「懐夢」
漸く塞いでいた自らの掌をそっと下ろし、ただ眩しい現在に居て、毅然と未来を見渡している。それなのに何故こんなにも鮮やかに過去が旋る?幾枚もの記憶の断片がくるくると舞い落ちる。途切れた物語は今、に何を問い求めるのか。 時間は多くのものを変えてしまっているよね。わたしと君達の両方を。それなのに記憶はそのまま時を止めたままで、壊れた映写機のように同じ場面を繰り返し見せる。虚像のような夢幻のような、身勝手に美化された想い出達。 それでもどんな想い出も想い出と呼ばれるからには正に終焉ったものであり、続いてきたもの続いてゆくものと比べるまでもなく、わたしを長く引き止める事も泣かせる事も笑わせる事も怒らせる事も出来るはずもない。 |