなので(シャノン号とチェサピーク号の戦闘が1813年6月1日)、バビントンの方がジャックたちより先に英国に戻っていたというわけです。

ジャックたちがボストンにいたのは1813年の1月末〜5月末くらいの間でしょうか?
それじゃぁ1812年の夏にボストンに収監されていたアダム・ボライソーには会わなかったわね(笑)。

アダムもこの米英戦争に関しては似たような目にあっています。彼が当時、指揮していたのは38門フリゲート艦アネモネ号。
船団護衛を命じられた彼がジャマイカを出航した時はまだ戦争が始まっていませんでしたが、洋上で戦争が勃発。
そしてあの時代にはよくある話ですが、なにせ無線も電話も無い時代なので、戦争が始まっていることを知らずに不意打ちをくらってしまうことがままあります。
開戦を知らぬままに、アダムの船団が襲われたのは10日後の1812年6月末、自らを囮に船団を逃がすことには成功しますが、アネモネ号はジャワ号同様の損傷を受け、自ら船体に火をかけ海に沈みます。重傷を負った艦長のアダムはボストンに移送され、ようやく起きあがれるようになるまで回復したのが9月、そして英国からの移住者の手を借りて脱走。
叔父の艦にたどりつき、英国に戻ったのが1812年11月末で、アネモネ号喪失の軍法会議が1813年1月3日。
帰国後軍法会議までが、ほぼジャワ号と同じタイムテーブルですね。今にして思えば、アレクサンダー・ケントも、ジャワ号のケースをアネモネ号の参考にしたのかもしれません。38門艦という設定も同じですが。

今回の話題は来週につづきます。後編はシャノン号とラ・フレシュ号について。
虚実とりまぜたおしゃべりがつづく…予定。


2005年11月20日(日)
英蘭西1750-1850年 艦船航跡データベース

またまたパトリック・オブライアン・フォーラム(掲示板)から、

「イギリス・オランダ・スペイン主要艦船航跡データベース1750-1850」
http://www.knmi.nl/cliwoc/index.htm
という素晴らしいホームページのご紹介。

たとえば、後にジャックの指揮艦となる設定を持つH.M.S.レパードの1798-1803年の航跡図を見ようと思ったら、
HOME>Metadata>English Contribution
で下記の英国艦一覧ページにたどりつきますので、

英国艦艦名一覧
http://www.knmi.nl/cliwoc/cliwocmeta_uk.htm

ここから「Leopard」をクリックすると、
レパード号1798-1803年
http://www.knmi.nl/cliwoc/cliwocmeta_leopard.htm
の航跡図にたどりつけます。

このレパード号は、あのレパード号というか、ジャックが5巻で指揮をとったことになっているレパード号で、歴史上にも実在します。
それを言えばサプライズ号もそうなのですが、サプライズ号の場合は1802年に退役していて、ジャックが指揮をとっていたことになっている1805年以降には実は海軍の船ではなかった…のに引き替え、レパード号は1814年まで現役艦です。
ただし、残念ながら1812年の艦長はジャック・オーブリーではないのですが。

レパード号は、原作5巻(上)P.41でジャックが説明している通り、1790年に英国シアネス海軍工廠で建造された50門戦列艦。
1797年のノアの反乱に巻き込まれながらも、最初に反乱者の手を逃れた艦として記録に残った後、1802年からは原作5巻(上)P.70にある通り、ピーター・ヘイウッドが艦長となり、セイロン島(現スリランカ)の沿岸測量に従事。上記の航跡図ではこのセイロン行きの航路を知ることができます。

この艦の名前を有名にしたのは、1807年10月22日の米国海軍フリゲート艦チェサピーク号砲撃事件で、これは5巻(下)P.228に語られている通りです。
ここまでは原作通りなのですが、1811年以降が当然ながらちょこっと、いやかなり、史実とは異なります。
史実では、1811〜12年に艦長だったのは、ウィリアム・ヘンリー・ディロンという人物で、ポルトガル〜スペイン沖、地中海に配置されていたということです。レパード号は1814年に英国に戻り、そのまま退役したとのことです。


