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2010年01月18日(月) 自分がナゾ

少し前に、K姫の勤める会社様に、届け物にうかがったときのことであります。

社内に入ってすぐに、K姫の先輩であり、やはり美人様のFさんとバッタリ会いまして。
どなたに渡しても良いお届け物だったので、Fさんに渡してしまえーと思ったワタシは、挨拶をした後に、

「これ、Fさんにお預けしてしまってもよろしいでしょうか」

と、おずおずと申し出ましたら、

「あ、ごめん。あたし今接客中なの。
 事務所に誰かいると思うから、そちらに預けてもらえます?(´∀`)」 とFさん。
「あ、接客中でしたか。失礼しました。
 では、事務所にお邪魔してみます」

とてとてとてとて と、事務所に入っていきましたら。
K姫と、やはり役職の男性社員さんがおりました。
当然、K姫に声をかけますよワタシは。

「こんにちは。ごぶさたしてます」とワタシ。
「こんにちは」

ワタシ、なんだか以前のようにへらへらできず。
なぜなら。

ホントにめっきりK姫にお会いしなくなっちゃったので、
K姫に対してへらへらと甘えていた自分を思い出せなくなっているみたいなんですよ。

・・・というのは、無理矢理考えた理由であって、実のところよくわからなかったりするんですけど。
それにしても「甘えていた自分を思い出せない」って、脳に欠損ができてしまったかのようで心配な理由ですが。

実は、年末にも、こんなことがありましてね。
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K姫の会社の会長様がお亡くなりになりまして。
ワタシもいそいそとご葬儀に出かけたわけですよ。
今までワタシが出席した中では、いちばん大きな告別式でございました。

で。

弔問客が多いせいか、斎場に入るとまず受付のようなところがあり、そこで記帳のみ済ませ、お香典は少し移動した場所でお渡しする、というような段取りになっていたんですね。
ということが最初よくわからなくてキョロキョロしていたら、受付にFさんがいらしたので、ああよかったと思いながら挨拶とお悔やみを軽く済ませ、上記の流れを教わりながら記帳を済ませまして。
お香典を置きに行こうと思ったら、長い受付カウンターの中、Fさんの隣の隣に、K姫がいらしたんです。

あ!K姫!(・∀・) とワタシは喜んだのですが、何しろ葬儀ですからね。
浮かれちゃいけない、と思いまして。 ちょっと顔を引き締めまして。
K姫は、ワタシと目があった時点でにっこりと微笑んでくださり、ワタシに軽く手を振ってくださったんですが。
ワタシは「葬儀だから!」って頑なに思っていて、薄く微笑んで小さく会釈しただけで、K姫の前を通り過ぎ、お香典を渡しにいきまして。

その後、長ーーーいお焼香の列に並んだのですが、人が多すぎて、もはや列になってない状態でして。
ワタシ、背が低いので奥の様子もよく見えず、手持ち無沙汰になったので、そうだそうだ、この隙にK姫にもきちんと挨拶してこようと思い立ちまして。

受付ももうすいていたので、これならお邪魔になるまいと判断し、K姫のもとへ。

「あの、こんにちは」

葬儀なので、やっぱり地味にご挨拶。

「さっき、あたしを無視したでしょ」 とK姫。
「へ?」
「あたしの前を素通りしたわよね」

な、なんかちょっと拗ねてますけどこの人。
いつものからかっているような笑顔ではなかったんです。

で、ワタシ慌ててしまいましてね。

「え! いや、そんな。会釈したじゃないですか!」
「ううん、無視した」
「だってほら、葬儀だから。はしゃいじゃいけないと思って・・・」
「Fさんとはにこにこ喋ってたじゃない」
「そりゃっ、面と向かって話せば笑顔も出ますよ!」
「ふーん」

あなた、姫様なのに、何をワタシ相手に拗ねた顔してるんですか。

「このあいだ、来るはずのメールも来なかったし」とK姫。
「あれは・・・スミマセン、うっかりしました」
「ふーーん」
「や、いつも同じような文面になっちゃうから、なんかこう、ひねりっつーか、気の利いたこと書きたいなって思ってたら」
「思ってたら?」
「そのまま忘れました・・・」
「ふーーん」
「スミマセン・・・」

