Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ロシアよりテムズ河へ、愛をこめて
英国ロンドンのタワー・ブリッジの下流左岸に、H.M.S.Belfastという第二次大戦当時の軽巡洋艦が係留され、艦内が博物館となっているのをごぞんじでしょうか? ベルファスト号は1941〜45年にArctic Convoyすなわち、援ソ船団(北極海の不凍港ムルマンスクへ連合国の援助物資を輸送する船団)の護衛艦として活躍していた艦だそうです。
古い写真で恐縮ですが、これは私は1989年に初めてイギリスを旅行した時に撮ったもの。 ロンドンの滞在日数がとれなかったのでグリニッジの海事博物館までは行けませんでしたが、ここならロンドン市内なのでと見学に行きました。 アリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」(ハヤカワ文庫NV)は読んでいましたので、援ソ船団の護衛艦はやはり見ておかなければとも思いました。
ミステリ・マガジンでかつて冒険・スパイ小説のベスト100(出版社問わず)アンケートを行った時に、海洋小説部門で2位に大差をつけて1位になったのはこのユリシーズ号でした。 それだけではなく、冒険、スパイ、国際謀略小説全部門をあわせた総合順位でもフレデリック・フォーサイスやトム・クランシー、ディック・フランシスらを抑えてこれが1位ってところが凄いと思いましたが、 でもそれだけのことはある本だと思います。 読んだ後、ショックのあまりしばらく他の本が読めなくなった…という本は、私はこれまでのところ、この1冊きりです。 これから読まれる方は、覚悟してからお読みください。
さて、話を元に戻して、ベルファスト号ですが、このようなニュースがありました。 Russian and British Veterans of the Arctic Convoys Celebrated the Unveiling of Russian Masts on HMS Belfast in London http://www.prnewswire.com/news-releases/russian-and-british-veterans-of-the-arctic-convoys-celebrated-the-unveiling-of-russian-masts-on-hms-belfast-in-london-105518393.html
テムズ河に係船公開されているベルファスト号のマストを改修することになったが、新しいマストはペテルスブルグの造船所で作られたもので、第二次大戦当時の援助を感謝してロシア連邦から贈られた。
贈呈式にはロシア連邦大統領府長官のセルゲイ・ナルイシキン氏と、英国側からはエジンバラ公フィリップ殿下が出席した。 またかつて援ソ船団に加わっていた関係者が出席した。
新しいマストなどの写真はこちら、 http://www.kifir.info/hmsb/
ベルファスト号HPのニュースレリース HMS Belfast Masts from Russia with Love http://hmsbelfast.iwm.org.uk/server/show/ConWebDoc.7026
なんというか、ちょっと驚いたんですよね。 私が上の写真を撮った時(1989年)には、まだソ連という国があって冷戦が終わっていなかったので。 イギリスとロシアの老兵が一同に会して、かつての援ソ船団を讃え合う…という機会が来るとは、と。 まぁユーラシア大陸の反対側の島国では折りも折り、ロシア大使を呼び返すとかいまだに戦後が続いているので。
2010年11月02日(火)
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