左薬指の指輪がちらついた。 腿に置かれた手に銀色が輝く。 指がむくんで取れないのだと、冗談っぽく言った。 日に焼けた腕に点滴の細い針。 透明の液が流れ入る。 逆の腕には採血の痕。 病院のロビーにあるソファに私たち三人は並んで座った。
「で、いつ退院できるの?」 Aが心配そうに聞いた。 「ん〜原因がわかるまで。まぁ、1週間くらいでしょ」 青白い顔で軽く笑顔を作り、Nは答えた。
久しぶりに他愛のない会話をした後、私とAは帰路についた。 指輪の相手は仕事が終わったらお見舞いに来てくれるそうだ。 親には反対されている二人だが、出来れば上手くいって欲しいと思う。 あんなに女の子らしいNは、滅多に見られないのだから。
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