憂色透明
憂々とし 夢現 筒抜で ウェア アム アイ 強引

2003年09月26日(金) 枕枕枕

じゃかじゃかじゃか。

静寂の夜

走っても走っても、道が無い。
あるのは自分の背丈より高い、緑色の雑草ら。
もりもりもり。
それが腕や足を引っ掻いて、無数の傷をつくるもんだから、痛いったらありゃしない。
それでも走り続けなければいけない。
じゃかじゃかじゃか

野犬が追ってくる。
そうぞうの中では、黒のドーベルマンだこれは。
さっきまで一緒だった級友は、もう先にいってしまった。
つまり独りだ。



(怖ぇえ。)



背後にせまる野犬の遠吠え:うぉぉぉ〜〜ん うぉぉぉ〜ん

(あわわわわわわわ…)

一心不乱で、雑草を掻き分け、走る。
跣の足は、ドロだらけだ。
ぐちゃぐちゃぐちゃ。
緑色の雑草のせいで、視界がない。
四方八方ぜんぶ、縦方向に線が延びている。
ぐぅーんぐぅーん。



はぁはぁ。おえっ。
うぉぉぉ〜ん。
じゃかじゃかじゃか。
おえっ


あぁ。ちびりそう。


ふと右足が、30度に傾いたと思うと、小高い丘に駆け上った。



(出口だ、出口だ、森を抜けるに違いない)




つんのめりながら、ばさと両手で雑草を掻き分けた。

月だ!

巨大な月だ。
巨大な月は、見た事ないくらい飾り立ててぼうっと光る。



出口じゃないですねこれは。
そう感じ、走る気もうせた。


恐ろしく虚栄的な月のなかに、野犬の影が蠢き、どうやら遠吠えはそこからやってくる。
やってくる。
かぐや姫でもなく、野犬が一匹、巨大な月を占領している。
遠吠えは背後からだと錯覚していたものが、なんと頭上から、地上のもの総てを包括するように聞こえてくる。

非常識的にでかすぎる、あの黄色い月が今でも忘れられない。


























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そういえば、友人がシンガポールで月を見たらしい。
赤道に近いシンガポールの三日月は、上半分と下半分なんだって。
彼女はそれに感動した。
見てみたいなぁと思った。

さて、わが『野犬の月』はもう二度とみてない。
人生ではじめて見た夢以来。









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