でも、このころには、からかうような笑顔になっていたので、ちょっとホッとしまして。
「あ、じゃあ、列に戻ります」と言って、ぺこぺこしながらムーンウォークのように後ずさりして葬儀の列に戻ったんですが。

不思議なことに、このときのワタシ、

「なんだい、拗ねちゃってんの? もーー(*´∀`*)かわいい人め☆」

とは思わずに、

なんか、困っちゃったんです。 なんでなんだろ・・・。

一度セックスしたからって冷たくしちゃったら、やっぱまずいですよね・・・。 <スミマセン、言ってみたかっただけです

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なんてことがあったもんですからね。
なんだかワタシ、なぜかちょっと緊張していたというか、自分でもよくわからないんですが、へらへらできなかったんです。

「あの・・・」 と、K姫に用件を切り出すじょりぃ。
を、遮るようにして

「最近ちっとも来ないのね」 と、K姫。

嬉しいようなセリフのはずなのに、なぜかまたここで身構えるワタシ。ホント謎。
ただ、男性社員さんがすぐ近くにいたので、なおさらワタシがいつものように「K姫ー(*´∀`*)」ってやっちゃいけないって思ったフシはあったと思います。

「あ、はい。 すみません」
「・・・・・・」 黙ったままワタシを見てます。
「や、あの、だって、お仕事くれないんですもの最近、こちら。来る用事がないんです」
「・・・・・・」 黙ったままワタシを見てます。

ちょっと待てワタシ。
この言い訳ってば、まるで「仕事なければK姫んとこなんて来ませんよアハハハハ」みたいじゃなーい?!
違う違う!そういう意味じゃないんですK姫!
何か理由言わなきゃって思って、こんなこと言っちゃっただけなんです!

「あの、これ、預かっていただきたいんですけど・・・」と、ブツを差し出すワタシ。
「・・・誰宛?」
「ええと、・・・誰だろ・・・管理部長、でいいのかな?」

K姫、無言で受け取って、管理部長の机の上にある、預かり帳みたいなものにさらさらと何か書き込みまして。
自分の席に戻られまして。

無言。

な、なんか、気まずい。
でもそれはたぶんワタシのせい。
ワタシがいつもみたいに、へらへら甘えないから、会話のリズムが出ないんだと思います。

「あの、じゃあ、これで失礼します」 逃げる気かワタシ!

2〜3歩、歩きかけたところで

「もう帰っちゃうの?」  と、K姫。


以前なら、「えー?(*´∀`*)引き留めてくださるんですかー?えへへへへ」とかやってたはずのワタシなんですが、やっぱりなんだかいつもの調子が出ず。


「お忙しいでしょ?」とワタシ。
「じょりぃさんが忙しいの?」
「ワタシは、まあ、いつも通りっていうか、いつもほど忙しくないかな」
「・・・・・・」
「K姫、忙しいでしょ」
「・・・・・・」

同僚がいるから、もしお手すきでも「ヒマよ」とかも言えないと思うんですが。
とにかく無言。
無言でワタシを見てます。

そのうち、ふっと、視線をワタシから外して、机に向かって仕事を始めました。

帰れば?ってことかな・・・。

「あの、じゃあ、失礼します」


何も言ってもらえませんでした (´・ω・`)


それ以後、今にいたるまで、なんか気まずいんですよね、ワタシ。
K姫、ワタシがなんか冷たくなったって思ってそうで。
実際、態度としては以前より冷たい感じだと思いますし。

先日もこの会社に用事があって出かけたのですが、Fさんにはやはりロビーで会ったのでにこやかに談笑したのですが(「胸元セクシーですねー」とか、いつもの軽口叩いて)。
以前ならば社内を駆け回ってでもK姫を探して、無理矢理会って帰ったのに(携帯に電話して「今どこですか!会ってから帰ります!」とかまでやった)、気まずさを引きずっていたワタシは、K姫に会わないようにこそこそ帰ってきてしまいました。

なんなのこの流れ。
前みたいな仲良しっぽい雰囲気に戻れなかったらどうしようーーー。
てか、ワタシはいったいどうしたいのだーーー。

ただの自意識過剰ならばいいんですけど。
こういうつまらない、よくわからないきっかけで、関係が変わっていっちゃうこともあったりするのかなーとか思ったりして、心がぐずぐずしております。
ぐずぐずしているくせに、なぜかK姫を避けるようにしているワタシ。