これらの航跡図、おそらくは英国国立公文書館や、国立海事博物館に残された各艦の航海日誌から日付と緯度・経度を抜き出し地図上にプロットしたものと思われますが、このホームページを作成した団体CLIWOCというのは、EUの研究機関のようですね。
本来は気候変動などを研究するために、過去の船の航海日誌などから当時の季節風や海流の様子を調査しているようです。

先日ご紹介したヴァスコ・ダ・ガマのドキュメンタリー(NHK教育テレビで10月26日に放映)でも、ドイツの研究機関が調査しコンピュータ画面上に再現した15世紀末〜16世紀初頭の海流、貿易風などの様子が紹介されていましたが、
これ、ナポレオン戦争の時代より200年前の話なんですけど、でもあぁなるほど!と思うところが多くて。

英国から西インド諸島(カリブ海)に航海する時は、現在のモロッコの沖あたりまで南下してから西に向かうのはあの時代の常なのですが、上記のドキュメンタリーに登場した海流シュミレーションを見ていると、確かに、モロッコ沖あたりから大西洋を西に向かう大きな海流の流れがあるんですね。なるほど、これに乗れば航海も楽でしょう。

またガマの航海にも関連して解説がありましたが、大西洋を南下してアフリカ大陸(喜望峰)をまわる場合、ふつうに考えるとアフリカ西海岸に沿って南下した方が食料や水の補給も出来てよさそうに思いますが、実はここは海流や風が逆行し、それにさからって南に行くのは非常に厳しいそうです。
それでガマは一旦、南米大陸に向けて舵をとり、その後大回りをするような形で喜望峰をまわるコースをとりました。
このあたりの話も、5巻で喜望峰をおおまわりしてしまうレパード号の話など思い出すとなるほど!と思います。


2005年11月06日(日)
ハリウッドの博物館にサプライズ号の檣頭

米国カリフォルニア州ロサンゼルス郊外ハリウッドの「The Hollywood Museum」には、M&Cの艦長の衣装や、サプライズ号の檣頭が展示されているとのこと。
「ムーラン・ルージュ」や「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」などの衣装・小物もあり。

The Hollywood Museum
所在地:1660 N. Highland Ave, Hollywood, CA 90028

http://www.thehollywoodmuseum.com/

TEL(米国内から):(323) 464 7776
開館時間:木曜〜日曜 10:00〜17:00

ホームページのアクセス方法を調べてみたのですが、見事にクルマで辿り着く方法しか書かれていません。
まったくクルマ社会アメリカにも困ったものだわ。1時間に1本でもいいから、バスはないのかしら?バスは?
これだから、クルマがなければ洪水になっても逃げられません、なんてことになってしまうんでしょうか?

それはともあれ、サプライズ号の檣頭…つまりはマストヘッド。
なんでこんなものが展示されているかというと、おそらくは「艦長の青春の記念」すなわち人魚の彫り物のせいでしょう。
ジャックがこっそりスティーブンに見せようとしたものが、一般公開されてしまうっていうのも何だか…、
まぁでもあれは、艦内では公然の秘密みたいなものでしたけど。
サンディエゴに行って海事博物館のサプライズ号を見たあと、ロサンゼルスで「檣頭の秘密」を見るツァーも良いかもしれません。

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以下は、海にも船にも全く関係ない、でも映画と英国には関係ある無駄話です。

最近、映画館に行くと「ナルニア国物語」の新しい(もうちょっと長い)予告が見られるんですよね。
いやもうどきどきしちゃうような素敵な予告なんですけど、
初めて見た時には全く個人的に、ちょっとショックでした。
いやその、「ナルニア国ってこういう国?」っていうか、児童文学にはありがちなんですが、最初に読んだ時に子供心に頭に描いていた「絵」とあまりに違う「世界」がそこに展開されていて。

ひとことで言うと、
ナルニア国ってこんなに壮大だったんですか………しりませんでした。

これもニュージーランドでロケしたんでしたっけ?じゃぁまぁ中つ国(ロード・オブ・ザ・リング)のような光景でも不思議はないんですけど、
それはどちらも出所は同じ…というか、いずれも英国のケンブリッジ大学の教授の想像力から始まった物語ではあるんですけど、
でも「ロード…」の時は、あの壮大な自然を見てもあまりびっくりしなかったんですよ。
それが何故か今回は、予告だけでとってもびっくり。ちょっと違和感。
みなさまはいかがですか?

