2004年09月28日(火) |
メイ・サートン(中村輝子=訳)『回復まで』(みすず書房) |
メイ・サートン(中村輝子=訳)『回復まで』(みすず書房)を読んだ。 作家の66歳から67歳時の日記である。安穏と生きているわけではない独り暮らしの女性作家・詩人はシビアな現実に直面して心がうちひしがれた状態にあった。そのどん底から朝日のようにじょじょに明るく強くなっていく自己のこころを凝視し、語り、伝える作家の貴重な日記による記録である。 残念なのはメイ・サートンはすでに亡くなっていることと、この66歳日記の時が1978年から1979年という遠い過去であることである。 メイ・サートンは1995年に83歳で亡くなっているし、1978年といえば26年前ではないか。 日本では1991年に最初の『独り居の日記』が出て以来、1999年にやっと次の日記『海辺の家』が続き、2002年に今回の『回復まで』という順番で邦訳出版が実現しているのだから、もっと早くに知っていたかったというのは単なるわがままにすぎないのだが、知らなかったことが恥ずかしい。
「だれか作家仲間が階下で仕事をしている、と思う気分はいい。」(204頁)
これと同じような言い方は終盤にもあらわれ、詩人の孤独な魂が、いわば強くなりながら柔らかく平らかなものを獲得しつつあることを示している。 この文学は古いようで新しい。未来の文学である。
最近、最後の日記『八二歳の日記』(みすず書房)が出たが、訳者のあとがきによると『回復まで』のあと、『七〇歳にて』『発作のあと』『エンドゲーム』『アンコール』と書き続けての『八二歳の日記』だそうである。 読もうか読むまいか実に迷う。
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