やんの読書日記
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2003年10月22日(水) 幻の馬3 暁の星をおびて

ジュマーク・ハイウォーター作
ベネッセ

アマナの二人目の孫シトコ。シトコは作者自身だ。
飲んだくれの父、かっこつけたがりの兄、
二人目の夫に気を使ってばかりの母。
二人目の父の養子になったシトコは家族であって
家族でないものに囲まれて自分が何者であるのかわからなくなってしまう。
インディアンであることの誇りを失い、
アメリカ人としても生きることができないとなれば、
それは自分喪失だ。
兄リノの転落を見て、母の死、祖母の死を経験して
不死鳥のように立ち直るのかと期待していたのに、
それはまったくなかった。
私自身にも待ち構えているかも知れない自己の喪失。
そういう危機と背中合わせの自分を
この作品の中に見たような気がする。
第4巻はいったいどうなっていくのだろう
サクセスには導かれないような気がするが
シトコは自分を取り戻してほしいと願ってしまう。


2003年10月12日(日) 幻の馬2 汚れなき儀式

ジュマーク・ハイウォーター
福武書店

伝説の日々から、一族のものに疎外されたアマナは貧困の中でアマリアと出会い、
人生を好転させる。
とはいっても何とか食べて生活していくだけで、民族の誇りを捨てなければならず、
偉大なヴィジョンも力を失ってしまった。
カナダのフランス人の商人ジャン・ピエールと結婚して子どもを授かるのだが、
二度目の夫は妻を捨てて故郷へ戻ってしまう
ネイティヴアメリカンの迫害の歴史が
ここにも描かれているのだが、
彼女の場合はくじけずに立ち上がる強い女
という感じではない。
自分自身として生きられない悲しみを持ち、かつて一族の中で生きてきた
誇りある自分に戻りたい、
そういう懐古的な姿がある。
娘を産んで、育てるときも、
最初の孫が生まれて育てるときも
彼女の生きてきた道とは違う方向へ
子どもたちが育ってしまうことに悲しみを
感じているのだ。
そういうアマナがやっと自分として
生きることを感じさせたものは
二人目の孫シトコだった。
アマナはインディアン保留地に行って
仕事で旅回りをする両親に代わって
孫の養育をする。
一族のものではないが
同じネイティヴに触れて生活するうちに
アマナの心は誇りを取り戻していく。
ここまで読んで誇りを持って生きること
自分自身として生きることの大切さ
難しさを知ることができた。


2003年10月11日(土) 幻の馬 物語1 伝説の日々

ジュマーク・ハイウォーター作
福武書店

ネイティヴアメリカンの少女アマナが
一族の滅亡をまのあたりにしたとき
狐から偉大なヴィジョンをさずかり
その後、再会した一族の危機を助けながらも
女だという理由で阻害されてしまう。
狐からさずかった力で、女でありながら戦士として働くことで
バッファローをしとめてきて飢えに苦しむ一族を救うアマナ
病気の姉とその夫、後にその夫がアマナの
最初の夫になるのだが、戦士として働いたがために夫を死なせたと
誤解を受けて追放されてしまう。
普通の女ではない、自分らしく
男として生きたかったアマナはこのことで
自分を見失うことになってしまう。
森羅万象に神が宿り、それらと語ることができる
ネイティブアメリカンが、ヴィジョンを持つということは
偉大なことであるらしい。
目覚めているときに感じる霊力。
心の命じるままに生きることができなくなったとき、
人は人でなくなるのだと思った。
アマナはこの後どうなるのだろう。


2003年10月10日(金) A small Miracle 聖なる夜に

ピーター・コリントン

字のない絵本「天使のクリスマス」の第二弾
雪の降る静かなクリスマスイブに
教会を訪れた旅芸人のおばあさんが
献金泥棒と対決して、教会のクリスマスの飾りを
守るところから始まる。
飾りの聖人たちが飢えて倒れたおばあさん
を助けて、食べ物のために売ってしまった
商売道具のアコーディオンを取り返すところが、
やさしさに満ちていていいなあと思ってしまう。
一言も文字が書かれていないのに
聖人たちのささやき、おばあさんの悲痛な叫び、
静かな雪の音、アコーディオンの音まで
聞こえてきそうな、いい絵本だ


2003年10月01日(水) マウルスとマドライナ

アロワ・カリジェ文、絵
大塚勇三訳
岩波書店

カリジェの絵本は生活に根ざしているから
説得力がある
アルプスの山で生活するフルリーナやウルスリ、
マウルスが家の仕事を手伝いながら
自然の中で生きていく知恵を学んでいく。
そんなおおらかさと力強さが表われている。
この絵本は、レーベルマンスの「山のクリスマス」の
反対バージョンだ、と思った。
レーベルマンスは町の子ハンシが山へ遊びに行く話し。
こちらは山の子マウルスが町へ遊びに行く話し。
一番いいなと思ったところは
マウルスの賢さだ。雪原を越えて、町の友達の家に行くとき、
きれいな色の布切れをつけた旗を目印に雪原に刺しておいたことだ。
帰ってくるときに吹雪にあったのに、この目印のおかげで
友達も一緒に助かるのだ。
生活のにおいがしながらも考えさせてくれる楽しい絵本だ。


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