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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ゴールデン・グローブ賞ノミネート

アカデミー賞前哨戦の山場の一つ、ゴールデン・グローブ賞のノミネートが出ました。
渡辺謙が助演男優賞にノミネートされたことは日本の新聞にも報道されていますが、「マスター・アンド・コマンダー」も作品賞(ドラマ部門)、監督賞、主演男優賞にノミネートされています。
各賞の発表は来年1月25日となります。

作品賞(ドラマ部門)ノミネート
コールド・マウンテン
ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還
マスター・アンド・コマンダー
ミスティック・リバー
シービスケット

主演男優賞
ラッセル・クロウ(マスター・アンド・コマンダー)
トム・クルーズ(ラスト・サムライ)
ベン・キングズレー(House of Sand and Fog)
ジュード・ロウ(コールド・マウンテン)
ショーン・ペン(ミスティック・リバー)

監督賞
ソフィア・コッポラ(Lost in Translation)
クリント・イーストウッド(ミスティック・リバー)
ピーター・ジャクソン(ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還)
アンソニー・ミンゲラ(コールド・マウンテン)
ピーター・ウィアー(マスター・アンド・コマンダー)


ところで、話題の「ラスト・サムライ」を見に行ってきました。
こちらはハリウッドらしい時代モノに仕上がっています。馬がだーっと走って、派手な爆発が上がって劇的なオーケストラ音楽がジャンジャンジャーンと感動を盛り上げる。
「マスター・アンド・コマンダー」とは対照的です。
個人的にはですから、作品と監督は「マスター・アンド・コマンダー」、主演と助演は「ラスト・サムライ」というこのノミネートの意図はわかるような気がするのです。
ラッセルとポールの演技はきめ細やかなんですが、トムと渡辺謙は迫力で大熱演…という感じで、一般的にはトムの方がうけるだろうなぁと思われるのですが。

渡辺謙の演じる勝元は、海外の評価が高いのもうなづけます。トム演じるオールグレンを惚れ込ませるだけの、将としての器とオーラがある。といってとりたてて特別な演技をしているわけではなく、最明寺入道時頼さま(大河ドラマ「北条時宗」の父役)がそのまんま勝元をやっている印象。日本の演技はそのままハリウッドでも通じるのだなぁと思いました。
ただストーリーそのものとしては、うーーーーーん。

私は大学時代の専攻が日本史だったこともあって、ちょっと見る目が厳しいかもしれないんですが、
「この映画のテーマは根本的に間違っていないか?」…と。
これを明治の近代化だと外国人に信じ込まれると、ちょっと、いや大幅に困るなぁ。
武士道って士族反乱の鎮圧とともに消えたものではないと思うのですよ。
実際は形を変えて、「ラストサムライ」では近代装備で武士道を鎮圧したことになっている帝国陸軍などの中に、1945年まで生き続けていたわけで、それを完全に消し去ったのはGHQ…というか、アメリカではないのかしら? それを今になって、どうしてアメリカ人が、こんな映画を作って敢えて武士道をこんな形で肯定評価するのか。
というか、たぶんその原因は、ズウィック監督の考える武士道と、当時の日本人(江戸初期ではなく明治の)の実際の武士観念との差にあるんじゃないかと。
アメリカ人が憧れる武士道のイメージは、かなり観念的哲学的なもので、実際に日本人の武士階級あるいは明治以後の士族階級の生活律の中に生きていた武士の身の処し方とは異なるものなんじゃないかと。
それが、いちばんのこの映画の問題じゃないかと思うのですが。

まぁでもアメリカ人の視点やハリウッドの時代劇が新鮮だったことは確かです。
トムと真田広之の立ち会いは大迫力。数台のカメラで様々な角度から撮った映像を短いカットで組み合わせてあるのですが、動きがとても綺麗に見えるんです。日本の時代劇って視点(たぶんカメラ)が固定しているのではと推察しますが、スピード感のある殺陣にはこちらの方が合うと思います。

「ラスト・サムライ」に行くと「M&C」の予告が見られるというので楽しみにしていたのですが、松竹(ピカデリー)系ではダメでしたわ。「ハリポタ3」の予告は見てしまったけれども。


2003年12月20日(土)