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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
魔法の島ガラパゴス

英国タイムズ紙2003年11月22日号から、「A Great Place to Meet Lounging Lizards」をご紹介します。
この記事は新聞の旅行欄に掲載されていたので、私は旅行案内だと思い紹介を後回しにしたのですが、今読んでいると撮影の裏話などが多く、もっと早くにご紹介すべきだったと、ちょっと反省しています。申し訳ありません。

A Great Place to Meet Lounging Lizards
By Graeme Grant, 2003/11/22
(タイムスのバックナンバー記事は一定期間がすぎるとリンク切れになりますので、トップページ(http://www.timesonline.co.uk/?999)のarchivesから記事名で検索をお願いいたします)

「ガラパゴスに数日滞在すると、」
ポール・ベタニーは私(タイムズ紙の記者)に語った。
「僕はあの島に完全に圧倒されてしまって、監督のピーター(ウィアー)のところに行って言ったんだ」
「僕のこれまでの演技は、ぜんぜん違う、これでは映画が台無しになる。僕が動物にかかわるシーンすべてを撮り直してくれないか、とね。ガラパゴスでなければわからない。僕は驚異の世界を実感し、大自然への賛美の思いに満たされた。ガラパゴスの自然の前では自分は実にちっぽけな存在だとわかる。あの島は素晴らしい場所なんだ。あなたも是非行ってみるべきだよ」
そこで、私(記者)は実際に行って解き明かしてみることにした。この驚異の世界を。

ガラパゴスはもともとは「ラス・エンカンターダス」(魔法をかけられた諸島)と呼ばれていた。
だが、人間がこの島にやってくるようになると、その魔法の幾分かは失われていった。
漂流したパナマの司教がこの島々を「発見」したのは、1533年のことである。スペイン王への書簡の中で司教は、この島の巨大な亀については述べているが、島そのものについては価値を認めていない。

16世紀末頃には海賊たちが基地として使っていたようだ。彼らは南米に突如出現したスペイン帝国の、ガレオン船と黄金をねらっていた。
18世紀になると捕鯨船がやってきて、島と周囲の海域を荒らし始めた。19世紀前半の50年の間だけでも700隻近い捕鯨船がこの海域で操業し、ガラパゴス島から20万頭の大亀を捕獲し、幾種類かの亜種を絶滅に追い込み、島にネズミ、家畜、ロバと犬を持ち込んだという。

ガラパゴス島で映画の撮影が行われたのは初めてのことである。
この映画のロケーション担当マネージャーは、この島でのロケにこだわった理由を、
「今や大抵のものはコンピューター・グラフィックスで作り出すことができる。だが、のそのそ這い回る海イグアナや、縦横無尽に飛び回るフリゲート・バード(グンカンドリ)、そのビーズのような目でこちらをじっと見返す、水色の足をした不思議なカツオドリを作り出すことができるだろうか? 俳優たちを全くおそれず近寄ってくる動物たち。それはデジタルでは絶対に代用のできない映像だ」

自然保護の徹底しているガラパゴス島のこと、撮影隊も通常の観光客以上の動物への接近は許されなかった。
映画の登場人物たちが動物を捕獲するシーンはガラパゴスではなく、すべてメキシコで撮影された。

少人数の撮影チームだけが島への上陸を許され、機材はすべて人力で搬送した。
「我々は、通常より大型のカメラを持った観光客にすぎなかった」とロケ担当マネージャー。
「だが撮影時に生じたもっとも大きな問題は、海イグアナの群れの中に踏み込めないことではなく、彼らに『岩の上から立ち退いてください』と言っても通じないことだった。アシカ同様イグアナも興奮しやすい生き物で、一日中太陽の下でゴロゴロしては、「アー」とかなんとか鳴いている。まったくうらやましいご身分だ」

実際に島に行って、私(記者)も驚かされ放しだった。
たとえばアシカたちは、実際にいたるところいて、まるでラブラドール・レトリバーの子犬の群れのようだ。
我々観光客は彼らに手を触れることが許されていないのに、彼らのほうからすり寄ってくる。
ポール・ベタニーの話を思い出す。
「撮影の合間に僕はうとうとと昼寝をしていた。目を覚ましてみると、なんとアシカの子が僕のすぐ横で丸くなって眠っていたのさ」

海の中でも観光客は、この豊穣の楽園の住人たちにしてやられる。
ガラパゴス以外の何処に行ったら、シュノーケリング中にカメラをつつかれて撮影が台無しになる…などということがあるだろう。カメラをつついたのは、遊び相手を欲しがっているアシカだ。
そして私は昼食をねらって急降下爆撃(dive-bombing)するペンギンの姿を撮り損なったのだった。
取り落としたカメラは、あやうく巨大なカメに踏んづけられるところだった。
このような場所が他にあるだろうか?

ガラパゴスは美しい島とは言い難いという意見もある。
そこにあるのは、人間の手の届かぬ荒涼とした光景だ。映画に登場するBartolome島は全くもって生き物の姿が見られぬような島だが、真黒な火山岩、暗褐色の溶岩がすべてを焼き尽くした地には荘厳さと、荒涼の美があり、地球のコアに触れたような気がする。

ガラパゴスを離れる日には、誰もが「もっとここに居たい、もっと見たい」と願うことだろう。
私はついぞ「飛べない鵜」を見ることができなかった。
だがラッセル・クロウ演じる艦長のセリフにもある通り
その鵜は飛べないのだから、きっと何処にも逃げてはいかないだろう。

ガラパゴスへの旅(英国から)
飛行機でエクアドルの首都キト市へ、ガラパゴスへの1週間クルーズ「ビーグル」はキトから出発。
英国からの往復航空賃とキト市(ヒルトン・ホテル)での2泊を含むツァー代金は2,775ポンド(約55万円)。
2週間クルーズは4,175ポンド(約83万円)から。

ベストシーズン
1年を通じて気候は安定しているが、比較的涼しく過ごしやすいのは5月〜12月。
海の透明度を求めるなら、1月〜3月。
この島はエル・ニーニョ現象の影響を非常に受けやすいため、エル・ニーニョの年は避けたほうが賢明。

ガラパゴス関連ホームページ
The Galapagos conservation Trust : www.gct.org
Galapagos National Park : www.ga;apagospark.org
Charles Darwin Foundation : www.darwinfoundation.org


2004年09月26日(日)