戻ってきたんだね。
この日に。

『月日』という概念が無ければ、二度と来ない日なのに。
二度と来ないで欲しいのに。
必ず、必ず戻ってくる。

ちゃんと前に進んでいるのに。
あの子は時を止めてしまって。
あの人が優しく笑うから。
あの子は足が竦んで動けなくなる。
変わらない。
まるで、記念日のよう。

決まって込み上げる嘔吐感と闘って。
馬鹿みたいに繰り返す自分を嘲笑って。
我慢しないで吐いちゃえば楽になれるのに。
そう思うんだけど。
結局、あの子は吐く事なんて出来ないから。
痛いくらい解るから。
結局泣けない自分を見ているみたいで。
少し、チクリとした。

今年は、会えなかったね。
電話して、追悼の意と愛を込めて。
代わりに泣いてくれて。
相変わらず嘔吐感も涙も込み上げるだけで。
虚しく笑うしかなくて。

それでも戻ってくる。
忘れずに戻ってくる。
忘れたくないから、忘れられないから、忘れちゃ駄目だから。
そうか、戻ってくるのは良い事なのか。
忘れる筈も無いのに。