2003年08月29日(金) |
Bowling for Columbine |
マイケル・ムーア監督、アカデミー受賞ドキュメンタリー作品。
・・・・いやあ。
面白かったわ〜〜〜〜。
私の住んでいるような田舎アメリカでは、東京で上映されてるアメリカ映画が見られない、という阿呆な現象が起きるのが常である。 おかげでこの「ボウリング・フォー・コロンバイン」も、日本の雑誌やウェブでさんざん映画評を読み、見たい見たいと思い続けつつも貸しビデオ屋にようやく並び出した今日この頃まで待つしかなかったわけ。
映画評だのウェブの感想でほとんど内容は知っていたのだけど、実際見てみたら色々細かいところが面白かった! あれは(嫌味になるかも知れませんが)アメリカ人かもしくはアメリカに長年住んでる人でないとわからないな、という箇所がいくつもあったからだ。
たとえば「テレビニュースで流れる容疑者は大抵黒人男性である」というくだり。 例として、白人ママさんが2人の息子を車ごと連れ去られた、犯人は黒人男性だった、という事件が出る。 これは私も記憶にあるが、実はママさん自身が子供らを乗せたまま自分の車を湖(だったか貯水池だか)に沈め、殺したのであった。 なのに作り話として「黒人男性に連れ去られた」と言った、という話なのである。
こんなの、あの映画だけ見てたらそこまでわからないだろうと思う。 私はたまたまこの事件を覚えていたから「あっ、この人!」と顔に見覚えもあってすぐ思い出したが、BJはうろ覚えだったくらいだし。
最後のチャールトン・ヘストン邸へインタビューに赴く所でも笑ってしまった。
BGMが「Mr.Rogers Neighboorhood」のテーマだったからだ。
これはアメリカ人なら知らない人のないくらいポピュラーな子供番組で、でも子供番組なのに妙に地味なミスター・ロジャースというおじさんがホスト役。 のんきなテーマ音楽が流れて、「あれ?これなんだっけ?」と一瞬思ったがすぐにあのテーマだと気づいておかしくなってしまった。 でもそんなのも、アメリカに住んでいなかったらちょっと気づかないだろうなあ。
感心したのはマリリン・マンソンのインタビュー。 結構マトモな意見を言っていたし、喋り方もしっかりしていたので意外だった。
インタビューの最後にムーア監督が
「コロンバインの子供達に、今何か言ってやれるとしたら、何と言ってやりますか?」
と、月並みな質問をしたら、マリリン・マンソンが
「・・・何も言わないな。 彼らの言うことを、聞いてやるよ。 それをしてやった人は、誰もいなかったんでしょ。」
と答えた。
不覚にも、涙が出た。
もちろん全体としてはムーア監督の意図通りに編集されてるわけだから、これが本当に「ドキュメンタリー」かと言われるとちょっと首をかしげるが。 でも良くまとまっていたしテンポも良くて飽きさせなかった。 特にカナダとの比較には「うーん」とうならされてしまった。 もっとも、以前私が住んでいた街では「玄関にカギをかけない」家もあったから、アメリカ全部が「恐怖症」にかかってるとは思わないけど。
「侵入者から家族を守るため、自衛のために銃が必要だ」と答える人々を見ていて、以前日本人留学生がハロウィーンの時に殺された事件を思い出してしまった。あれはルイジアナ州バトンルージュだった。 南部も銃フレンドリーな土地だからな・・・。
それにしても、「アメリカン・バンド・スタンド」の番組司会で有名なディック・クラークは今頃「失敗した!」と思ってるに違いない。 まさかこの映画がアカデミーまで取るなんては思っていなかっただろうからね。 イメージダウンは必須。
リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演。
原作はフィリップ・K・ディック 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
××年前、通りかかった三省堂の店頭でこの本が平積みになっていた。 今思えば「ブレードランナー」の原作、ということでキャンペーン中だったのだろうが、その時私は全く映画のことは知らなかった。 ただ、題名が面白いし当時海外のSF小説にやたら凝っていたのでふと買う気になっただけである。
