大崎善生『パイロットフィッシュ』『アジアンタムブルー』(共に角川書店の本)を続けて読んだ。 風俗雑誌の男性編集者の回想談であり、人生論。 相手の都合も考えずに深更でも電話を掛けてくる友人。 十九年ぶりに突然電話してきたかつての恋人。 親友の夫や恋人と関係してしまう女性。 やさし過ぎて身も心も病んでしまう風俗の女性。 お伽話のような美しい恋や出会いが繊細な文体で描かれ、なんとも言えぬため息を生むが、じきに次々に失恋や死となって主人公を襲う。 流麗華麗な文章とエピソードの積み重ねが読み終えることを強制する。 『聖の青春』(講談社)と題材は異なるが奥底に死への凝視を感じさせる点では共通性がある。 これもまた現代日本の大人のための幻想童話。 福田和也『作家の値うちの使い方』(飛鳥新社)は眉唾で接したが、意外にも面白かった。毀誉褒貶のあった『作家の値うち』を読み、わたしもこれはどうかと思った。しかし、辛口の書評集的本として読めばどうと言うことはない。見解の相違こそ読むかいがあるというもの。 いわゆる純文学とエンタテインメントの二つに分けて百点満点で評価するのはいまさらとしても、膨大な作品を読み上げ、点数をつけて整理していくという「作業」自体たいへんだが、面白い試みだったのだと考え直した。 先週は、石川達三週間と位置づけて見事失敗。『蒼氓』の一ページ目を開いたり、古い文庫本を何冊か買ったり、で終わった。 10ページ読書をする。 対象は『飛行少女』『奇偶』など。 今週は、獅子文六週とする。
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