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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
[Sea Britain 2005] 英国陸地測量部発行トラファルガー記念地図

日本で全国の5万分の一、2万5千分の一などの基本となる地形図を作って販売しているのは国土交通省の国土地理院、イギリスでこの仕事をしているのは独立行政法人のような組織の「Ordnance Survey」というところで、通常はこれを「英国陸地測量部」と訳しています。

でもordnance surveyという英語を直訳すると実は「兵站業務のための調査」という意味になり、その名前からもわかるように、昔は英国陸軍省の組織でした。
そしてこの組織がが最初の地図を作ったのは1801年。場所はロンドンの南東にあたる現在のケント州で、その目的はまさにナポレオンの英本土侵攻に備えた防御のための地図づくりだったのです。

その由縁かどうかはわかりませんが、Ordnance Surveyは今年のトラファルガー200年を記念して、「The Trafalger Way」という歴史地図を発行する、ということです。
この地図には当時の英国の街道…それもトラファルガー海戦の勝利とネルソンの死をロンドンに伝えたピックル号のLapenotiere海尉がたどったルート(ファルマス〜ロンドン)が記されています。

やったー!
これでファルマスからロンドンへの当時の街道ルートがわかろうというものです。
ボライソー・ファンとラミジ・ファンには夢の参考資料でございますわよ。
この地図、一般書店の店頭にも出るということなので、ネット書店からも手に入るのではないでしょうか?
陸地測量部のHPからも入手することができます。

このニュースに関するSea Britain 2005のプレスレリース
陸地測量部のプレスレリース

それにしても、英国人って本当に地図が好きですよね。
英国の小説ってよく地図がついていますよ。
児童文学とか読んでいると、小学生の女の子でも地図読んでますものね。英国にはきっと「地図の読めない女」は少ないに違いない。

そしてまた感心するのが、小説の中の地図がよく出来ていることで。
Ordnance Surveyの2万5千分の一地形図を購入して横においてみると、そっくりそのままなのに感動します。
なのでその逆もまたしかりなんです。

以前に、英国旅行の話をしてOrdnance Surveyの地図さえあれば、物語の舞台は何処でも行けますよ…というようなことを書いたと思うんですけど、私は「ウォーターシップダウンのうさぎたち」でこれを実際に試したことがあるのです。
この小説は英国南部バークシャー州の実際の地を舞台にした、うさぎたちの冒険物語で、日本語訳は「指輪物語」と同じ評論社から文庫で…まだ出ているかしら?…絶版になってないことを祈りますが。

この小説には扉に詳細な地図がついています。鉄道線路や川、高圧送電線まで書き込まれた地図が。
舞台がバークシャー州だとはわかっていたので、私は最初に、英国出張に行った父に頼んでバークシャー州のOrdnance Surveyの地図を買ってきてもらいました。その頃はまだ自分で英国に行くなんてことは考えもしなくて、ただ本当にこの地図の土地があるのか確かめたかっただけだったんですけど。

ところが買ってきてもらった地図を見ると、本当に小説についていた地図と同じなんですね。
まぁ鉄道や川があるのは当たり前かもしれませんが、送電線とか農場とかも本当に小説通りに地図に載っているんです。
ちょっと感動してしまって…。

それから数年たって、英国に…というかポーツマスとプリマスに海洋小説の舞台を尋ね歩く旅を実行することになったのですが、計画途中でふと気付いてしまったんです。
ウォーターシップダウンのうさぎたちの舞台になるオーバートンは、プリマスに行く途中にあるってことに。
手元に現代の地図はあるわけだし、これはひょっとして、オーバートンの駅で降りてこの地図通りに歩いて行けばエフラファ(物語の舞台の一つ)にたどりつけてしまうってことでは???

…というわけで私は旅の途中のオーバートンで途中下車し、Ordnance Surveyの地図と日本語訳文庫本についていた地図の拡大コピーを手にもって、現地に行ってみたのですが、
はっきり言ってしまえば、文庫本の地図だけで歩けてしまいました。それほど小説の中の地図は正確だったんです。

…というわけで、私には大変お世話になったOrdnance Surveyの地図ですから、今度も敬意を表して是非是非入手したいと思っています。
手にいれたら…、実際の地図を見てみないとわかりませんが、まあファルマスから走るとは言いませんが、プリマスからロンドンまでアレクシス・ヨークの労苦を忍びながらレンタカーの旅…くらいは本気で考えるかもしれません…といってもそれだけゆっくり休みをとれるのが何時になるかわかりませんから夢物語かもしれませんが。


2005年03月06日(日)