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2004年04月12日(月) 「ダッカ事件」検証・再論

イラクの3邦人拘束事件は、声明から24時間以上が経過した現在もまだ解放されてい
ない。しかも情報は錯綜しているようだ。とりあえず状況を見守るしかない。

さて今日は、どうでもいいことだが、一昨日の日記について改めて少し触れる。
と言うのは、一昨日の日記では、「人命は地球より重い」発言のもととなった27年前の
「ダッカ事件」を検証したわけだが、とあるところの、とある人がこれを引き合いにして、
何やら全く筋違いの見解を述べられていたからである。
なので、念のためもう一度、要点を述べておくことにする次第である。

私が一昨日書いたのは、今回とは状況も性質も全く違っていた27年前の事件から、
その文脈を取っ払ってしまって事件後の福田赳夫の発言の部分だけを引っ張り出して来て、
「あの時の福田首相はああ言ったんだから、今度もそうすべきだ」と短絡的に結び付けるのは
あてはまらない、と、そう言っているだけある.。

個人的には私は自衛隊撤退をすべきではないという意見なので、
福田の弟子である小泉現首相には、師匠が単にカネを払えば解決した事件でそのやま
しさから苦し紛れの言い訳をした、その真似をして欲しくはない。
今回の事件は比重が違うのである。
だから一昨日も最後にそう書いた。
しかし、今回の事件で一般論として、「人命は地球より重い」から要求通り自衛隊撤退すべきだ
という意見が出るのは勝手だし、そう主張するのも、また自由である。
私自身はその意見に反対だが、それは必要に応じて私の言論において反駁するまで。
ただ、27年前が前例になるという考えだけは否定する、ということを述べているのである。

従って、一昨日の私の日記に異論があるなら、これに対して、
すなわち、いや27年前の事件は前例になる、ということを、具体的に述べるべきであろう。
(具体的な反証ができるほどこの事件についてろくに知らないのだろうが、そのくせ、)
にもかかわらず、あたかも私が、「自衛隊を撤退させろと主張してはいけない」とか、
まして「一市民も政府高官の立場で考えるべきだ」とか述べているかのごとき見当外れの
「解答」を附すのは、誹謗中傷に当ると言ってもいい。
(首相は首相の立場で感情に流されず判断すべきだとは思うが、
「一市民も」云々なんてどこにも書いていない)

ちなみに、この件の、とある人は、私が彼の筋違いを指摘したら、
「読む人の解釈に任せるべきだ」などと議論のすり替えを行ったものである。
私の文章が下手クソで筋違いの理解を招いたということならゴメンナサイするしかないが、
(それにしても曲解に過ぎると思うが)
しかしひとを名指しで批判しておいて、反論したらはぐらかして逃亡を決め込むという
この姿勢だけは全く理解に苦しむ。


2004年04月10日(土) 「人命は地球より重い」発言の軽さ −検証「ダッカ事件」−

イラクの日本人拘束事件で、27年前の「ダッカ事件」の時の福田赳夫首相のこの言葉
が改めてクローズアップされている。
人質の家族が与野党幹部と面会した際も、この福田発言を引用して、犯行グループの
要求に応じる事を求めた。
しかし「ダッカ事件」と今回の事件では、状況も性質もまるで違う。
違うものを似ているところだけ引き合いに出して類比させるのは、
コーヒーカップもドーナツも同じだというがごとき詭弁に近いのである。
そこで「ダッカ事件」について振り返ってみたい。

「ダッカ事件」とは1977年9月、日本赤軍が日航機をハイジャックしてバングラデシュの
ダッカ国際空港に強行着陸、600万ドルの身代金と仲間の服役囚の釈放を要求し、
時の福田内閣が「超法規的措置」としてこの要求に応じて、事件を解決したというものである。
そしてテロリストに屈した時の福田首相の言い訳がこの「人命は地球より重い」とい
う発言だったのである。
「昭和元禄」「狂乱物価」「天の声にも変な声」など数々の流行語を生んだ福田首相
らしいと言えばらしい警句だった。

それはともかく、この事件の直前だか直後、西ドイツでやはりハイジャック事件があ
り、こちらの方はテロに屈せず特殊部隊を送り込んで強行解決したというので、
日本の対応と比較されたものである。
では一方、福田内閣のこの対応は、国内の世論的にはどう評価されていたのか。

政治史的に振り返ると、福田内閣は発足以来の低支持率にあえいでおり、
福田首相としてはかなり国内世論を気にせざるを得ない状況だった。
特に、翌年の自民党総裁選での再選を期すため、解散-総選挙も視野に入れていた
福田首相にとっては、国際的な日本の評判より、国内での自身の人気の方が
優先したのである。
従って身代金を払って人質救出、というこの解決策は、概ね世論の意に沿ったものだ
と言える。
事実、国際的には顰蹙と非難を浴びたが、国内的には、まあ、しょうがないという感
じで受け止められたし、実際、この時は、ほかに仕様がなかったのである。

