Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
聖パトリックデー・パレードの日に思う
先週の日曜日、東京・表参道の聖パトリック・デー・パレードを見に行ってきました。 小じんまりとしたパレードでしたけど、生バグパイプと生フィドルを聴くことができて、楽しい思いをしてきました。
というような、ざっくばらんな話を本当は先週upしようと思っていたのですが、休みなのに仕事を引きずって…といいますか、先々週は硬い報告書のまとめをしていましたので、私自身がやわらかい文章を書けなくなってしまったみたいで、どうにも…断念いたしました。
というわけで一週間遅れの話題で恐縮ですが、今日は情報日記ではなくて、ざっくばらんなアイルランドの話。
先週のパレードに行って驚いたのは、西洋人の多さでした。沿道にもいっぱい。 東京ってこんなに西洋人多かったっけ?…と。 そう言えば2年前のW杯の時もそうでした。職場の近くのアイリッシュパブに、何処から降って湧いたかと思われるほどの西洋人が…。 実際のアイルランド人は、その中のごく少数でしょうけれど、沿道のアメリカ英語を話す人々の中の多くはアイルランド系アメリカ人かもしれません。 海外に移民として渡ったアイルランド系の人々は、現在本国に暮らす人々の4倍の数に上るとききます。
「アイルランド」という国には強烈に人を惹きつける魅力がある…ことは間違いないのでしょう。 なんと言っても、聖パトリックデー・パレードのようなものが有志で成り立ってしまう。 アジアの国ならともかくそれ以外にこんな国ありますか? 日本人の中にもアイルランドに魅せられた人々は数多くいらっしゃいます。アイルランドやスコットランドは、お好きな方は本当にお好きですよね。 アイルランドの魅力って何なのでしょう?
英国の冒険小説を読んでいると、アイルランド人とスコットランド人の魅力からは逃れられません。 ジャック・ヒギンズやアリステア・マクリーンのような、アイルランド系、スコットランド系の作家が自らの血に誇りをもって魅力的な人間像を描きだしていることもありますが、イングランド出身の作家たち、ハモンド・イネスやデズモンド・バグリィ、海洋系ではダグラス・リーマンやダドリ・ポープなどが描いてもアイルランド人、スコットランド人は魅力的なのですね。 ちなみに、パトリック・オブライアンはアイルランド系を思わせるペンネームですが、実はイングランド人です。
英国冒険小説のパターンで言うと、アイルランド人やスコットランド人は危険を察知する不思議な第六感や、人の心情を巧みに理解する能力もっている…ことが多い。 それを「ケルト的なちから」と解説していたのは、ハモンド・イネスの「報復の海」のあとがきだったように記憶しているのですが、違ったかしら?
実は私は、ハヤカワ文庫はNVと同じくらいFT(ファンタジー文庫)にお世話になっている人でして、洋書ペーパーバックも実は海洋小説と同じくらいアダルト・ファンタジーを購入していたりします。 読んでいるのはアメリカ女流作家のファンタジー小説が多いのですが、こちらの世界ではアイルランドは大人気。 アイルランド系移民の少女が旅行先のアイルランドで妖精界にまぎれこんでしまう話あり、能力者は総じて赤毛(ケルト系の特色)という設定の小説あり、明らかに古代アイルランドと思われる島を舞台にした物語があったり、 これらの物語には、アメリカ人・カナダ人たちのアイルランドへの憧れがかいま見えて面白い。 それでいて、アングロサクソン・プロテスタントではないアイルランド人またはアイルランド系移民は社会的には弱者であり、イングランド人やアングロサクソン・プロテスタントの一部にはアイルランド系を見下す風潮が確実にあるのです。
それは、当事者ではない日本人の私に理解できるものではありませんが、英米の小説全般に不思議な陰影を与え、それから少々不謹慎で恐縮ながら、小説における魅力を加えていることは確かのようです。
2005年03月25日(金)
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