下からじっくりと観察をする。
全精力を傾けて、 まるで獲物を狩るかの様に。
揺れる動きを捉えて、 放たれる音を逃さず、 一つ残らず脳裏に叩き込む為に。
其の作業を、 着々と続けて来たからこそ。
其の作業を、 黙々とこなして来たからこそ。
例え受話器越しであっても、 俺は貴女を、 目の前に浮かび上がらせて抱けるんだ。
貴女は夢で、 俺の姿を追えるから。
想いを形にして、 俺の姿を感じられるから。
「私、小坊主に乗ってる夢見ちゃった。」 「小坊主が言ってたでしょう。」
けれども俺には、 その能力が備わっていないから。
だから目の前に貴女が居る時に、 手で触れて、 足で触れて、 目で触れて、 身体で触れて、 一挙手一投足を身体に覚え込ませておく。
「貴女が俺の上で動いてるよ。」 「名前の最初と真ん中にアクセントが来るんだよね。」
貴女が夢中になっている間でも、 俺が恍惚に埋もれる前に、 終わらせて仕舞わなければならない。
波長を合わせ、 色彩を合わせ、 形を合わせ、 貴女を残らず脳裏に設置するのだ。
意外と必死に。 |