雲間の朝日に想うこと


< 黙っておくべきでしたか >


相談に乗った御礼にと、
折角彼女の方から誘ってくれたデートなのに、
さっきからこの子は、
何をしていても半分上の空。

親友の彼女であって、
この子に恋愛感情は全くない。

けれども弱っている知り合いを目の前にして、
放っておけるわけはない。



悲しくて・・・
そして失礼なことだけれど・・・

俺も親父が死んだとき、
全然実感が湧いて来なかった。
泣く事も出来ず、
身動き取れずに何もできなくなった。

だから彼女が、
世話になった先生の自殺を受け止めきれずに、

「あんまり実感がないんです・・・」

そう言った時の気持ちが、
痛いほどわかる。

 目一杯楽しませてやろう・・・
 後で目一杯悲しむことができるように・・・

この子には気持ちのメリハリが必要だと思ったんだよ。



この子にとって「温泉」は、
何年か前にみんなで過ごした楽しい思い出。


だから「次は温泉でも行こうか?」と、
俺はこの子を誘ったんだ。


 貴女と行きたい温泉とは全然違う温泉。
 この子と二人で行く必要は全くない温泉。


けれど温泉には違いないから・・・
貴女が嫌がるなら本当にやめても良い。

この子に楽しさを与える手段は、
他にもあるんだから。


2001年11月10日(土)


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