腕がじゃりじゃりして、掻きむしってしまう。 ずっと変わらない生活だ。 あたしはひとりになる時、やっと虚しいと思ってあの日と同じように、母親は妹だけを迎えにきた。 あたしのことは迎えにこないくせに、便利になるともうまるきり手を離されてしまった。 普通はどうやって離れるのだろう。 難しい別れかたをしたからか、今の立つ場所は危うい。 喋れば棘の刺すようだ。 すっかり思考が止まってしまった。 なにも考えられない。 生きるのは難しい。
友人が死んだのは、今日よりちょうど2ヶ月前だった。 あたしはあの子が嫌いだった。 恨んでいた。 絶縁していた。 着信もすべて無視して、いつの間にかあの子の周りには誰も居なくなっていた。 ひとり暮らしのその子の死体を見付けたのは、死んでから10日ほど経った深夜だった。 警察に届けて部屋を開けてもらい、お医者さまが死亡確認してもまだ部屋には入れてもらえない。 もう太陽は昇りはじめて、あたしたちはどうしようもなく車で静かに待機した。 ぼくはほんのひと粒の涙さえ零さず、その子の顔を見ていた。 いつかは一緒に、ニュースになるような、凄い自殺をしようと約束をしたこともあった。 彼女はもうあたしの知らないひとになりかけていた。 それぞれの自白するささいな罪など余所に、結局は男とお金に殺されたのだ。 うつ病、ノイローゼ、リストカット。 部屋の中には、アルコールに混ぜた劇薬が、泡になりこびり付いたグラスが置いてあった。 その一連のことは、脳の中でドラマのように映像になって記憶された。 死ぬまでの狂気のカウントダウンが、頭の中に流れる。 ぼくは火葬場でまんまるの頭蓋骨を見ても、泣くことはできなかった。 ただそんな1日の流れのような、ぼんやりとした午後で、 彼女を通して知り合った仲間にも、もう二度と会うこともないだろうなぁ…と思った。
ぼくはといえば、お通夜の晩、式場に宿泊させてもらっても、みんなが思い出すからと思って、隠れてお薬をのんでいた。 袖は捲れないように、注意を払った。 傷を隠すなんて慣れていない。
今年の始めには、死んだ友人の彼氏の成人祝いを、死体を見つけたみんなでした。 全員が同罪で同じバランスで笑っていた。
ひとに泣ける涙もない。 ぼくに余裕がないということだ。 もうずっと虚言ばかり。 相変わらず死にたいとばかり思って、 晴れた日には罪悪感が押し寄せる。
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