バルト海の入口、デンマーク、スウェーデン二国の間を抜ける、バルト海入口の海峡は、近年大きく様変わりしました。この海峡、Oresundという名前なのですが、このOは、斜めに/の入ったO(ゼロとOを区別するためにゼロに斜め線を入れますが、あのような感じ)、原語では「オ」と「エ」の中間のような発音をするようです。おかげで「Ore」の日本語訳には「オーレ」と「エーレ」が混在しています。「sund」は英語の「sound」と同じ語源で、「海峡」という意味なのですが、これまで訳してしまい「エレソン海峡」とした新聞を以前に見たことがあります。それって「エレ海峡海峡」になってしまいますって。定訳がないので、とりあえずここでは、エーレ海峡としておきます。エーレ海峡がスポットライトを浴びたのは、2000年7月。この海峡に、橋とトンネルを組み合わせたデンマーク・スウェーデン横断道路が開通しました。東京湾横断道路のように、デンマーク側がトンネル、海峡中央サルトホルム島の南部に人口島を造成して、ここから先スウェーデンの対岸マルメまでが橋梁となります。橋の高さは、横浜ベイブリッジよりちょっと高いので、クイーンエリザベス号も通過できますし、デンマーク側も、埋立と同時に航路浚渫が進み、コペンハーゲン海戦の時のような浅瀬の危険も無いようです。もっともこの海峡がバルト海海軍戦略の要所である事情は変わらず、海峡横断道路の建設にあたっては「空母がいかに通過できるか」が問題になったようですが。私がコペンハーゲンを旅行したのは、このエーレ海峡横断道路の建設前でした。というわけでかなり昔の写真になりますが、ご紹介してしまいましょう。横断道がない昔ってことで、かえって景色的には19世紀初頭に少し近いでしょうか?ホーンブロワーは行く手のサルトホルムとアマガーのことを考えていた。あそこを通過する時が最大の危機だろう。幸いなことにサルトホルム島は平べったいので、砲台は海峡を見下ろす位置が低く、あまり威力がない。《サルトホルム島》コペンハーゲンのカストロップ空港に着陸直前の旅客機の窓から。コペンハーゲンに着陸する飛行機に乗る時は、窓際席をおすすめします。エーレ海峡がばっちり眼下です。この写真でも海峡の狭さがわかりますよね。でもこのサルトホルム島、そういうわけで今は着陸間近の旅客機が低空で頭上を通過するので、スティーブンの愛するケワタガモはみられないかも。ジャックがまだそこにいるとき、スティーブンが、彼にしては珍しく早い時間に姿を現した。…(中略)…「それよりもきみをもっと喜ばせるものを見せてあげよう。あそこに緑色の屋根とテラスが見えるかい?あれがハムレットの舞台となった城だ。エルシノアの町だよ」「エルシノアだって? あれが正真正銘のハムレットの城かい? それは凄いな。感激だ。堂々たる大建築物じゃないか。畏敬の念なしには見られない。想像上のものだとばかり思っていたのに」《クロンボー城とエーレ海峡出口:北をのぞむ》コペンハーゲンから1時間ほど、観光客なら必ず訪れるハムレットの城クロンボー城。城内のみではなく、窓の外を見ると、沖の艦船には脅威だった砲台跡。Helsingerは原語読みではヘルシンゲルですが、英国にはエルシノアという読みで伝わっていたようですね。《ヘルシンゲル(エルシノア):クロンボー城》ヘルシンゲルからは対岸スウェーデンのヘルシンボー(ヘルシングボリ)が手にとるように見えます。スティーブンは「お早う、ジャック」と言ってから周囲を見回した。「ひゃあ、思っていたよりさらに狭いな」本当に狭かった。左舷側の陸岸には明るい陽差しを浴びて歩いているスウェーデン人の姿がはっきり見て取れるし、右舷側の陸岸にはデンマーク人の姿が見てとれる。両岸の感覚は3マイルしかなく、エーリエル号はその真ん中、どちらかと言えばスウェーデン側に近い海面をゆったりした速度で這うように南へ進んでいる。《対岸のスウェーデン:ヘルシンボー》クロンボー城はデンマーク観光の定番ですが、時間があったら是非、城の横の港からフェリーで対岸に渡ってみてください。20分でスウェーデンです。彼らの航海した海を、あなたも手軽に渡ることが可能なのですから。