馨絵詞〜かおるのえことば
楽しいことも、そうではないことも。

2003年03月02日(日) 小屋ハネて

いよいよ3月。
春ですよ。
もう寒いのはたくさんだ。
稲葉はぽかぽかした天気が大好きです。
ごめんね冬。

   ◆

稲葉主演のお芝居、劇団Pl.(プル)『執事サンセット』3日間、5ステージの日程を終えました。
役者として本格的な舞台に立つのは久しぶりでした。
作、演出やお手伝いでは常に何かしら関わってましたけどね。

観にきてくださった方々には心より感謝申し上げます。

さて、初日(2月28日)に来てくださった方と、2日目・3日目にご来場された方とでは感想がまったく異なると思います。

芝居は映画と違って生モノですから、回によって雰囲気が異なるのは当然ですが、
今回、初日と2日目以降とではまったく違う作品なんじゃないかってくらい変わりました。
実際にやってみて初めて見えてくる問題がいろいろとあって、初演後即座に方針を変更しようということになりました。

最初は「気配」や「気のやりとり」に重きを置いていたんです。
でもそれじゃ伝わるものも伝わらなくて。
稽古場ではけっこう通じていたんですが、劇場では通じませんでした。
へんな間(ま)ができてしまったんですね。

今回の劇場は特にそうだったんですが、
舞台から客を見たときと、客席から舞台を見たときとで距離感がまったく違うんです。
初演後、客席から舞台を見たら、役者がこんなに小さく見えるのかと驚きました。
ほんとに舞台からだと客席はもっともっと近くに感じたのに。
フレームがかっちりした舞台装置もこれに拍車をかけていたようです。

   ◆

2日目からは、とにかく前へ前への姿勢でした。
はっちゃけた、とでも言いましょうか。
「気配」や「雰囲気」重視から「勢い」や「スピード」へとシフトチェンジ。

どの役者も切り替えを上手くやって、調子付きました。
舞台の嫌なジンクスである2落ち(※)になることもなく、上り調子となりました。

稽古場で飽きるほど稽古していても、劇場に入ってみないと分からないことってあるんですね。
頭ではわかっていたことですが、今回の芝居では改めて痛感させられました。
ゲネ(※)がちゃんとできていれば、もっと早くに気付けたのですがね。

でも、初日もその後も、どれも本気でやったことに間違いはありません。
手を抜くことだけはしちゃいけないんです。
手直しなどが入るため、後の公演の方が質的に良くなるのは当然です。
でも初日のものだって、そこで来てくれたお客さんにはそれが「完成品」なんです。

2日目、方針転換して作品は良くなりました。
やってても楽しくなりました。
そんな時、ふと冷静に考えます。
初日、今となってはぜんぜん違うものになったけれど、心構えや本気さは変わっていないか、と。

うん、だいじょうぶ。

ご来場くださった皆様、あらためて、ありがとうございました。


※2落ち【におち】……本番2ステージ目はテンションや勢いが落ち、ミスも多くなりがちになること。劇場の空気に慣れたり、疲れが出たりするためだろう。2抜け、ともいう。

※ゲネ【げね】……ゲネラルプローべ。実際の舞台で、照明・音響を乗せ、本物のセットや小道具を使って行う最終の通し稽古のこと。


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稲葉 馨

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