そして読破したものの、なんだか良くわからんなぁ、という感じであった。 設定は面白いし、段々主人公が自分がアンドロイドなのか人間なのか自信が無くなっていく過程などは良く書かれていたと思うのだけど。 なんていうか、救いが無かったからかなあ。 暗い小説、というイメージが焼きついている。
おかげで「ブレードランナー」もなかなか見る気がせず、ずいぶんたってからビデオでようやく見たくらい。 でも、原作とかなり違うなあ、くらいの感想しか持たなかったので良く覚えていない。
先日、図書館で「ブレードランナー・ディレクターズカット版」を見つけた。 まあ無料ならもう一回見ても良かろう、と借りてきてみた。 BJは初めて見るというので私の解説つき。 やはり原作を読んでいないと良くわからない点が色々あると思ったので。
改めて見てみると、結構面白い。 今見ても大して古さを感じないところはすごい。特にSF映画って、「なんじゃこりゃ〜」という特撮とか、妙な衣装や装置が出てきがちなのに。
リドリー・スコットらしい暗い夜の映像、日本語や漢字がやたらに出てくる背景はまるで「ブラック・レイン」。 そうか。この監督、アジアのこういうゴチャゴチャした雰囲気がきっと異国情緒があって好きなんだな。ネオンサインいっぱいで、人があふれている狭い路地とか。 そういえばうちの娘もアメリカ育ちでネオンなんて見たことが無かったので、東京で夜連れ出したら銀座通りなんかにびっしり灯ったネオンと看板を見て 「わー、フェスティバルみたいね、ママ。」 と喜んでいたっけ。ああいう感覚にも近いのかも。
字幕も出ずに屋台のおじさんが日本語で喋ったり、街の雑踏には英語、中国語、日本語が入り乱れて飛び交っていたり。 日本語だけ耳に飛び込んでくるのでなんだか妙な感じ。
原作よりも暗さが少なく、アクションが多くて娯楽作品になってたと思う。 やっぱり別物だな〜。原作と映画って。
まあ面白かったんだけど、ちょっと物足りなかった。 原作読むことをおすすめ。
2003年08月16日(土) |
アバウト シュミット |
原題 About Schmidt。 ジャック・ニコルソン主演。
ちょっと泣かせるところもあるコメディなのかと思って見てみたが、意外に地味なヒューマンドラマだった。 随所に笑えるエピソードもあるが、全体にジャック・ニコルソンの1人芝居といった趣き。 いつものエキセントリックさは無く、淡々とした抑えた演技でとても良かった。 役者だなあ。
それにしても、ジャック・ニコルソンとキャシー・ベイツ意外は全く見たことのない役者ばかり。 アメリカの俳優の層の厚さにはいつも感心する。
原題 The Pianist。ローマン・ポランスキー監督。 エイドリアン・ブロディ主演。 原作ウワディスワフ・シュピルマン。
アカデミー賞を取ったので、まるで期待しないで見たのだが意外にテンポが速くてあっという間に二時間半見終わってしまった。 ポーランドにおけるユダヤ人の迫害というのは、「シンドラーのリスト」で読んだくらいであまり良く知らないのが残念だった。 もっと歴史の勉強しないといけないわ。
しかしエイドリアン・ブロディって変わった顔だなあ・・・。 話が進むにつれて、本当に飢えているように鬼気迫るような痩せ方をしていくのですごくリアルだった。 見てるうちにこっちまで飢えを感じてしまうような。
それにしてもグランドピアノの音ってなんてゴージャスなんだろう。 本当にきれいな音だなあ・・・。 こんな演奏を聴かされたら、ドイツ人将校だって心を動かされるだろう。
シュピルマン自身による戦争体験の回想録は最初1946年に出版されたが、当時の共産党により発禁処分を受けた。 1998年に再出版され、日本では2000年に翻訳されている。
公式サイト(日本語) http://www.pianist-movie.jp/pianist/pianist.html
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