セクサロイドは眠らない

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2001年11月06日(火) 目的の場所を探り当てると、彼女の舌が僕を包み込んで、ゆっくりと規則正しく僕の弱点を刺激する。

深夜、僕達は人気のない夜道を、車を走らせる。既婚者同士の束の間のドライブ。もうしゃべり疲れて、無言でいるのも気持ちいい。なんで彼女とだったら、いくらでもおしゃべりできるんだろう。

それでも、ちょっと悲しい気分になって、彼女に話しかけてみる。

「僕達ってさあ。カタツムリみたいだと思わない?」
「なんでー?」
「お互いの家しょってて、だからそのせいで、ずっと一緒に眠ることはできないんだ。」
「ばっかみたい。だったら、家なんか捨ててナメクジになればいいんだわ。」

彼女は、いつも僕のことを「ばっかみたい」と笑い飛ばす。なんだか自分がとんでもなくマヌケな人間に思えてしまうのだけれど、彼女にそうやって笑い飛ばしてもうらと気持ちいい。

「あなたってどうしようもないわね。あたし達のこと、家庭のせいにしないで。」
「ん。ごめん。」
「ねえ。」
「ん?」
「車停めて。」
「ここに?」
「うん。ここでしよう。」
「ここで?」
「うん。今、したい。」

僕は車を停める。

車を出ると、空気がヒヤリと冷たい。

「寒いね。」
「あたし達の熱いハートには、心地いいわね。」
「熱いハート?」
「冗談よ。」

僕は、車のドアに彼女を押し付けて口づける。彼女が僕の首に手を回す。彼女が下半身を僕に押し付けてくるので、僕は体全体が熱くなる。

「ちょっと待って。シワになるから脱ぐわ。」
彼女がスカートを脱いでかかるので、
「寒いよ。」
と、僕。
「いいのよ。」
「誰か見るよ。」
「いいのよ。」

彼女の下着の中は、もう、濡れて僕の指を待ち構えている。

長い時間。熱い息遣い。僕は、彼女の胸元に唇を這わせる。彼女は、僕の前にしゃがんで、僕のズボンのジッパーを下ろす。細い指が、闇の中で妙に白い。目的の場所を探り当てると、彼女の舌が僕を包み込んで、ゆっくりと規則正しく僕の弱点を刺激する。長い長い時間。僕は、彼女の髪を指で梳く。耳たぶが寒さで冷たくなっている。そんなことを考えながら、僕は静かに集中する。意識をそらそうとするのだけれど。もうすぐ行きつく場所は分かっているから。

たまりかねて僕が彼女の中に入ろうとすると。

はい。

ピーッ。

ここで終了。

ほっと溜め息をついて、彼女は僕から体を離す。

「遅くなっちゃったね。帰ろうよ。」
「ああ。」

彼女は、スカートを履き直すと、車の助手席に乗り込む。

繰り返される僕達のゲーム。彼女は、僕が膝に這わせる手を払いのけて窓の外を見る。

彼女とは、いつもここまで。

「全部終わっちゃったら、別のこと考え始めるようになるでしょう?それが嫌なの。ちゃんとイッたかとか、ホテル代はどっちが払うんだとか、これ奥さんが用意した下着なのかしらとか、次に会ったらどのタイミングで抱き合うんだとか。」
初めて、こんな風に抱き合った時、中途半端に放り出されて不満だった僕に、彼女は言った。

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もうそろそろ、人通りの多い道に出る。彼女は、手櫛で髪を整えている。

「こんな風にいつも放り出されたら、僕だってそのうち我慢できなくて無理矢理しちゃうかもしれないよ。」
と言ってみるが、彼女は相手にしない。

「だって、それであたし達の関係が失うもののほうが、得るものよりずーっと大きいと思わない?」

彼女はきっぱりと言うので、僕はそれっきり何も言えない。

自信満々の彼女に寄っかかって、もうちょっと、このゲームを楽しもうかと思うのだった。


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