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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
海賊十選

唐突ですが、牛若丸と弁慶のお話はごぞんじですか?
しばらく前に友人のブログで、最近は歴史ヒーローの逸話を知らない人が多い、という話題がありました。
日本人であれば誰でも牛若丸と弁慶と五条大橋を知っているわけではないのだそうです。

いや何故いきなり牛若丸(義経)の話かというと、
欧米での海賊大人気にオドロキ呆れる今日このごろだからです。
「パイレーツ・オブ・カリビアン:デッドマンズ・チェスト」は、ロード・オブ・ザ・リングもスターウォーズもスパイダーマンも蹴散らす、世界歴代1位のオープニング興収だそうですね。
みなさん、そんなに海賊お好き???

いや、これがお好きみたいなんですね。欧米では。
パイレーツ前作でインタビューを受けたオーランド・ブルームが、「そりゃ子供の頃は海賊ごっこをやってたから、撮影は楽しかった」と答えた時、私はこれってリップサービス?と思ったものでした。
だってオーリはまだ30才にはなっていない…どう考えてもテレビゲーム世代なわけで、日本の同世代の子供時代の日常から考えると家の中でテレビゲームにはまっていても、ホントに貴方、海賊ごっこなんてレトロなことやってたの?と思うわけですよ。
なにせ海賊が活躍したのは16〜17世紀、日本で言えば戦国〜江戸時代の話しなんだから、これ日本で言えばチャンバラごっこでしょう?

昔のイギリスの子供たちが海賊ごっこで遊んでいたのは、ピーターパンを読んでもアーサー・ランサムを読んでも自明のことです。
でもあれは60年以上前ですからね。
そのころは日本だってチャンバラごっこをしていました。
ランサムの子供たちよりちょっと下になる私の老父なども、討入りごっこ(赤穂浪士の討入を模したチャンバラ)の思い出があるという。
海賊と赤穂浪士はともに17世紀で、時代的には同じでしょう。

でも、もはや「若い人」には分類されなくなってしまった私でも、子供時代にチャンバラごっこなんて…、周囲の男の子を見てもそんな外遊びはしていませんでした。
仮面ライダーごっこをして足を折ったという男の子の話しを「うそ〜」と思って聞いていて「だってあれは特撮じゃない」と悟っていた可愛くないテレビっ子でした。
テレビゲームはまだなかったけど、外遊びと言えば、テレビや漫画に憧れて、野球とかバレーボールとかテニス(バトミントンのラケットで軟球を打つマネゴト)とか。
チャンバラやらずに剣道習ってた男の子はいたけど、これも何か剣道まんががあったんですよね。
私の世代ですらそうなのですから、今の日本の30才に満たない世代はチャンバラなんてまず絶対にしないでしょう。

ところがです。
この春だったか「ナルニア国」のインタビューを読んでいて、私はちょっと驚きました。
四人兄弟を演じた子役たちが、空き時間にセットで海賊ごっこをやれたのが楽しかった、と言うのです。
この発言者は年少組ではなくて、スーザンを演じたアナ・ポップウェル。
え? 今でも英国人は海賊ごっこをするの?
…とすると、オーリの幼少時体験もあながちリップサービスではないのか???

この海賊人気の秘密…および英国の子供たちの今の外遊びの実態を、ぜひぜひ知りたいものです。


さて、アメリカ・ニュージャージーの地方紙「Newdays」は、この海賊人気を、
「海賊はロマンチストなアウトローだから」と分析しています。もっとも現代のマラッカ海峡あたりの海賊は、モーターボートに乗りマシンガンで武装して、ロマンのへったくれもないようですが。
映画の世界の海賊は、Newsday紙に言わせれば「歴史とファンタジーを挽肉機にかけて作ったハンバーグみたいなもの。ハンバーグが嫌いな人はまずいない」
そして、欧米で人気な古今東西の海賊十選を紹介しています。

第10位 Patchy and Painty
米国で1993年から放映されているアニメーション「SpongeBob SquarePants」のキャラクターでアイパッチをした海賊。
2003年に劇場映画化され、数々の商品化がされている…らしい。
詳しくは下記参照
http://en.wikipedia.org/wiki/SpongeBob_SquarePants

