へい太の日記

2004年05月30日(日) 柳町で誘われて

窓の下には
いっぱいの観葉植物
2階の開いた窓から
声が聞こえてくる
戸口からは大きな黒犬が
顔をのぞかせ
吠えかける
駐車場に戻るのに
一本裏通りを歩いてみる
いつの間にか迷子になり
知らない街に迷い込んだよう
柳町
昼の顔から
夜の顔になろうとしている街
大通りに面したお店らしき建物
古い木製のドア
いくつかの小さな色のくすんだガラスがはめ込まれている
足元を見ると何か白く明るく
石灰か?
いや塩だ
塩がまいてある
盛り塩なのか?
いやと言うよりは
塩をドアの下一面に擦り込んだような
ドアの端から端まで続いている
しかも丁寧に塗り固めたようなあとさえある
ドアを通り越して向こう側にも
塩の道が
と思ったら
なんだか薄暗い路地になっていて
赤く光る看板が灯っていたり
本当に迷ってしまったのだろうか
塗り固められたドアの下の塩の道は何なのだろう
本当に盛り塩なのだろうか
なんだかナメクジよけのような気がしてきた
ドアの横の柱も何だか腐りかけてるようだし
これ以上悪くならないように
マスターが工夫したのかもしれない
まだ少し早いけど
店に入ってみることにする
案の定薄暗い店内は
なんだかかびくさいようなにおいが立ちこめている
梅雨時にしてはひんやりした感じもするが
カウンターは触ると湿気が多い
ひげを生やしてるけど
頭は薄いマスター登場
少し飲むことにする
BGMはジャズ
何だか出づらい
あの塩は聞かなかったけど
マスターよけなんじゃないかな
マスターを店の外に出さないための
だってマスターなんだかナメクジみたいだぞ
そんな経験はしたくなかったので
ぼくはドアを開けることはやめにした
塩にどんな意味があるのかわからなかったけど
ドアの向こう側にはどんな人がいたのかわからなかったけど
かなりの間ドアの前で立ち止まって
あれやこれや考えていたのは事実だ
ということは
やはりあれは盛り塩だったのか
塩が恐くて入れなかったのは
ぼくがナメクジだったからかもしれない
店の中にいたのはぼく自身だったのかも
となると
塩は現在と未来を隔てるための障壁なのか



2004年05月15日(土) ヒバリの届け物

ヒバリは夕暮れ時まで鳴き続け
夜空に飛び上がることなく
草にまみれた田んぼから 届け物

緑に染まる春になれば水が満ち
カゲロウの羽の模様した
用水が廻りながら潤してゆく

前川の下を流れる新堀は新たに築かれた川で
底までは2メートル
前川の下にトンネルを掘り交差させてある
さらに川下では5メートルの掛樋を築き
川の上を水が流れていた
川下に探検に行った頃の思い出

水温む春になればヒバリは鳴き続け
用水を通す願いもかなえられた
トンネルはコンクリートに代わり
掛樋はサイホンになった

日が暮れると聞こえてくる国道2号を通る車の音
届けたかったものはどこに行ったのか
届ける道はどこにあるのか




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