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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
監督来日記者会見、米国版DVD特典映像など

このHPは原則として海外のM&C情報をご紹介しているのですが、これは国内のM&C情報…ただし英文からの要約です。
英字新聞 The Japan Timesの3月3日(水)号に、ピーター・ウィアー監督のインタビューが掲載されました。先日の来日時のものです。このインタビューは国内映画雑誌でもいろいろ紹介されていますが、他では見かけなかったQ&A3題(あとの2題は雑誌に載らなかった理由がわかるような…ちょっとひんしゅく)のみをご紹介します。
これは原文記事のごく一部です。3月3日号の新聞についてはまだバックナンバーの入手が可能ですので、新聞販売店にてご購入ください。

Weir's far from all at sea (The Japan Times 3/3 10面より)
(このタイトルは、撮影のほとんどを実際の海上ではなくプールのセットで行ったことから来ています)

Q:仇役を原作のアメリカ艦からフランス艦に変更したことについて
原作は1812年の米英戦争に設定されているが、この戦争はあまりよく知られておらず、また英国が誤った戦争をしかけたことは明らかである。パトリック・オブラインのシリーズ小説の舞台は本来、英国がフランスと敵対したナポレオン戦争でもあったため、映画の舞台を1805年に移した。
監督は「敵」を「幽霊(phantom)」として描きたいと考えていた。ジャックの戦いが、敵に対するものではなく自分自身との戦いであるように、ここでの「敵」は、ある意味象徴的存在である。

Q:子供たちの登場する映画について
子供が大人として扱われているストーリーは興味深いものだ、と監督は考えている。当時の英国海軍で実際に戦った少年たちの記録(要約者注:19世紀初頭に士官候補生としてフリゲート艦に勤務したフレデリック・マリアットの、実体験にもとづいた小説などを指しているものと思われる)が、詳細に映画には反映されている。
この映画は我々に、「子供」という概念はごく最近のもの、19世紀末のビクトリア朝期に出来あがったものなのだということを教えてくれる。どこの社会でも昔は、大人と同じ仕事が出来るまでに成長するや否や、子供が大人と同様に働くのは当然と考えられていた。

Q:同性愛について
ウィアー:英国海軍では同性愛は重大な軍規違反である。また監督自身は、エンデバー号(復元帆船)の体験航海に参加した経験から、帆を上げたり下ろしたりするのは重労働だと痛感している。「あなたたちも(当時の船上生活を経験してみたら)きっと、あまりにも疲れすぎてセックスのことなど考える余裕はないだろうよ」(監督ニヤっと笑う)。



さて、いま東京ではお台場の船の科学館と、有楽町の日劇1で、M&Cの撮影に使われた衣装を見ることができますが、日本に来ているのは水兵服が2着と、プリングス副長とハワード海兵隊長の航海用軍服です。
映画をご覧になった方はおわかりと思いますが、軍服には航海用(通常)の他に、金モールの派手な礼装用というのがありまして、映画の中では水葬、懲罰など式を執り行う際に、また艦長室や士官集会室での正式晩餐時などに着用されています。ジャックは最後の戦闘の時にも礼装ですが、いいのかなぁ?一張羅に返り血なんかつけちゃって、あとでキリックに怒られても知らないよ。
ま、それはともかく、この礼装軍服は何故か日本には来てません。ではどこにあるのかと思ったら、ロサンゼルスだったんですね。このサイトで見ることができます。

アカデミー賞衣装賞ノミネート作品の衣装

リンクはM&Cに張ってありますが、先送りしていくと、「真珠の耳飾りの少女」(画家フェルメールを描いた佳作)の衣装なども見ることができるようです。



最後に、米国版DVD情報ですが、下記のページでコレクターズ・エディションの詳細を見ることができます。

DVD Empire

特典映像についても詳しく紹介されています。ざっと見たところ、先日ご紹介した英国版と変わらないように見えます。が、英国版の紹介記事がここまで詳しいものではなかったので、断言はできません。

さすがに、アカデミー撮影賞、音響効果賞をとった作品のDVD化だけに、映像および音響の再現は素晴らしいものがあるようです。上記原文記事の「Video Presentation」「Audio Presentation」という章に映像・音響に関するデータが出ていますので、詳細をお望みの方は原文をご覧ください。

米国版特典映像の詳細は以下の通り。

◇The Hundred Days(メイキング・ドキュメンタリー:70分)
 ピーター・ウィアー監督自身が案内役をつとめる映画製作ドキュメンタリー。
 原作ファンには泣けるタイトル。「The Hundred Days」とは原作最終巻(20巻)の原書タイトルなのです。
 おそらく、この映画の撮影に100日かかったことにひっかけているのだと思いますが。
 内容的充実度は「ロード・オブ・ザ・リング」SEE版、「ブラック・ホーク・ダウン」3枚組版のメイキングに匹敵するとの評あり。

◇In the Wake of O'Brian(歴史ドキュメンタリー:20分)
 映画の歴史的背景を、ピーター・ウィアー監督自身が解説。また原作者オブライアンについての紹介。

◇Under Cinematic Phasmids(撮影に関するドキュメンタリー:30分)
 特殊効果撮影の裏側を紹介。

◇Soud Design Featurette(音響効果ドキュメンタリー:20分)
 音響効果の本物感にこだわったM&C、本物の音響効果がどのように録画されたかを紹介。
 とくに、当時の実際の大砲を発射して録音した砲撃音録画シーンは秀逸…とのこと。
 どうやらこのレビューを書いていらっしゃる方は、かなりの海洋小説マニアの方のようで。

◇Still Galleries(美術デザイン画集)
 このレビューを書かれたマニアな著者が泣いて喜んだもう一つのお宝。
 映画の舞台装置、すなわちサプライズ号の設計図や、当時の海上生活を再現したスケッチの数々。

◇Deleted Scenes(未公開カット集)
 編集時に本編からカットされた未公開シーン6種類。
 タイトルのみわかっています。「出航(Weighing Anchor)」「船上生活(Shipboard Life)」「迷信(Superstition)」
 「歯科医術(Dentistry)」うわ〜。これあったんですねぇ。原作ファン泣いて喜ぶカット・シーン。
 「戦時条例(Articles of War)」「ガラパゴス(Galapagos)」
 …やっぱり、「Sloth」っていうのは無いんですね。しくしく。ラッセル・クロウで見たかったのに。

◇Multi Angle Studies & Split-Screen Vignette
 戦闘シーンを異なる角度から撮影したもの。視聴者がアングルを選ぶこともできる。

またこのDVDをAmazon.comから予約すると、上記未公開シーンの一部をオーダー時に見ることができるそうです。

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6日深夜(7日0:00〜)、NHKBSでデビット・リーン監督の「インドへの道」の放映があります。以前にちらっと書きましたけど、M&Cの抑えた人間関係描写(行間から読み取っていくような)は、この映画を思い出させるものがあるのですね。ウィアー監督BAFTAの監督賞受賞の由縁だと思います。
実はその前の時間(6日10:30〜)のBS思い出館は、歴史ドラマ「ポーツマスの旗」です。このポーツマスは英国の軍港ではなく、アメリカのポーツマス、日露戦争終結のポーツマス条約の締結秘話。むかむかしNHKが丹念に手をかけて製作した歴史ドラマです。主人公は石坂浩二演じる外務大臣小村寿太郎。歴史ドラマ好きの方にはおすすめ。


2004年03月05日(金)