第9位 Jean LaFoote
米国では有名なマスコット・キャラクター。Quaker Oats社のシリアルのマスコット・キャラクターであるキャプテン・クランチの敵役。
シリアルを積んだ船団を狙う海賊ラフィットと、護衛船団の指揮官クランチ艦長の戦いをシリーズ化したシリアルのCM(アニメ)は1966年〜1988年まで放映された。
クランチの本名はホレイショ・マゼラン・クランチだそうで、CMは最初、海尉から始まりクランチが艦長へと出世していくストーリーだったそうです。
クランチ艦長はこちら http://en.wikipedia.org/wiki/Cap'n_Crunch
海賊ラフットはこちら http://scoop.diamondgalleries.com/scoop_article.asp?ai=3377&si=125

第8位 Blackbeard and Jean Lafitte
海賊ラフットのモデルとなったのは実在の海賊ジャン・ラフィット。
ラフィットの物語は監督アンソニー・クイン、主演(ラフィット)ユル・ブリンナーで映画化されました。
「The Buccaneer」 http://www.imdb.com/title/tt0051436/
実在の海賊を描いた映画として今ひとつ有名なのは、Raoul Walsh監督の「Blackbeard the pirate」 http://www.imdb.com/title/tt0044426/。
Walshはグレゴリー・ペック主演の「艦長ホレイショ・ホーンブロワー」の監督でもあります。

第7位 Crimson Pirate
50年前のジャック・スパロウと言えば、バート・ランカスターのCaptain Valloと「The Crimson Pirate」だそうな。
18世紀のカリブ海が舞台…とくれば時代も場所もまさに同じ。

第6位 The Dragon Lady
ドラゴン・レディ(龍姫)の異名を持つライ・チョイ・サンは、漫画としては古典と言えるMilt Caniffの「Queen of the Pirates」(海賊の女王)の主人公。
Pat RyanとTerry Leeで1940年に映画化、1952年にはTVシリーズ化もされた。
中国の女海賊というとアーサー・ランサム・ファンとしては思うところがおありでしょうが、そう考えるのは我々だけではないようで、
同じことを考察された方のHPはこちら http://www.humboldt1.com/ar/literary/lilius.htm

第5位 Jack Sparrow
今やジャック・スパロウは、興行収入を呼び込むディズニーの宝箱。

第4位 The Black Pirate
世界最初のテクニカラー長編海賊映画「The Black Pirate」。
ダグラス・フェアバンクスが1926年に脚本・主演したサイレント・ムービー http://www.imdb.com/title/tt0016654/

第3位 Errol Flynn
なぜかここだけ役名ではなくって、俳優名。
「Captain Blood」(1935)、「The Sea Hawk」(1940)などで印象的な私掠船乗りを演じ、ダグラス・フェアバンクスの後継者と呼ばれたハリウッド・スター。
Captain Blood http://www.imdb.com/title/tt0026174/
The Sea Hawk http://www.imdb.com/title/tt0033028/
一昨年公開されたデカプリオの「アビエイター」ではジュード・ロウがフリンを演じてましたね。

第2位 Captain Hook
子供たちが初めて出会う海賊はたぶんジェームズ・フック船長だろう。
ジェームズ・バリの戯曲「ピーターパン」に登場する海賊船長である。
1960年のTVシリーズでは、Cyril Ritchardが、1991年の「Hook」(監督:スティーブン・スピルバーグ)ではダスティン・ホフマンがフックを演じていた。
Hook http://www.imdb.com/title/tt0102057/
2004年の「ピーターパン」ではジェイソン・アイザックスがフックでしたね。

第1位 Long John Silver
海賊の中の海賊。
ロバート・ルイス・スティーブンスンが1883年に書いた児童文学「宝島」は、今日の全ての海賊の原型となっている。
1950年の「Treasure Island」ではRobert Newtonがジョン・シルバーを演じた。
Treasure Island http://www.imdb.com/title/tt0043067/

「Newdays」の記事原文はこちら:
http://www.newsday.com/features/printedition/ny-ffmov4799626jul02,0,5865141.story?coll=ny-features-print


2006年07月16日(日)