ナゾ。
自分がナゾです。
あんまりこういうことってないんだけどなぁ・・・。


まあ案外、K姫、全然まったく気にしてない、という可能性もものすごく高いんですが!
(今、「うん、そう思う」っていうみなさまの心のつぶやきが聞こえました)
でも、「実はさびしがり屋さん」なのを知っているので、今まで懐いていたワンコロが素っ気なくなった、って感じてたら、なんか、おこがましくも申し訳ないーとか思ったりして。


オチがなくてスミマセン。
ちょっと書いて整理してみたかったんですが、かえって混乱しただけでした ァ'`,、('∀`)




2010年01月12日(火) いなくなりかた・後編

ええと。

もう、前半で何を書いたのか思い出せず、読み直そうとページを開いたら、我ながらあまりにも長くて読み返す気にもなれなくなりまして困ってるんですが。
まあ、ちょっと読み返してみたら、前回の続きを書こうにも、前回って、前フリだけで終わってんじゃねえかって我ながらホントビックリしたんですけどね。
とにかく、前回の続きを。
ざっと。
ざっと って、もう端折る気満々で申し訳ないのですが。
やっぱりこういうのは旬を逃したらダメですねえ。(他人事のように)

こほん。

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きょんのお父さん、もうずっと具合悪くてですね。
数年前から、少しずつ少しずつですが、目に見えてカラダが弱っておりました。
きょんが実家に行って帰ってくるたびに

「また具合が悪いってお医者に行った」
「車の運転やめたって。でも自転車、健康に良さそうだからかえっていいかも」
「・・・自転車乗らなくなったって」
「動くのが、すごくゆっくりになってきた」
「最近、おとんの話がよく聞き取れない」

という具合に、カラダの機能が衰えていく様子が進んでいきまして。

きょん父が車に乗らなくなった頃から、きょんの実家での仕事が増えましてね。
きょんの休みの日に合わせて、車で片道2時間弱かかる大きな病院に連れていったりですね。
ガンだったんですが、カラダが弱っていたので、ガンは思っていたほど進行しなかったんです。
ガンによる痛みはほとんどなかったのは幸いでした。
それよりも、老衰なのかなぁ、身体の機能の衰えが目に見えて進んでいったのでした。

きょんは、割と年の離れた3姉妹の末っ子なので、お父さんがもうけっこうな年なんですよ。
とはいっても、それほどではないですけれども。
でも、ワタシときょんの年齢差は2歳ですが、ワタシの父ときょん父の年齢差は10歳あります。

で、ねえちゃんふたりが、なんかこう、あんま頼りにならなくてですね。
子どもの頃は「ちびちゃん」と呼ばれていた末っ子きょんの肩に、なんだか実家の責任がかかっていたりしたんですよ。
まあね、身びいきになりますが、よくまああれだけ、一緒に住んでいるわけでもないのに面倒見れるなあって感心するほど、きょんはよく働いておりました。
きょん父が車の運転やめたあたりから、ワタシときょんで休みにどこかに出かけるということもほとんどできなくなりましたし。
ワタシは自分ばっかりかわいいワガママ人間ですので、たまに「なんだいなんだい」と拗ねた気持ちになったこともあるのですが、ナナが昔言った言葉を思い出して、きょんの実家への献身に全面的に協力しておりました。

ナナが昔言った言葉というのはこちらです。(こちらのナナワタよりコピペ)

家族の気持ちを優先するなら、後悔させないように思う存分看病させてあげるかな。

この当時、ナナがよく後悔していたのですよね。
「もっとママの看病、ちゃんとできたはずなのに」と。
そして、看病できる期間を与えて、後悔(はつきものですが)が残らない程度に看病させるというのは、家族にとって大事なことなんじゃないか、ということもよく話していたのです。
(看病が長すぎて悲しい結末になってしまう場合もありますが・・・「ある程度」ということですね)

