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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
もうひとりのシェイクスピア

1月2日付けの更新は3日付けと同時にアップします。
1月3日からお読みください。

400年前にサンファン・バウンティスタ号に引き続き、同じ時代の映画の話題です。
海洋モノではないんですけども、海洋小説好きにはやはり、エリザベス朝期の英国は馴染みの時代だと思います。
そんな方におすすめ「もうひとりのシェイクスピア」
公式HPは下記
http://shakespeare-movie.com/

以前にロバート・ダウニーJr.のシャーロック・ホームズ映画の時、私は友人から「とにかく、あのテムズ河を見にこの映画に行って!」と言われたのですが、この「もうひとりのシェイクスピア」にも同じことが言えます。

VFXで再現された16世紀末のロンドンと、テムズ河、ロンドン橋、ガレオン船が見事です。
あの時代がお好きな方には嬉しい作品ではないかしら? もっとも扱っているテーマは「シェイクスピアはゴースト・ライターだった」という異説で、これを見てそのまま史実だと思われると困るけれども、こういう歴史もあったかもしれない…と想像してみるとなかなか、くるものがある作品です。

この時代はこれまでにドラマも映画もいろいろ作成されてきていますが、
この映画の雰囲気は、ヘレン・ミレンのテレビ・ミニ・シリーズ「エリザベス〜愛と陰謀の王宮〜」に一番近いかしら?

メアリ・スチュアートを処刑した王宮としては、その後継者がメアリの息子であるジェームズである、というのはやはりいろいろと大変だったろうなぁと容易に想像できますが、そのあたりの歴史(エリザベス死去後)を描いた映画は初めてだったので、なかなか面白かったですよ。以下ねたばれはいたしませんが、

シェイクスピアがゴーストライターだったというは歴史上の一つの仮説にすぎないものの、仮説にしても、このストーリーは良く出来ている。エセックス伯など当時の有名人に程よく役目を充てて、見事なパズルを完成させている感じ。

ゴーストライターを見破るのが、劇作家にしてスパイのマーロウというのは上手い役振りだと思いましたが、彼ってこの年まで生きてましたっけ?…というツッコミはなしで、あまり史実を追求せず、時代を楽しめば良いのではと。
監督のローランド・エメリッヒは、最近はパニック映画で有名ですが、そう言えばアメリカ独立戦争を描いた「パトリオット」の監督だったと思い出しました。

そうそう、この映画、ボライソー・ファンには嬉しいシーンが。
いちばん最初の舞台シーンが「ヘンリー五世」の聖クリスピアン・スピーチです。
But we in it shall be remembered ;
We few, we happy few, we band of brothers:
For he to day that sheds his blood with me,
Shall be my brother:
という「我ら幸いなる少数」のセリフを、この舞台に熱狂する観客たちとともに味わうことができます。


さて、先日の「ホビット」感想原稿をちょっと手直ししました。homeのところを訂正削除しました。
先日3DHFRで2回目を見てきたのですが、3Dは字幕が見にくいので、映像に集中しようと思って、結果字幕なしに英語のセリフをわかるところだけヒアリングする形に。
してみましたら、私のヒアリングはけっこう字幕に引っ張られてドリームしていたことに気づきました。

ビルボの論理はもっとシビア。
そこに居ると居心地の良いところ、ホビット庄が自分のhome、ところが君たちドワーフは僕を冒険に駆り出し、僕からhomeを奪った。でもhomeを失った今こそ、君たちが失った故郷(home)に寄せる思いがわかる。だから君たちと一緒に君たちの故郷を取り戻しに行こう、って彼は言ってるんですね。
このhome(故郷)とamong us(旅の仲間)は単語はキーワードのように使われていて、裂け谷の会話にもこのキーワードが登場します。
これも以前には気がつかなかったところです。
やっぱり原語でないとわからない部分ってあるのだなぁと思いましたが、しかし原語だとヒアリングできない部分もね。
ドワーフさんたちの中には訛ってる方がいらっしゃるので、なに言ってるんだか聞き取れない方も。

この映画、日本ではいまひとつだそうですが、3D字幕ってやっぱりちょっと見るの大変。
HFR48コマ以外の3Dは日本語吹替版上映にした方がお客さんには親しみやすいかもしれません。
原作好きの人は2D字幕か3DHFRにいくと思いますし、映画館はいまひとつお客さんのニーズをつかみきれていないような。


2013年01月02日(水)