連れて来られた『汚い死体』についての講座。
とにかく私は死体が嫌い。 虫だろうと人だろうと多分同等に嫌うと思う。 でも普通に虫とか潰せるよ、ためらい無く。 なのに潰した時点でもう駄目、汚くて嫌。 急に不完全な物に見えてきちゃって。 不快感や嫌悪感よりも先にイライラする。 「何だよ、コレ?」って。 すごく汚くて、すごく嫌い。 私の家には屋根と屋根の隙間にスズメが巣を作るのね。 それが起こったのは小学校のいつだったか、もう忘れたけど。 台風のあった次の日で、学校に行こうと外に出た私は。 スズメの雛が一羽、玄関の先に叩き付けられてるのを見た。 台風の風が巣を襲って、力ない雛は風に運ばれ落ちた。 それなりに高さもあったから、毛も生えてない雛は潰れた。 ピンクの塊だったけど、その存在が何なのか、一瞬で解った。 小さな手(?)と、少しだけ黄色い柔らかな嘴と、 青とも紫とも取れないような異様に大きい目があったから。 こっちを見てる気がした。 見られてる気がした。 今でもハッキリと覚えてる、残ってる。 瞼に、脳裏に焼付いて離れない訳じゃない。 思い出そうとしない限りは出て来ない。 けど、思い起こせば鮮明に出てくる情景。 それはもう既に記憶を塗り替えた自分の想像かもしれない。 恐らくこの記憶は単なるイメージでしかない筈。 薄れていく映像を知識で埋めていく。 途切れた画像を知識で修正する。 その繰返しで今の記憶が鮮明に甦る。 現実に見た物として現実よりずっと残酷に描かれる。 微々たる霧にも侵される事なく甦る記憶は、 きっと、恐らく、幼い心に焼き付いた衝撃の産物。 きっと、きっと。
だってそれはあまりにリアルだから。
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