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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
東京・池袋 「M&C」2本立て上映情報

関東圏限定情報となりますが(あ、この為に上京してくださるのであれば全国情報ですが)、池袋での二本立て上映のご案内です。

5月15日(土)〜21日(金) 東京・池袋「新文芸坐」 池袋駅東口徒歩3分 TEL:03-3971-9422
「レジェンド・オブ・メキシコ(LoM)」(A.バンデラス、S.ハエック、J.デップ…復活のM.ロークも)との二本立て。
土日と平日で上映スケジュールが異なります。

5月15,16日(土日)
M&C 10:30 / 15:00 / 19:40
LoM  12:50 / 17:30

5月17日(月)〜21日(金)
M&C  11:20 / 15:50 / 20:20(上映終了22:40)
LoM 09:30 / 13:50 / 18:20

スケジュールに変更はないと思いますが、いちおう直前に下記HPで時間をご確認ください。
新文芸坐HP http://www.shin-bungeiza.com/schedule.html

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大スクリーンは本当にこれが最後でしょうか?
DVDが手元にあっても、海と船だけは大スクリーンにかなわない。でも最後、遠ざかっているサプライズとアケロンを見たら寂しくて泣いてしまうかな。
それまで一緒に艦上にいるような気分だったのに、最後だけはヘリコプターの上から遠ざかる船を見送らなくちゃならないなんて。

あれを見ながら、突然、子供の頃の思い出が蘇りました。
私が海洋小説を読み始めたそもそものきっかけは、小学校の図書館で出会ったアーサー・ランサムの児童文学だった、という話は以前に書いたと思うのですが、全12冊のランサム全集をものすごい勢いで読んでいって、最後にたどり着くのが12巻「シロクマ号となぞの鳥」。
この巻では主人公の子供たちがスクーナー船にのってスコットランドに行き、現地の少年と知り合う夏休み(だったかな?)の冒険が描かれているのですが、この最後が確か、現地の少年が出航していくシロクマ号を見送る形で終わったように記憶しています。
当時小学校6年生だった私は、この最後がすごく寂しくて。それまで一緒に皆とシロクマ号で冒険したような気になっていたのに、最後に取り残されてお見送りなんですもの。

…それが後を引いて、大人になってから海洋小説にたどりついたようなところが私にはあります。
もう一度、船に乗りたくて、一緒に冒険しているような気になりたくて、サプライズ号にたどりついてしまいました…みたいな。

大自然と人間がテーマの一つになっている英国冒険小説とか、指輪物語のように野山を歩いて旅していくファンタジーとかも大好きなんですが、私の場合、全部基本は同じような気がします。ランサムの冒険の中にはテントに泊まって山に登るようなものもあるので、別の形で続きを読んでいるようです。
実は今「コールドマウンテン」の原作を読んでいるのですが、ただひたすらに歩いて故郷をめざすインマンの旅が実に良いです(読んでいる私には、です。早く故郷に帰りたい、歩かずに鳥になって飛んで帰れたらどんなに良いか…と思っているインマン本人には、もちろん全然よくはありません)。

英国冒険小説…と呼ばれているジャンルは、たとえ舞台が現代であっても、人間の敵だけが主人公の障害物ではなく、大自然もまた脅威であるというものが多い。結果として主人公は、最新鋭のポータブルコンピュータを抱えて衛星通信しながらも、ウクライナだかロシアだかの山中で寒さに震えることになる、とか…コンピュータの上だけのハイテク・スパイ小説にならないところが、ついつい英国作家の翻訳小説を手にとってしまう理由だったりするのでしょう。

海洋小説の主人公の敵といえば、もちろん海なのですが、それでいて彼らは海と離れて生きていくことはできません。
「ホーンブロワー」のある巻で(ねたばれになるので本の題名は秘密)、捕虜になった主人公が護送されていく途中、一瞬、海を目にし、自分がいかに海を憎みつつも愛していたか気づくシーンがありますが、そのようなところも海洋小説の魅力の一つかもしれません。

