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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ハリウッドのUK(便宜上)俳優

映画専門誌「FLIX」7月号を買いました。表紙はオーランド・ブルーム。
特集が「ハリウッドに進出するUK俳優を徹底チェック」

ポール・ベタニーとジェームズ・ダーシーが取り上げられています。
ダーシーは6月下旬から、ミニシアターで主演作品「ドット・ジ・アイ」が公開されるようです。
東京は渋谷のシネ・セゾンらしいですが、詳しいことは来月かしら?

ところでこの特集、UK俳優といいながらアイルランドがしっかり入っています。便宜上UKなのだそうです(あ〜らら、スティーブンが聞いたら怒りそう)。
そのうえ何故かヒュー・グラントがいないんですけど、どうして?
ヨアンが入ってないけど…夏前ですから仕方ありませんか?

この特集、編集部独断と偏見のUK度評価(いかにもイギリス人らしさ)というのが出ているのですが、ベタニーはAで、ダーシーはA+というのが苦笑ものです。要するに二人とも「とっても英国人」というかアメリカ人になりにくい…というか。
A+をもらっている俳優さんは他に2人、コリン・ファースとピーター・オトゥールですから、まぁ…。



ところで「コールド・マウンテン」に行ってきました。
原作をきっちり追っているにもかかわらず、原作スピリットからかけはなれてしまった不思議な映画…という感想です。
以下多少のねたばれを含みます。

私にとって「コールド・マウンテン」の原作は、忙しい現代生活への癒しでした。
これが癒しだと言ったら、おそらく映画だけをご覧になった方はびっくりされるでしょうね。
この物語の何処がいったい癒しなんだ!…って。

映画の「コールド・マウンテン」は戦争というものが如何に、銃後の村を含めて人の心を荒廃させるか…の物語。
原作の「コールド・マウンテン」はそのような状況の中でも、大地に根付いて自らのペースでたくましく生きていく人々の物語でしょうか?
体と心に傷を負ったインマンは、長い長い故郷への旅の間に、大自然の力で癒されていきます。
故郷で待つエイダは、大地の娘ルビーの、それこそ地に足のついた、どこまでも前向きなエネルギーを受けて、前向きに生きていく力を得ていきます。それが原作の姿ではないかと。

映画化されたエイダとルビーの物語は、レニー・ゼルウィガーの熱演もあって、前向きの説得力があるのですが、インマンの物語は物語構成のせいで後向きに働いてしまう。ほんとうは各エピソードの間に長い時間があって、時間そのものがインマンを癒すのに、映画では全てのエピソードを原作通りに詰め込んだおかげで、癒しの時間がなくて次から次へと非道い目に遭っていく…ような展開になってしまっています。
あれでは癒しどころかボロボロになって帰郷してもおかしくはないんじゃないかしら?

この改編を、おそらくミンゲラ監督は意図的にやっているのだと思います。
監督が訴えたかったのは、おそらく、戦争がいかに普通の人の心を荒廃させるか…なのでしょう。
その意味ではテーマ性は鮮やかに出ていると思いますが、でもそれはたぶん、大地に根付いた人々の素朴な暮らしとたくましさ…という原作スピリットからは、かなり離れてしまったのではないでしょうか。
渡し船の少女のエピソードと、未亡人セーラのエピソードは、一部が原作とは変わっていますが、あの二カ所を変えたことで全体のトーンとメッセージはがらっと変わってしまったと思います。
また隣人のエピソードの元になる話も、原作では伝聞ですが、映画では阿鼻叫喚をそのまま見せてしまいましたものね。
その意味では映像の力ってすごいものがあると思うんですけど。

でもあのカラスのエピソードは伏線として凄いなぁと思いました。とても綺麗な映像だったし。

この映画、宣伝に偽りありとまでは言わないけど、宣伝を鵜呑みにして「風と共に去りぬ」並みのラブ・ストーリーを期待していくと、肩すかしをくらうかもしれません。
当代きっての美男美女ジュード・ロウ+ニコール・キッドマン、+「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラから予想される胸の痛くなるような大ロマン…ではなくて、とてもしっとりとした地味で情感のあるラブ・ストーリーです。

追記:ドナルド・サザランドの目が相変わらずだったのが、妙に嬉しかったです(笑)。でもアクがなさすぎて、三國連太郎演じる善良な老人を見ているような違和感が…。


2004年05月24日(月)