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生きる音 2006年03月31日(金)

血塗られた壁は壊されて
今はキレイなビルになりました

空も青くてキレイです
雲も白くてキレイです
そこからは
透明な雨が降ります
今は

疲れた
と呟いてみるけれど
この喧騒の中では誰にも気付かれません
みんな 自分の足音にさえ気付きません

自分の音がわからなくなります
体の中をかけめぐる光を見つけられなくなります

あなたはどうして死んでしまったの?

今日も歩いています
どうしようもない毎日です
それでも今は歩いています
生きています
一日ずつ生き延びています

心臓の音がします
呼吸の音がします




揺れる腕の中で 2006年03月20日(月)

別れ
という人間の運命が
頭の中にこびり付いていて
私を振り回す

木々の揺れは不安をかきたてるだろう
強風で遅れる電車は不安をかきたてるだろう
飛ばされていくスーパーの袋は不安をかきたてるだろう
引っ剥がされた帽子は不安をかきたてるだろう
痛む枯れ葉は不安をかきたてるだろう

ただここにいるだけで
不安をかきたてられるだろう

目の前にある
ゆるく繋がれた
あなたたちのその手が
本当は固く結ばれているのだと
そう信じるのみだ

そう
祈るのみだ




サンドペーパー 2006年03月08日(水)

僕のざらついた心を
君はやすりで削ろうと すべらかにしようと
するけれど
それが正解だって
誰が言えるの?

君が言うような僕が
世界で一番素敵な男になれるなら
何度だって やすりをかけよう

かかとを鳴らして不恰好にした靴
君は大嫌い
と叫ぶ

僕の心はきっといつまでもざらついたまま

君から離れてもいつまでもざらついたまま

どうしたって 無駄さ
やすりはいつのまにか使えなくなるんだから

その手に持ったやすりを捨ててよ
その手を僕に預けてよ

そうしたら 少しはわかると思う
僕の心が君が思うとおりじゃないってこと




忘却の彼方まで 2006年03月06日(月)

闇夜に血塗られた歴史は
音もなく去っていく
音もなく消えていく

忘れることさえできない人間は
ただ文字に指を滑らせて
指先を黒くするのみだ

記憶の果てには
忘却がある
忘却には記憶が必要だと
何人の人間が言っただろう

汚れた指先を見つめてみても
ちっとも記憶にはならない

その血に その痛みに
涙してみても
それもただの涙にしかならない

血を知れと 言うわけでもない
痛みを知れと 言うわけでもない
血を知らないようにと 願う
痛みを知らないようにと 願う

また歴史は一人歩きをしていく
人間はどこまで追いかけられるだろうか

忘却の果てに 行くことができるだろうか

指先を ふっ と吹き付けて
すべての記憶をなくしてみた




ストレートラインステップ 2006年03月01日(水)

おおきくなったらなにになりたいのか
わからなかった私は
今 本をひらいて
アスファルトで靴音 鳴らしています

シロツメクサのねっこはつながっています

あなたとわたしもつながれますように

私はおおきくなりましたか
あのころの私 わかる?

ぶさいくになった?
かっこうわるくなった?
さいていになった?
ばかになった?

あのころの私が
今の私にどなりちらしても
何も言えない
何も言えないこと してきた

けど ごめんね
私はこのままいきます
あのころの私 わかるでしょう?
私がそういう人だって わかるでしょう?

たいようを抱きたい
あのころに思ったこと
今も 思っているよ





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熊野
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