あとはやっぱり船…ですね。船そのものの魅力ももちろんあるのですが、人と船との関係にも魅了されます。「M&C」で言えば、乗組員たちが、どれほどサプライズ号を大切にしているか。最初の襲撃のあとジャックが艦長室で老いぼれサプライズの魅力を語るところ(壊れたトイレ含)、船大工であるラムとネイグルの丹精こめた修理、12ノットの最大船速を達成した時の本当に嬉しそうな艦長と副長…などなど。

主人公の年代記的な性格を持つ長編海洋小説には、主人公にとって特別な船、一生忘れられない思い出の船というものが出来てしまうものですが、ジャックにとっての特別な船は、やはりサプライズ号でしょう。
その意味では、「M&C」の映画化に際して、サプライズ号の物語を選んでくださったピーター・ウィアー監督に、本当に感謝。

同様に、もしラミジ・シリーズが映像化されるようなことがあれば、やはりカリプソ号の物語だと思うし、ボライソーの場合ならファラロープ号かハイペリオン号の物語になるのでしょう。かなわぬ夢ではありますが。

話し戻って、
海洋小説最終巻の幕引きとしては、やはりダドリ・ポープのラミジ・シリーズ23巻がいちばん良く出来ているでしょうか? 映画の「M&C」と同じでまだ先がありそうな余韻と伏線を残しているのですが、よく読むと1冊の物語としては完結し、サブキャラクターたちの行末もきちんとしている。
この本が出版された1990年当時には知らなかったのですが、後にネットで見つけた海外のダドリ・ポープ サイトを読んで知ったこと。ポープ自身はこの23巻で筆を折るつもりで、この巻を執筆したそうです。ゆえにキャラクターの始末などはある程度ついているのですが、それでいてまだ先がありそうな余韻を残しているところが、ユーモアにあふれたポープ独特のお茶目…で苦笑してしまいます。

オブライアンの20巻がどのように終わるのか? 気長に日本語訳を待つつもりの私はまだ原書も手にしていませんが、実は最近、21巻分の遺稿が発見されたとかで、これが英国で出版の運びになるようです。

そう言えば、ボライソーの27巻に当たる筈のペーパーバックが、英国ではもう発売されていますが、日本のネット洋書販売では近日発売のまま。この時差は洋書店を考慮してか? 明日あたり洋書店に行くと、実物を拝めるかもしれません。
洋書店と言えば、東京の大手洋書店の店頭に「M&Cメイキング本」が出ているそうです。場所は日本橋だそうです。ここにあるということは、新宿南口にもあるかも。まだ在庫があるかどうかわかりませんが、覗いて見る価値ありかもしれません。

***お詫びと訂正***
昨日のDVDマルチアングル映像紹介のところに間違いありましたので、ちょこっと直しました。ドゥードルの班は再装填はしていませんでした。準備を整えて待っていただけでした。記憶がごっちゃになっていて申し訳ありません。

**さらに馬鹿馬鹿しいおまけ話**
先日の海洋系オフ会の時に、オーブリーの着地音が話題になったのですが、艦長と副長がマストのてっぺんからステイを滑り下りてくるシーン。よく耳をすませて聞いてみてください。
某氏いわく、艦長が甲板に着地するときは「どんっ!」と凄い音がするが、副長が着地すると「とんっ!」という音しかしない。
言われてDVDに耳をすませてみました。
本当だ。
艦長と副長では着地音がちがう。

ところでこのシーン、特典ディスクのマルチアングルにも収録されているのですが、こちらは効果音やセリフの取り直しをしていない生映像(クロウとダーシーは、マストの一番上からではなく一番下のヤードあたりから下りてきます。それでも結構大変だと思うけど)。
それで、耳を澄ませて聞いていますと、
…艦長と副長の着地音には大した差はない。
つまりあの「どんっ!」は、音響効果さんの陰謀というか、体重100kgのリアリティを強調したかった結果…だと結論づけられるのではないでしょうか。


2004年05月08日(土)