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ラヂオスターの悲劇
トマーシ
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2004年12月04日(土)
マイヤーズブランケット

網棚にヒョイっと捨てられた古新聞みたいに疲れている。午後九時。ここは東横線渋谷駅構内にあるドトール。渋谷駅の構内はまだまだ慌ただしい。店の入口の自動ドアはさっきから引っきりなしに開いたり閉じたりしている。湯気がたつような。まるでヨーロッパの中央駅にいるような気分になる。店の中にはこれから帰途につくというよりも誰かと待ち合わせをしているのか、何処かヘ出掛けよう、遊びに行こうという、細かな振動みたいなものを感じることができる。本当に空気が震えているのかもしれない。チタンフレームの伊達眼鏡やマニキュアを穿いた爪、蛍光色の肩のトンがった防水パーカなど、光りを反射するものに事欠かなかった。しかもそれらは見事にピカピカしていて、受けた光は敏速に跳ね返されるように見えるのだった。僕の心も落ち着かない。気が付けば体を半分前に乗り出すふうに腰掛けていた。目の前にホットコーヒーとメープルベルギーワッフルしかないテーブルを見ていると、いかにも物足りない気持ちになってくる。彼等には待ち合わせの間に合わせのコーヒーにしか過ぎないのだけれど、僕のコーヒーはどこからどうみても終着点だった。


2004年12月02日(木)
再びドトールコーヒーショップより

二階席の窓際のカウンターに座ってコーヒーを飲んでいる。他愛ないなとザワザワする心を抑えて。舌がマッシュポテトみたいにざらついて仕方ない。店内のBGMはオルゴールが流れている。窓のすぐ目の前には大きな木が覆いかぶさるように立っている。何の種類か判らないけれど、それは本当に真っ赤に染まった落葉樹で、ゆっくり枝先の方に視線を這わせていくと果たして先はツンツルテンだった。だのに僕はその枝先に目を奪われてしまう。色々な方向に生気を発するそのさまに一体何を受け止めようとしているのか、ひどく人恋しい気持ちになったのだ。