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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
「M&C」は男性向け?女性向け?

この記事はどちらかというと男性向けなのでしょうか? アメリカではそのようなことはないのでしょうか?

Gun experts get a bang out of working on film
米ケンタッキー州在住のフランク・ハウスと、スティーブン・オーヴェンシャインは、映画「マスター・アンド・コマンダー」の武器係スタッフとして、200挺に及ぶフリントロック式ライフル銃やピストルの装填や整備を担当しただけではなく、ラッセル・クロウを始めとする出演者全員にフリントロック式火器の取り扱いを教える役目も果たした。
戦闘シーンの撮影時には、サプライズ号の檣頭に一日中待機し、海兵隊用のマスケット銃を装填する。撮影が始まるとカメラを避けて帆布の下に隠れるが、「カット」の声がかかると這い出して、ただちに全ての銃を再装填する…という作業を繰り返した。
フランク・ハウスは、開拓時代の銃の複製で有名な鉄砲職人である。彼が映画の仕事をするのはこれが初めてではない。2000年に公開されたメル・ギブスン主演の「パトリオット」(アメリカ独立戦争を舞台にした映画)でも撮影用の複製銃の製作を担当した。彼の技に感心したメル・ギブスンは、撮影後ハウスに、ケンタッキー・ロング・ライフルを注文している。
「M&C」の撮影スタッフに「パトリオット」の関係者がいたことから、ハウスに仕事の依頼が来た。ハウスは同郷の、やはり18世紀の火器の専門家であるオーヴェンシャインに声をかけた。オーヴェンシャインの本業はケンタッキー州警察の騎馬警官である。
映画撮影用には、模型ではなく本物のフリントロック銃が使用された。これらの銃に弾丸は装填されていないものの、取り扱いを誤れば火傷など事故の原因となる。また接近戦での発砲には危険が伴った。ハウスとオーヴェンシャインは事故のないように、火薬の量などに工夫をこらした。
撮影終了後、ラッセル・クロウは、ハウスの製作した銃(.66-caliber pistols)を手元に置きたいと希望した。「だから今は、私の作った銃がラッセル・クロウ、メル・ギブスン二人の元にあることになるんだ」とフランク・ハウスは語る。「それは素敵なことじゃないか」

A Salute to peers of old -- Sailors say Crowe masters commander's role
現役の軍人たちは、現在話題の映画をどう見るのか? ロサンゼルス・タイムス紙では、サンディエゴ在住の海軍と海兵隊の関係者を招き、それぞれ「マスター・アンド・コマンダー」、「ラスト・サムライ」を見た感想を尋ねた。
ここでは、「マスター・アンド・コマンダー」の部分のみを紹介します。

サンディエゴを基地とするミサイル駆逐艦、フリゲート艦の現役艦長たちは、「マスター・アンド・コマンダー」を見て、鞭打ち刑が姿を消して久しいが、リーダーシップの原則は、現代でもオーブリー艦長の時代と何ら変わることはない、と口々に語った。
艦長と乗組員との間に必ずしも友情は必要ないが、互いの尊重は艦の運営上不可欠である。「ジャック・オーブリーは部下を導く方法を心得ている。くまなく艦内をまわって状況を把握する。艦長室に座ったまま報告を待っているようなことはしない」と指摘するのは、ミサイル駆逐艦の艦長である中佐。
「真のリーダーシップは、よく目を開き耳を傾けることから始まる」と、インタビューを受けた海軍中将は語る。「オーブリーは経験豊かな船乗り(例えば年配の航海長)の意見に耳を傾け、ないがしろにすることはない。助言は受け入れるが、しかし、最終的に決断を下すのは艦長だ。オーブリーはそれをよく承知している」
オーブリーはまた、地位に能力の伴わない部下の問題にも直面する。これは艦長にとって最も困難な問題の一つだが、オーブリーはこれにもよく対処している。「部下を訓練すると同時に、指導者として導くこともしなければならない。それによって能力を発揮するようになる者もあるが、出来ない者もいる。
映画の中でオーブリーはネルソン卿との思い出を語るが、インタビューを受けた艦長全員が、彼らのリーダーシップや船乗りとしての資質形成にあたって、深い影響を受けた上官の名を上げることが出来ると答えた。
「M&C」の時代にもこんにちにも変わらないものはある。
艦は艦長の人となり、強さ弱さをそのまま体現するものであるということ。
そして、この映画は艦長として海に出ることの、二つの側面を見事に描き出している。生死の決断を下さなければならない重責と、そして、大海原で軍艦を自在に指揮することの喜びである。


この記事、日本語で訳してしまうと気付かないのですが、実はこの記事に登場する海軍士官たちのうち二人は女性です。一人は海軍中将、一人はミサイル駆逐艦の艦長(中佐)。
「マスター・アンド・コマンダー」の公開前に、果たしてこの映画を女性が見に来るのか?という心配がなされていたという記事は以前にご紹介しました。蓋を開けてみると、心配されていたようなことはなく、観客は男女半々のようです。
「女性はこの映画を見ないだろう」と断言したある評論家のホームページには、女性たちからの批判が殺到していまして、そりゃあ男女平等の唄われるアメリカで、評論家もそこまで断言しちゃったら血まつりでしょう…と思いましたが、実際に女性の艦長が存在するとは、びっくりでした。

日本でこの映画がどのように見られるかわかりません。が、個人的には…私は女性ですが組織の一員として宮仕えしている身ですので、海洋小説に描かれる人間関係の中には共感できるものがあることも確かです。私は管理職ではないので艦長の気持ちはわかりかねますが、下位レベルの士官、准士官クラスのトラブルの中には、平和な日本の会社組織でも他人事とは思えないものがありますので。
まぁもちろん、艦長がかっこいいとか、候補生がかわいくて健気だ…とかも魅力なのですけれどもね。(実は航海長が渋くて素敵…と思うのだけれども、これはちょっと爺さま趣味かしら?)


2003年12月19日(金)