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2001年12月22日(土)<<<冬

私は冬に弱い。

肉体的に弱いのは、夏の方だが
夏は
まだ、気持ち的に笑っていられる。


冬はじょーだんじゃなく
笑ってらんないよ。



寒いと心にまで雪が降るような
そんな気がする。
まだ
白い雪で敷き詰められ
満たされてしまえば、心は楽なのに
雪が降ることすらなく
からっからに渇いた心は
お酒と睡眠だけを求めて
冷たい風を
その赤に通わせてる。

そんな感じ。

でも、
現実はそんな詩的なかっこいいことはなく。

端から見れば、
学校にも行かず、
堕落して
未成年でありながら酒を飲む
最悪の娘
ッテ感じ。



冬が悪いんだ。





冬は嫌い。



 冬。
 一人の少女が急ぎ足で、人通りの多い歩道を歩いていく。
 視線はきつく先だけを見ている。
 回りを見たら最後、この人込みの中で底知れぬ孤独を知ってしまいそうだから、恐かった。
 すれ違ったり追い越したりする人の顔は、少女の瞳を通すと全て楽しそうだから…。
 ホントは、不幸も幸福もそう感じる人の感性の問題で誰かだけが、なんて事はないのだけれど。
 まだ、そう思えるほど、大人ではなかった。
 幸せが来ると信じていられる子供だった。
 少女の肩に食い込む、ショルダーバックは酷く重かった。
 なんせ、ハードカバーの本が7冊ほど入っている。最高に重くて、早歩きで歩かないと、へこたれてしまう。
 向かう先は、大きな市立図書館。
 あそびたい盛りだろう中学生の少女が、クリスマス直前の休日、一人で出かける先が図書館だなんて…。
 悲しいというか、哀れというか……言い様の無いものがあるが…。
 少女にしてみれば、腹の中で何を考えてるか信用できない人間という存在と、愛想笑い交わして騒ぐより……、一時でも別世界を見せてくれる本の方が、よっぽど信用できたし、相手をしていて楽しかった。
 ……心も独りになろうとしてたかも知れない。
 親も友だちも、他人としか見れなかった。私じゃない誰か…恐い存在。
 きっと、仲良く慣れれば楽しいだろう。でも、一緒にいれば傷つくし、傷つけてしまう。そんな痛いのは………もうこりごりだった。もう、良いよ、要らないよ。
 もうすぐ図書館。大きく高いビルが、見えてきた。
 少女の歩調はより早まる。重くて限界だった。
「………ゃん」
 何か聞こえたような気がして、少女は足を止めた。
「お嬢ちゃん」
 今度はハッキリ聞こえた。
 振り向いた少女の目には、人の良さそうなスーツ姿の男性が見えた。
 ふと、少女は学校の体育教師と自分の父親を思い出した。足して2で割ったら、この男の人みたいだな、と思ったりした。
「……私ですか?」
 少女は重たい荷物をかかえなおして、その男に話しかけた。
 少女にとって、見知らぬ人から話しかけられることは多かった。よっぽど自分が人の良いオーラを発しているのだろうかと思うほど、困った人に話しかけられるのだ。道を聞かれたり、シャッターを押してくれと頼まれたり…。
 だからまた、少女はこの男もそうゆうひとの一人だと思った。道がわからないとか、そんな事だろうと…。
「………かい?」
「…ぇ?」
 男は言ったが、上手く聞き取れなかった。
 もしくは、想像の範疇を越えていて、脳が理解できなかったか…。
「おじさんとあそばないかい?」
 男はもう一度、今度はキッパリと、そう言った。


 人生なんてホントに、一瞬の魔が差す瞬間で大きく変わるもの。
 その変わる方向が、良いか悪いかは人次第、行い次第。
 ただ、最近の傾向だと、どうも一瞬で悪い方へと転がりだす者が多い。
 それが時代か…?
 そして、あっと言う間に転がって止まらなくなるのは、大人だけじゃない。
 子供も、然り。
 いやいや、善悪の判断が曖昧で、自我が未発達だから…。
 案外、子供の方が転がっていく速さも、距離も、大人以上かも知れない。
 まぁ、そんなことはどうでも良いが。
 問題は、その後だ。
 魔が差して、一時で済むなら、それは仕方ないかも知れない。
 イエス様は、どんな者も愛してくれる。
 ただ、他の者にも愛されたいなら…。
 恋人に友人、両親に兄妹…多くの人に愛されたいなら。
 魔が差した、じゃ済まないだろう。


「………」
 少女はハッとして口をつぐんだ。
 今度は理解できた。
 そして回りを振り見た。
 今の一言を、私以外にも聞いた人が居ないか…と。
 そんな心配は無用だったようで、人は皆、忙しそうにサクサク歩いていく。
 そして、一瞬だけ少女考えた。一瞬で善意は悪意に殺された。
「いいよ」
 少女は言った。
 図書館に背を向けた。


 魔が差したんだ。
 魔が差して、
 私はそのまま魔を受け入れて、ワルイコになったんだ。




 それでも愛して欲しかった。
 私の横を通り過ぎてく幸せそうなカップルのように。
 似非物でも良いから
 誰かの腕が欲しかった…。
 好きだよって、ココに存在していいよって、認めて欲しかったんだ。



 独りぼっちは嫌だった。

 だから冬は嫌いです。
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