「醉ひざめの月のさやけさよ 」

今まではそれを訊かれる度に鬱陶しく思いながら、男女の友情は成立しない方に頷いていた。そんなものは全て鈍い奇麗事だと。でも現在なら可能だと答える。成立するかどうかは分からないが、それは間違い無く可能であると頷き直す。

様々な瞬間の積み累なり。友達で居るというあいだ、少しずつ削られてゆく意識片。奪おうとする意識は薄れ、執着や独占したいという欲が程好く無くなる。タイミングも運命の輪の内側。

でもよく知っている。どんな人間か。そいつがどんなに素敵にわらうのか。だから時々辻褄の合わない嫉妬をする。逃したタイミングを別々の時間に別々の場面で悔やんだりもする。もう交わらない代わり、こいびと、とは異なる視点から見つめられる理解者となる。男女の友情の成立は、殆ど知らない初めとあらゆるものを通り過ぎた終りにあるような気がする。




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