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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ドクターの誕生日に思う

昨日3月25日は、スティーブン・マチュリンの誕生日とされている日です。
お誕生日をお祝いしていたサイトもあるようですね。

昨日の日記では冒険小説の中のアイルランド人を語ったのですが、それで思い出したことがあります。
マチュリンってアリエスつまり牡羊座なんですね。アリエスの人は生まれながらの癒し手(healer)で医者の相なのだそうです。それが兵士であることは珍しい。
…とあるアイルランド人の老教授が、とある冒険小説で言っていました。

ほぼ初対面の人に突然、占星術の話しを始めるところがこの老教授の怪しさというかケルト臭の感じられるエピソードになっているのですが、
小説世界で私の持つ典型的アイルランド人のイメージは、この教授リーアム・デブリンの強烈な印象にかなりなところ支配されています。
ジャック・ヒギンズの第二次大戦を舞台にしたベストセラー「鷲は舞い降りた」の副主人公であるデブリンは、映画では若き日のドナルド・サザランド(今や「24」のキーファーのお父さんと言った方が良いかしら?)が演じていました。
このキャラクターは余程魅力的だったのか、デブリンはその後、1980年代を舞台とした同一作家のスパイ小説に、老教授として再登場します。

デブリンは自己の信条に何処までも忠実。皮肉屋でシニカルで人生を斜めに見ているように見えながら、己の信じた人生を貫き通す人です。
これが私の持つアイルランド人の基本イメージでしょうか。

たまたま…というか現実社会で、インタビューなどを知る機会の多かったもう一人のアイルランド人=F1ドライバーのエディ・アーバイン(もうF1は引退してます)が同じような生き方をしていたものだから、何やら私の中では確たるアイルランド人のイメージが出来上がってしまいました。
…これが正しいのかどうかわかりません。どうも極端な人の例をたまたま二人知ってしまったような気がしないでもないのですが、

そのイメージでマチュリンを見ると、自己の信条に忠実であるとかシニカルであるとかは当たっているのですが、時々ちょっと、この人はアイルランド人にしてはかなり情熱的だと思うところがあって、
1巻に登場する副長のディロンとか、4巻のマカダム医師の方が、シニカルでありながら根暗く頑固なアイリッシュのイメージに近いような…、
さらに、映画「マスター・アンド・コマンダー」でもよく描かれていますが、マチュリン先生は科学の人で、ケルト的怪しさというか土俗的なところが全くない。
ゆえになんとなく、らしくないところのあるアイルランド人だなぁと。

実は私は、マチュリンのところどころにラテンの血を感じるのです。
ただ彼の血の半分を構成するカタロニア人がどこまでラテン的なのかというと、これがわからない。
カタロニア人ってどういう人なのでしょう?
スペインに留学した人に聞いたら「カタロニア人はスペイン人より温厚だ」と言うのですが、

こういうものは、普通の本を読んでもわからないのですよね。
私がアイルランド人について多少のイメージを持つことができるのも、知識を与える解説本ではなく、アイルランド人やイングランド人の書いた小説を読んでいるからで、本当のイメージというのはやはり、その社会の内側で暮らす人でなければわからないものなのだと思います。

どこかにカタロニア人の何たるかがわかるスペインの小説(日本語に訳されたもの)はありませんかねぇ?

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リーアム・デブリンが牡羊座を語った…とある冒険小説とは
ジャック・ヒギンズ「テロリストに薔薇を」ハヤカワ文庫NV621のことです。


2005年03月26日(土)