先週の日曜日に早起きして駿河湾まで行き、小型帆船(スクーナー;艇長54ft, 10t)に乗ってきました。チャーターヨット、帆船、Ami号、母港は静岡県沼津市の静浦港です。Ami号のホームページhttp://ami-yacht.com/index.phpこの時期の太平洋岸は、快晴に恵まれれば空気の透明度も増すので、海と空が本当に綺麗です。先週の風は強い方だったのか? 初めての私には比較ができませんが、駿河湾は相模湾と異なり湾が深いので、相模湾ほどは荒れないそうです。それでも東京湾とは違って、今回はあまり沖に出ていないにもかかわらず、いわゆる「うねり」というのを少し体験することができました。東京湾は大丈夫でも下田沖の釣り船で酔った経験のある私は、一応用心に酔い止め飲んで乗船したのですが、これは正解だったかも。風があったので、沖ではエンジンを切って完全に帆走していました。何が嬉しかったって、策具と帆が風で鳴ったりきしんだりする音を味わうことができたこと。Ami号のマストとヤードは木製なのです。船体や甲板は現代の素材ですから、M&Cの映画の効果音みたいな船体のきしむ音は聞こえませんけど、でも風の音と、時々ばしゃって言う並みの音と、ぎぃっぎぃって策具のきしむ音を聴いているのは、本当に素敵。私のような者には何よりのヒーリング・ミュージックかもしれません。それから、今回は方向転換(タッキング)の実際を船上で体感できたのが何よりの収穫でした。帆船は、以前に東京湾で「海星」の1日航海を体験していますが、あの時はあまり風がなかったし、初めてでロープ引っ張るの何やらに追われて全体を見ている暇がなかったしで、風をどう利用してどう船が方向転換するのか?っていうのを学ぶ余裕がなかったのですが、あ、いや今回も余裕はぜんぜん無く…、というか、すみません。タック混乱させて失敗させた本人なので、偉そうなことは全然…どころか、書く前にお詫びしておきます、同乗者の皆様>…にもかかわらず、本人はとても楽しんでおりまして(あーごめんなさい)、何が面白かったかというと、舵がまわって船首がまわって、シートをゆるめられてばたついたジブが逆の風をとらえてぐーっと押されて、さらにぐぐっと船首がまわる瞬間。夏にディンギーに乗せていただいた時には、ここまではっきり体感できなかったんですけど、ジブだと凄くわかりやすい。あぁ小説で読んだ通りだわ!と実は内心感激していて、ペーパードライバーが初めて自動車教習所で構内一周した感激!みたいな感じでした。今ダドリ・ポープなど読むと、体感としてわかるのでしょうか?もっともスクーナーとフリゲートでは規模が全然違いますが。そうそう小説と言えば、ここ駿河湾は北方謙三「ブラッディドール」の舞台となる海ですね。ホテル・キーラーゴのヨットハーバーから、主人公たちがよくモータークルーザーを出していた海。「岬の蔭を抜けると急にうねりが」という描写は実感できましたが、こんなに富士山が綺麗だとは思いませんでした。あの本にはあまり海からみる山の描写がなかったような。あの主人公たちは皆さん海のレジャーばかりだから…実際は富士山だけでなく南アルプス北岳なども洋上から見ることができます。でも今回私は本当に役立たずの陸者でした。海星で習ったことは、すっかり忘れ果てていて、午後になってようやくロープの後始末のお手伝いをちょろちょろしたくらいで。咄嗟の対応が求められるタッキング時の労働力には、全くなりませんでした。次回がありましたら、もう少しちゃんと復習して、ガスケット結べるくらいには上達したいと(というか復活?これも習ったことの筈なんだけど)。あーでもAmi号のあの規模でもロープが山ほどあって、何がどこにつながってどこを引っ張るとどうなるのかは、全くさっぱり。あの巨大帆船の策具の配置がたたき込まれていて、嵐のような厳しい条件下で的確に反応して操船できるというのは、本当に本当に凄いことなのだと、しみじみ実感した次第です。ダグラス・リーマンの続きは来週です。