Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
撮影・照明とキャスティング(スタッフ・インタビュー)
英米の映画雑誌から特集記事のご案内です。
American Cinematographer 11月号 これは映画専門誌…というより映画撮影技術専門誌。撮影監督のRussel Boydへのインタビューを掲載しています。Boyd氏は「ピクニイク・アット・ハンギング・ロック」「ガリポリ」「危険な年」などのピーター・ウィアー監督作品で撮影を担当したベテラン。 この記事では撮影を行った機材のテクニカル・スペックがかなり詳しく紹介されていて、同業の方には大変面白い内容だと思いますが、ASA96-160のコダック社の200T5293というフィルムにどういう意味があるのか全くわからない素人が読んでも猫に小判ではあります。 ただし照明に関する部分は面白く読みました。「本物に近く・現実に近く」を第一とするウィアー監督の希望をかなえるべく、撮影にあたっては「現実にあった光」にこだわったとのこと。例えば砲列甲板には、砲門と一部天井の格子からしか光は入らない。ドクターの仕事場である下層甲板は喫水線下になるので、太陽や月などの自然光は全く入らない。あるのはカンテラの光のみ。このため照明にあたってはカンテラの光のゆらぎが出るように工夫したり、必要以外の光がありえないところからさしこまないように注意を払った、とのことです。 この記事、写真はいろいろ新しいものも含めて出ていますので楽しめます。
Empire 12月号 Empireは英国やオーストラリアなど英連邦諸国の映画専門誌ですが、この号が英国版かオーストラリア版かは不明。 以下の要約はこの雑誌を読んだファンの方の 投稿から起こしています。ソースは投稿文なので不確実である可能性があります。またこのURLはリンク切れになるかもしれません。 これによると、Empire12月号は表紙がジャックで中には8ページの特集が組まれている。内容は主にピーターウィアー監督のインタビュー。クロウとベタニーの言葉も紹介されているが、これは「プロダクション・ノート」からとったもので、新規インタビューではないとのこと。 この要約からさらに、ウィアー監督の語るキャスティング事情を。 ジャックにラッセルを選んだのは、ラッセルのもつ天性のエネルギッシュな部分、リーダーシップと人の上に立つものの風格が理由だ。もちろん、原作至上主義のオブライアン・ファンからの批判(ジャックは最もやせていた時でも14ストーン(98kg)の巨漢であり、スティーブンはスズメのような小男である筈なのに、俳優2人の外見はあまりにもかけはなれている)については、監督も承知しているが、それではもし本当に原作通りの体格の俳優をキャスティングしたらどうなるのか? 出来上がる映像はどたばた喜劇のような画面になる可能性がある。 ラッセル・クロウ自身はスティーブンにポール・ベタニーがキャスティングされたことをありがたく思っている。「ポールと僕は、『ビューティフル・マインド』の共演で、役作りに関してはツーカーの関係を作りあげていた。それがジャックとスティーブンの間の役作りにも、二人の関係にも活かされていると思う。ピーターがポールをキャスティングしてくれたことには感謝している。もし別の俳優だったら、シーンの分析と解説から始めなければならないが、ポールとなら十分の一の時間で、互いに深部の要点を掴むことができる。他の俳優だったら辿り着けないような点にも」 「どたばた喜劇」の部分は「漫才」と意訳しようかどうしようか迷ったのですが、原文(slapstick)通りとしました。でもこの英語読んだ時に一瞬私の頭に浮かんだのは、「オール阪神巨人」だったことを白状いたします。
あちこちでマスコミ向け試写会が開催されているので、ギョーカイのオブライアン・ファンの中にも試写会で映画を見た人が出始め、アメリカの「パトリック・オブライアン・フォーラム」にも投稿がのりはじめたようですが、これを含むいわゆる「映画評」については、扱いをどうしようかと今なやんでいます。 記述がかなり具体的なので、ねたバレになるという問題もありますが、それ以前に、日本公開前にあまりいろいろな先入観が入ってしまうのも問題では?と。 とりあえずこちらに1本だけフォーラムへの投稿をリンクしておきますが、要約はいたしません。お読みになるかどうかは各自のご判断でお願いいたします。これを読むとかなり先入観が入ると思います。
その他URLのご紹介 「Master and Commander」ボードゲームのご紹介 映画化に際し、ボードゲームが発売されるようです。フリゲート艦艦長の立場で決断をくだすゲームとか。 Daily Mail 2003年10月30日号 ラッセル・クロウ インタビュー。映画内容よりクロウ個人へのインタビュー中心。 このサイトは作品主体ですので、ご紹介のみ。ラッセル・クロウ個人へのインタビューは、映画作品に関わる部分はご紹介しますが、それ以外についてはラッセルのファンサイトさんに譲りたいと思います。
あ、でもこれだけは一つ。 明日の日曜洋画劇場(地上波・朝日系)はラッセル・クロウがアカデミー賞を受賞した「グラディエーター」です。これは一見の価値ありだと思います。
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以下は全く「マスター&コマンダー」とは関係ない話で恐縮なのですが、今日(もまた)駆け込みで「インファナル・アフェア」という香港映画に行って来ました(来週末7日で上映終了)。 この映画は香港警察と黒社会(マフィア)の潜入スパイたちの話なのですが、昔の刑事ドラマ(太陽にほえろ、とかGメン75、西部警察など…あぁトシがばれる)で育った方にはおすすめします。きっと感動なさると思います。 何に感動したか書いてしまうとねたバレしてしまうので、言えませんが。これ、良く出来た映画です…しみじみ。
しかし、香港警察ってもはや女王陛下のロイヤル・ポリスではないのに、2002年になってもまだこんなにも英国が残ってるのねぇ…と本筋とは別のところで妙なことに感心しました。 警察で部下が上司に報告する時に、「○×△(広東語)○×、サー」というセリフがよく出てくるんですが、どうもこの「サー」は、「Sir」のようなんです。中国語って敬語はどうなっているんでしょうか? よくわからないのですが、この広東語の後につく謎の「サー」のタイミングは、ほとんど英語と同じ。「サー」以外は全部広東語なんですけど。これってやっぱり、この部分だけロイヤルポリス時代の名残で英語を取り入れているんでしょうか? 最終シーンは、もちろん映画を最後まで見た結果でも感動しますが、英国モノをよくご存じの方は別の意味でも感動されると思います。
実はこの映画、ハリウッドがリメイク権を買っていて、ブラッド・ピットでリメイクが決まっているとか。でも潜入捜査官の押さえに押さえた感情の起伏…とか上司との関係とかは、ハリウッド映画になったら全く変わってしまうんだろうなぁと思います。これをもし本当に再現するなら白黒のはっきりしたアメリカ人の脚本・監督ではなく、価値観の複雑なヨーロッパ人の監督にやってもらいたいなぁ…と考えているうちにふと気付きました。 この映画、なんだかここ10年の英国のスパイ小説にトーンが似ているんです。不思議だわ、そんなことありえない筈なのに。何故ってこれはかなり儒教的・仏教的な価値観の感じられる映画だから。 断じてこの映画の主人公たちが「○×、サー」って言ってるからそう思うのではないんです。でもその共通点が何なのか、うまく説明することは出来ないんですけれど…。
2003年11月01日(土)
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