まあ、ワタシが「実家の面倒ばかりでなく、ワタシのことももっとかまえ!」と駄々をこねたところで、きょんの場合
「じょりぃってそんな人だったんだ。見損なった」
と、ワタシと別れてでも父上の看病したでしょうけど。ァ'`,、('∀`)
とにかく、「思う存分」看病できるバックアップをしたかったんです。ワタシの立場としましては。

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去年の夏頃から、きょん父、歩くのがやっと、という状態になってきまして。
秋になった頃には、寝ている時間が長くなってきました。
フキゲンなことが多くなり、家族にも当たるようになってきまして。

それでも、きょんにだけは当たらなかったんです。
末っ子のちびちゃんは特別かわいい、ということもあったでしょうし、泣き虫で小さい頃はいちばん手の掛かったちびちゃんは、「昭和だけど明治の頑固親父」であるところのきょん父に、大人になった今では全面的な信頼を得ていたのでありますよ。
ホント、きょんの言うことだけは聞いたんです、きょん父。

で、そのうち、食事を受け付けなくなってきまして。
きょんの口から「いよいよホントにダメかもしれない」という言葉が出るようになってきました。
食事を受け付けなくなった頃から、家族や親戚の間から「入院させた方がいいんじゃないか」という言葉が、強く出るようになってきまして。

「じょりぃはどう思う?」と、きょんに聞かれました。
「入院すれば良くなる、という状況ではないよね」とワタシ。
「うん、それはない」

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・・・きょん父が食事を受け付けない、そろそろもうダメかも、という話が出てきた頃、ワタシはナナと会って、こんな会話をしておりました。

「あのさ、寝たきりになって、食事も自分でとれない老人がいるとするじゃん?」とワタシ。
「うん」
「そういう人が入院したらさ、ええと、良くなったりするの?」
「うーーーーーん・・・・とりあえず、生かされるよ。チューブだらけにされて、とりあえず生きてる」
「やっぱそうなるよね・・・ワタシさ、 生き物って、食事ができなくなったときが死に時だと思ってるんだ」
「あたしもそう思う。 それに、自然死がいちばん苦痛ないっていうしね」
「うん」
「死んだことないからわかんないけどさ(笑)」
「そりゃそうだ(笑)」
「老衰とかだったらさ、ホントは病院なんて入れることないと思う。かわいそうだよ、見てて」
「うん。 ワタシなら自分ちでチューブなしで死にたいな」
「あたしも。 でもねー、それって、今の世の中じゃ難しいよ。ものすごい贅沢で幸せな死に方だよね」

(これが絶対正しい意見、というわけではないですよ。あくまでも、ワタシとナナの会話でございます)

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この話をきょんにしまして。で、

「ワタシはだから、今のお父さんの状態ならば、入院させないで、ギリギリまで家で、って思っちゃうのだ」と答えまして。
「あたしもそう思うんだよ。ナナもそう言ってたのかー。なんかうれしい」
「うん」


ワタシとナナという、客観的に見ればあまり頼りにならない援軍を得て、きょんは「あたしは入院反対」の姿勢を貫きます。
貫きますが。
風当たりはけっこうキツかった。特に親戚。と、真ん中の姉ちゃん。

真ん中の姉ちゃんはちょっと厄介でしてね。
かつては姉妹の中で主導権を握っていたので、きょんが父親に信頼され、決定権を握っているような状態がおもしろくないということもあったかもしれませんが。

「今の人間はね、病院で死ぬのが、いちっばん、しあわせなの。わかる?」

と、きょんに教え悟すような口ぶりでこう言い放ったもんですから。

帰ってきて、目に涙を浮かべながら怒るきょん。
「まあまあ、姉ちゃん、少し変わっちょるけー」となだめつつ、

「でもさー、そっちのが、世間一般の見方かもしれない、ということは頭に置いておいたほうがいいかもだ。
 入院させないなんて鬼畜か!って思う人もいるかもしれないよ。自分が絶対正しいという態度は、姉ちゃんと一緒になっちゃう」

と、ちょっと牽制を入れてみたりして。

そのころには、もうきょん父はすっかり寝たきりになってましてね。
トイレも自分でできなくなっていたので、きょん含め、家族交代で完全介護状態であります。(真ん中の姉ちゃんだけは何もしませんでしたが)
日中はお母さんがつきっきり、夜は一緒に住んでいるいちばん上の姉ちゃんがほとんど寝られない状態で面倒を見て、会社終わってから夜遅くまでがきょんの担当となりまして。
きょん、ほとんど家にはいない状態でした、このころ。