この原因はおそらく、原作を読んだ時期にあると思うんです。
「ナルニア国…」を読んだのは、小6〜中1で、私はまだ外国の壮大な自然というものをほとんど知りませんでした。
それはテレビではスイス・アルプスもアフリカのサバンナも見たことはありましたが、本を読む時にそれらの映像知識が応用できるほど器用ではなかった。
…というか林や森や野原にしても何も考えずに自分の身近にある、つまりは日本の(それも関東地方の)自然を想像の手かがかりにしていましたから。

いや今回と同じ経験というかショックを受けたことが以前にもありましてね。
ラッセ・ハルストロム監督の「やかまし村」シリーズ。
スウェーデンの児童文学作家リンドグレーンの物語の映画化です。
いやもう正しくそれはスウェーデンの何十年か前の田舎の農村の生活なんですけど、でも野原とか森とか湖とかが、私がむかし小学校3年生の時に読みながら頭に中に作っていた「絵」とぜんぜん違う(泣)。

そりゃ違うわけですよ。だって私は山中湖で想像してたんですもの。当時はそれしか知りませんでしたから。
やかまし村の森は北欧の…北の森で、もちろん植生から何から全く温帯の関東地方の森とは違うわけです。
日本でも秋田や盛岡、青森に行けばあの森があるだろうけど、東京在住の小学3年生がそんな場所を知るわけもなくて。

ナルニア国の場合は、以前にBBCのTVドラマによる映像化を見てしまったのもいけなかったのかな?
あれはスタジオとイギリス国内だけのロケだったから。
イギリス国内でロケする限り、壮大な自然と言ってもスコットランドがせいぜいですから、最大限でハリー・ポッターという。
なんとなくナルニアの自然はイギリスの自然の範囲内…というような思いこみが私にあったみたいです。
いかん、いかん。

ところで、前回BBCのドラマの話をした時にメールで教えていただいたのですが、
BBCのTVドラマの「ナルニア国物語」で、カスピアン王を演じていたのは、なんとエドリントン卿(ホーンブロワー「戦場の恋」)ことサミュエル・ウェストだそうです。
なんと!、「銀のいす」のジル(カミラ・パワーズ)だけではなくって、カスピアン王もホーンブロワーに出ていらしたのですね。
情報、本当にありがとうございました。
ご紹介がすっかり遅くなってしまって申し訳ありません。



2005年11月05日(土)
「トラファルガー時代の艦船技術」国際会議

米国のパトリック・オブライアン・フォーラム(掲示板)に、興味深い国際会議のご案内が出ていました。
と言っても会議は今日からスペインで開催、昨日(米国時間では11月1日ですが)言われたところでどうなるものでもないのですが。

「トラファルガー時代の艦船関連技術」に関する国際会議
2005年11月3日(木)〜5日(土) 於:スペイン、マドリッド市およびカディス市
http://www.etsin.upm.es/trafalgar/

国際会議の内容(タイムテーブル)および、発表論文一覧はこちら↓
http://www.etsin.upm.es/trafalgar/FinalProgramme(Timetable).pdf

2日目のセッション3
「Hydrodynamic design and performance conparisons of Britis, French and American frigates of the Trafalgar era」
(流体力学から見たトラファルガー時代の英仏米フリゲート艦の性能比較)
…なんて、物理苦手の私が聞いても絶対にわからないだろうけれど、でもちょっと面白そう。

同じく2日目のセッション3
「A system approach to the evolution of the ships of the line :
The interrelation among artillery, tactics, econmics and shipbuilding technology」
(火砲、戦術、経済効率、造船技術から見た戦列艦の進化についての総合的考察)
3日目のセッション5
「Hull sturucture under sail and under gunfire」
(船殻構造と帆(風圧)、砲撃)
…などは、帆船模型を図面から起こされる方、現代の別分野の構造工学技術者にとっても興味のあるテーマでは?

会議場は1日目および2日目がマドリッド、3日目がカディスで、3日目の午後は見学会というより小旅行?船に乗ってトラファルガー岬沖の海戦現場を訪れるプログラムになっています。


2005年11月03日(木)