そもそも今回のイラクでの日本人拘束事件と状況が違うのは、
この時は、単に日本人(日本赤軍)が日本人を人質にして、
しかも身代金と自分たちの仲間の釈放を要求したという、
事件の現場こそ外国だが、実態は国内問題に過ぎない点である。
今のように日本が国際問題に首突っ込んでいて、政治的要求をされたわけではない。
それ故、福田首相を筆頭に、安直に、人質を助けるためにカネで済むなら・・・的な
発想でも罷り通ったのだ。

また、当時は「テロは国際社会共通の敵」なんて認識がまだ薄かった時代である。
むしろ日本赤軍がイスラエルのロッド空港事件を始め国際テロの一翼を担っていたこ
とで、同じ日本人として肩身の狭い思いの方が強かった。
つまり「国際テロ」としての認識より、「身内の不始末」の意識である。
更に言えば、日本赤軍の一連の事件は、「連合赤軍事件」や「企業連続爆破事件」
「内ゲバ」事件などに連なる、1970年代の過激派事件の感覚でとらえられていたと言ってもよい。
従って、「ダッカ事件」もその延長で、「また日本赤軍が外国で厄介事をしでかした、
みっともないから、何でもいいからとにかく早くさっさと終結させて欲しい」という
気持ちが福田内閣の「超法規的措置」による解決を後押ししていたのである。
今回の日本人拘束事件の引き合いにこの「ダッカ事件」やその時の福田発言などを引
き合いにするのはその点で的外れなのである。
つまり、身代金を払えば解決したこの事件は、「人命は地球より重い」という発言ほど実際は
重くはなく、「人命が金で買えるなら安いもの」ということだったのである。
むしろ、「人命は地球より重い」などと発言する程度の事で、その後も特に福田首相の姿勢が
政治問題視されることなくうやむやに済んでしまったのだから、極めてお気楽で軽い発言である。

しかし本当に重い事態に直面した場合、そんな暢気な警句を吐いて片付く問題ではないし、
現に今回はまさにその時であろう。
福田首相の弟子である小泉現首相の口からは、間違ってもこの「人命は地球より重い」
式の軽い発言がなされてはならないのである。


2004年04月09日(金) イラク日本人拘束事件の疑問

今回のイラクでの3馬鹿日本人(左翼運動家)拘束事件には自作自演説もあるようだが、
一応、ここでは正真正銘の事件であるという前提で話を進める。
それにしても、この「戦士隊」とやらは無駄で愚かなことをしたものだ。
なぜなら、日本にテロなど仕掛ける政治的意味は殆どゼロに等しいからだ。
まず、「自衛隊撤退要求」が通るわけがない。
左がかった論者が好んで口にするように、日本はアメリカの言いなりである。
ついでに言えば、中国の言いなりでもあるが、要するに自国の外交政策などなく、
大国の顔色を窺い、従っているに過ぎない。
それ故、独自の判断で日本がイラクから撤退することなどあり得ないのである。
ここが先に列車爆破テロの影響でイラク政策の変ったスペインとは違うところだ。
スペインと違う言えば、何があっても政権が替るわけでもない日本にテロを仕掛けるのは
これまた無駄である。
仮に、「自衛隊撤退要求」拒否の結果、3馬鹿日本人が殺害されたとする。
「救出に全力を尽くす」などと口先だけで力んでも、日本には特殊部隊もないのに
救出のしようがないのだから、テロ・グループの声明通りならばそうなるだろう。
(もっとも、仮にあってもこの3人は自衛隊派遣反対なのだから救出を断わるのが筋だが)
その場合、撤退拒否の是非とは別に、感情論的に小泉への批判が募り、支持率はガタ落ち、
そして夏の参院選は与党が負けるかもしれない。
だが、所詮それだけのことである。
参院選ごときで負けても政権は替らない。
小泉は辞任に追い込まれるかもしれないが、替って誰が首相になろうと、やはり自民党である。
それが小泉よりはハト派的だったとしても、イラク政策そのもののが180度変ることはない。
つまり対外的に小泉が辞めて喜ぶのはむしろ中国とかそのあたりの国であって、
中東問題で日本をテロってもしかたがないのである。
イラクのテロ組織が日本を標的にする政治的意味がないというのは、そういうことだ。
政治的意味があるとすれば、小泉を辞めさせたかったり自衛隊反対の気運を高める
という、日本の国内問題としてである。
それ故、この事件は国際問題のように見えて、実は奇妙に単なる日本国内での政治的利害に
しか絡んでいないのである。
自作自演説まで出る所以のひとつもここにある。
自作自演でないにしても、テロリストともあろうものが、テロの国際政治に与える
影響の常識に反して日本など標的にしているのは無知過ぎるし、なのにその半面、
日本国内政治への影響には通じているらしい感じがするのは不思議である。
二昔前なら中東で跋扈していた日本赤軍が背後にあるのではないかと思うところ
だが、しかし今はもうそんな力はなさそうだが。
いずれにしてもこの事件には不審な点が多いことは確かである。
今後、事件の早期解決とともに真相が解明されることを期待したい。


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