そして、いちばん「入院させろ」とうるさかった親戚がお見舞いにやってきましてね。
きょん父を見舞ったあとに、家族に言いました。

「なるほど。 入院させるよりも、ここにいる方がいいね。入院はかえってかわいそうだ」と。

ただ、「家族はこのままでは大変だろう」と心配してくれたそうです。
確かに、きょんの疲労もけっこうなもんでした。
転職したばかりでそちらの気疲れもあった上に、仕事以外のほとんどの時間を父上の看病にあててましたし。
自分の時間というものが、ほとんどというか、まったくなくなってました。

それからほどなくして、きょん母がギブアップしはじめました。
いちばん上の姉ちゃんも、ほとんど寝られてない状態で昼間は仕事ですから、参ってきます。
きょん母が「介護の人、頼もうか・・・」と言い始め、きょんもそれもしかたないかな、と思い始め。

そんな折、ワタシは遠出して遊びに出かけてましてね。
きょんの家がこんなときに申し訳ない・・・とはまったく思わないあたりがまあ、ワタシなんですが(°▽°)
それはそれ、これはこれで楽しく出かけていったのですが。
それでも、きょん父の様子は知っていたので、「無事でいてくれよー」なんて思ってはいたのですが。

前回の日記の最後にあったように


「遠くにいるし、せっかく楽しんでいるんだろうから、
 帰ってくるまで知らせないほうがいいかと思ったんだけど。
 昨日の夜、お父さん亡くなったんだ」


ということになってしまったのでした。

ワタシが遊びに出かけた日の夕方近くに容態が急変しまして。
黄疸が出て苦しみ始めたので、救急車を呼び、病院へ運ばれ。
仕事をしていたきょんにも連絡が入ったので、会社を早退し、きょんも病院へ。

5時間後に亡くなったそうです。
眠ってるような、寝言でも言い出しそうな穏やかなお顔で亡くなったそうであります。


実はきょん、死に目に会えなかったのです。
「とりあえず犬の世話をしなきゃ」と、家にいったん戻ったときに亡くなってしまったそうで。(ちょっとマヌケ・・・)
でもそのことについては、後悔してないみたいです。
やるだけやったから、最期を看取れなかったくらいでは後悔にはならなかったようです。


この1年近く前に、きょん父のガンの手術をするしないでやはり家族親戚で揉めたことがあったんですが。
そのときのきょんとワタシの意見は、やはり少数派の「今さら体を切らないでほしい」というものでした。
切ったからって治らないって言われてましたし。
切れば、ただでさえ弱っているきょん父の体には、大きなダメージです。
寝たきりになってしまう、と、ワタシたちは思っちゃったんです。

結局きょん父の意向でしないことになったんですが、一時は「とりあえず手術しよう」という方向に傾いていたんです。
このとききょんは、

「おとん、きっと手術に体がもたないよ。手術中に死んじゃうよ。
 おとんがひとりぼっちで死んじゃうのはかわいそう。
 あたし、一緒に手術室に入れてもらえないか、先生に頼みたい。
 最期は一緒にいてあげたい」

と言って、大泣きしていたんです。
このときはさすがにワタシもうるっときまして、きょんに気づかれないようにこそこそと泣いていたんですが。
きょんやきょん父がかわいそう、というより、きょんのけなげさに泣けた。

という具合に、「おとんが死ぬときはあたしがついてないとかわいそう」と泣いていた人が、毅然として
「やれるだけのことはやったから。いい死に顔だったし」と、さわやかにうっすらと涙しているのを見て。

なんか、きょんも、父ちゃんも、えらい立派やんけーーー!! と、ワタシったら感動しましてね。
またちょっと泣けた。こっそり泣いた。

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きょんの父上が亡くなってですね、
ワタシはまた、人の死のありかたについて、その尊厳について思ったのであります。

「弱っている姿を見せたくない」と、ワタシの見舞いを拒んで、美しい姿をワタシに見せたのを最後に亡くなった、なっちゃんのお母様の死も、尊厳に満ちて美しい、と思いました。
が。

