あそこは何て空気の汚れた所なんだろう。 私の声は掠れてしまった。
あそこは何て水の不味い所なんだろう。 私は口をゆすぐ事も出来なかった。
あそこは何て人の流れが早い所なんだろう。 歩く事を止めない人ばかりで、 何故止まらないの? それとも止まれないの? 私は聞く事すら出来なかった。
人ごみの中立ち止まって、 曇った空を見上げてみた。 道行く人は邪魔そうに避けて行く。 前を歩いていた同僚が振り返り、 怪訝そうに私を見て、声をかけた。 溜息を吐(つ)いても誰も気付かないだろうと 私は小さく一つ、溜息を空へ残して歩き出した。
呼吸のような溜息は空と同化した。
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