犬を抱くその瞳は
とおくを見ている
哀しみの向こう
少しだけやわらいだ笑み
なごみか 安堵か
すこしのあきらめ
すこしのかなしみ
すこしの平和
頑なな人間になっている
水底の岩のように
頑固にそこを動かず
ころばないと決めたとき
生き方を決めたのか
流れる人 揺蕩う人
そのゆるやかさを
思い出せ
青い服の少女は
なにを怒っているの
なにが悲しいの
なにを拗ねているの
口をむすんで
じっと
手にとりかけて
ひいてしまう
じっとその目を覗くのが
辛くなって
何度も躊躇って
また今度
抱きしめたくなったら
手元に置こうと思う
昔きみに似てると思ったのに
今はそう見えない
白い服でも同じ
思い出したこと追伸
大人になって知った
感謝の涙 安堵の涙
誰かにアリガトウ ではなくて
ありがたくてあふれる涙
そういうのって神仏？天？
安堵は 多分 ジブンだけの心配でなく
大人になると心配する対象が増えるってこと
昔からの住宅街も少しずつかわる
お屋敷が消えて
新しい家がいくつか建ち
道路から庭木が見えなくなり
季節感が薄れる
以前はどんなだったかなと思っても
思い出せない
けれど結局はどうでもいいことだ
振り返らない
これからもここにいる
大人になることと未成年であることの違い
大人になってかわったこと
涙の味
感動と憐憫の涙はかわらないし
共感の涙も変わらない
けれど
甘くて切ない味を忘れた気がする
ぽろりと落とす涙を
苦くて苦しい味ばかり残る
口を結んで無口になると冴えてきた
頭の中でにぎやかに渦巻いていた言葉たちが
しんと静まって沈んでいった
何も聞こえず
何も考えていないようでいて
何かがずっと動いている
それは収束に向かっていて
感性とか勘とか閃きとか
そういうものになるのかもしれない
長い将来の展望を思い煩うより
今のことだけを考える
ここを脱出することを
ここから解放されることを
それがリア充なのかも
そうすれば荷が軽くなるでしょう
自ずと決まるでしょう
観念する 諦念する いろいろあるのですね
宙ソラへのぼる気持ちでなく
水底へまっすぐに沈んでゆくような
暗黒の深い底ではなくて
光のさす砂地の明るい水底へ
そしてきっと
砂も舞い上がらない
ぴたっと静かなソフトランディング
そんな感じ
言葉に
込めた思いは 届くのか
秘めた思いは 伝わるのか
幹の中がやられているということで
公園の大きな桜が伐採された
陰になっていた樹が見えた
こんもりとした緑
何だろうと思っていたら
今年分かった
キンモクセイだった
遠目でもはっきりわかる
かすかな羽音でとんできた
灰緑色の小さな鳥
きっと山の方から緑地を抜けて
時を刻むように囀って
またどこかへ飛んでいった
何かに気づいて
新しい葉陰をみつけに
過去の自分を超えろ
サスケでそう言ってた
選手たちはチャレンジャー
仲間意識でつながる
にぎやかに応援し合う
以前ほどストイックで寡黙ではなくなって
ちょっと楽しいお祭り
樹を植え緑を育て花を世話した
その庭が消える
大切にしてきたものが消える
慣れ親しんだものが消える
光も風もきっと変わるだろう
残るのは何だろうか
金木犀がはじけ始めた
どこから？ だったのが
どこからも になった
季節はずれに甘く香った白い花が残る
小さな赤い実がこぼれ落ちた
ふくらみはじめた花芽
種にもならず土にも還らず
もう見ることはないだろう
金木犀の香りがはじまった
シンデレラノトケイ？
ソウネ ナクテモカマワナイ
ナクテモタノシイ
ジカンヲワスレルコトガデキテ
ヒトの手で
ただ葬られるだけなら
その前に私がこの手で
最後のお別れをしてばっさりと
アリガトウ
シンデレラの時計
すべり込み
慣れれば余裕のシンデレラ
考えても動けないなら
感じるままに動け
いい言葉に会った
まさにそうだった
気づきかけていたこと
背中を押された
あしたは 今日のつづきではなく
今日と同じの繰り返しではなく
別の日 違う日 あたらしい日
だからたのしんで
あたらしい自分を
しょいこんでいるものをはずせばらくになるのに
せおわされたのでなくじぶんでしょった
そんなものしょせんがらくた
力尽きぬよう
帆をゆるめ
？ 帆をゆるめ ？
歩をゆるめ としたかったミス
でも 似ている
進もうとしているのは同じ
休めと促すのも同じ
フルパワーのひたむきさを封じて
時にはゆるりと
やわらかな風の当たりを感じて
向きを変えぬまま合わさる流れは
ぶつかって濁り
そのまま濁流となってゆく
互いに整流して
清流となって流れゆくこともできるのに
今必要なのは何なのか
勢いのある濁流なのか
静かに遠くすすむ清流なのか
迷い続ける
ブレる
まとまらない
決心できない
何をとるのか
何を捨てるのか
定まらない
踏ん切りがつかない
思いの出し方がわからない
出せない思いが残って苦しい
その都度吐き出してしまえば楽
そういわれても
出そうとするから
出してしまおうとするから
出し切らないといけないと思うから
残してはいけないと思うから
あえいで足掻く
だから 解放されない
出し切ることを考えるのでなく
いっそのこと出さない方向に
そのまま閉じてしまう方向に
その方が楽なのかも
出さないと決めることは
内にに閉じ込めるということ
だから 出し方を考える必要がない
・・これって イワザルの術なのか
キンモクセイがきた
そんな空気感
ひやりと澄んでふわりとあたたかい
新しい気持ちになる空
自分で探り当てたものには
重みがある
たとえ小さな石ころでも
木の実一粒でも
シンデレラノトケイヲツカエバ
スコシ カワレルカモ
ツカッテミヨウカ
我（ガ）が強いのだ
ひとに決められるのも
決めてもらうのもいや
自分で決める
それがすべて
ソウイウコト
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