まさに、人間の成長を「巻き戻し」で見るように、体の機能を徐々に奪い取られ、弱っていき、死に向かっていく姿を身をもって教えてくれた(本人にそのつもりはなかったでしょうけど)きょん父の死も、またなんと尊厳に満ちていたことだろう、と思うのであります。
具合が悪くなった時点で病院に入り、ベッドの上で過ごし、最期を迎えることがあたりまえの昨今、体の様々な機能が少しずつ衰えていき、歩けなくなり、立てなくなり、座ることさえできなくなり、食事がとれなくなり、排泄も自分でできなくなり、寝返りすら打てなくなっていき、死にいたる、という、本来人間や生き物がたどる様を、きょん父はがっつりと見せてくれたのであります。
ワタシも、きょんなんてもっともっと、そのひとつひとつがショックでありました。
でもそれらを受け止めるたびに、きょんは強くなっていきました。
ああ、またひとつ衰えた、またひとつダメになったというそれらは、死の宣告の声がだんだん大きくなっていくような感じでした。
そのたびに、あきらめのような覚悟のようなものができていきます。
でも看病をやめるわけにはいかないのですよね。
絶対に敵わない敵と戦うようなもんです。
この大変さというのは、死を目前にした家族の介護をした人でないとわからないものだと思います。(当然、ワタシにはわかりません)

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お葬式の準備でばたばたしていた頃、きょんが言いました。

「おとんさー、なんだかんだ言って、家族がつきっきりで看病しなきゃならなかったのって、2週間もなかったんだよ。
 しかも、病院に運ばれてからは5時間でしょ。 なんか、すごくない?」

「すごいよ。大往生だよね。ほとんど畳の上で死ねたようなもんだし」とワタシ。
「うん。大往生だよね」
「うん。親父カッコイイ」


家族も、そりゃ悲しんでますが、きょん父が覚悟の時間を十分作ったおかげか、亡くなったことのダメージは思っていたより少なかったようです。
それでも、きょん母はたまに思い出したように

「あーーーー。
 お父さんいないなんて。 嘘みたいだ。 でもいないんだよね・・・」

とつぶやくそうです。

いちばん上の姉ちゃんも

「寝たきりで動けなくなっちゃってもさー、文句ばっかり言っててもさー・・・いてくれるだけで違ったんだよね・・・」と。

まったく後悔がないわけではありません。
それぞれ、みんな、少しずつ「もっとこうできたんじゃないか」「ああしてやればよかった」という思いはあるようです。

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人がひとりいなくなっちゃうというのは、なんだか大変なことであります。
そして、いなくなりかたは人それぞれで、それぞれの尊厳があるのだろうと思います。
きょん父のいなくなり方にもやはり尊厳があり、ワタシに本当にいろんなことを教えてくれました。
ワタシは、自分が年を取って、体の自由がだんだんきかなくなり、衰えを実感しながら死んでいく、ということを、とても恐れておりました。
きょん父のおかげでリアルにそれを見たワタシは、今まで以上にそれが怖くなりました。

ということはまったくなく。

むしろ、怖くなくなりました。
だって、にんげんだもの。(みつを) いきものだもの。
って思った。
だってなにしろ、なんか親父、カッコよかった。
(この「親父」って、「ワタシのお父さん!」て意味じゃなくて「おっさん」の敬称みたいなもんです)
そしてきょんもカッコよかった。
葬式で、喪服着て胸張って背筋をピシッとしているきょんは美しかったです。



そして最後になりましたが。
きょん父が亡くなった翌日、ワタシの急遽の帰り支度にもイヤな顔をせず、骨惜しみなく協力してくださった、あの日の友人たちにあらためて感謝を述べたいと思います。
特に、乗り換えの便利な遠くの駅まで、不慣れな道を車で送ってくださった美人さん、
おいしいお酒を送ろうと思いつつ、まーーーだ手つかずですんません。そして本当にありがとうございました。


そして最後の最後にもうひとつ。


きょん父 と ぴょん吉 って、響きが似てる。



端折ったはずなのに、まとまりがない上に長くてすんませんでした(´∀`)





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