セクサロイドは眠らない

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2001年09月10日(月) 美しい肢体が絡み合う。口づける。二人の華奢な指が、お互いの体をまさぐる。愛撫する。交わる。

雨上がりの道。ざっと通った雨のせいで、空の向こうに虹が見える。虹のふもとを掘ると宝物が出てくるって言うよな。僕はそんなことを考えながら、虹の出ている方角にあてもなく車を走らせる。

迷い込んだのは、小さな街。観光地として新しく作られた街だろうか。レンガの歩道、きれいに壁が塗られた家々。車を停めて、街を散策する。

ふと、足を止めた、ある店。

「いらっしゃい。」
美しい女主人が、微笑んで出迎える。店の中は、暖かく、光に包まれている。ぼぅっと暖かく光る物が入った小ビンが棚にたくさん並んでいる。

「ここは、何の店?」
「虹を売ってるんですよ。虹のかけらを。」
「虹のかけら?」
「ええ。あなたも、虹を探して、この街に来られたのでしょう?」

よく見ると、カウンターの奥に、少年。女主人に似て、美しく、黒いウェイブのある髪の毛。角度によって虹のように色を変える瞳。

「ご挨拶なさい。」
女主人は少年に言う。少年は、黙って僕に頭を下げる。

「虹のかけらって、どうやって使うもの?」
「恋人の贈り物。生まれてきた娘への贈り物。幸せを運んでくるお守り。」

虹のかけらの揺れる光が店の中で踊り、僕は催眠術をかけられたようにそこから動けなくなる。

「もう、外は暗くなりましたけれど、お泊りの所はお決まりですか?」
女主人の声にはっとして、店の外を見ると真っ暗だ。

「いつの間に?」
「随分と長く、ぼんやりなさってましたわ。」
「もう、帰らなくては。」
「無理ですよ。ここまでの道は暗くて、夜は危険です。よろしければ、お泊りになって行って。」

僕達は、客間の乾いたシーツの上にもつれ込む。女主人の華奢な体は、それでも、燃えるように熱くて、僕は、店に足を踏み入れた時から恋をしていたのだと気付いた。

--

僕は、街の宿に部屋を借りて、昼は、その美しい町並みをスケッチし、夜になると虹の店を訪ねる。

ある夜、いつもより早い時刻に、僕は店を訪ねる。だが、店の入り口には鍵が掛かっていて。

ウィンドウ越しに中を見ると、そこに彼女と、息子。虹の光の中で。二人とも服を着ていない。美しい肢体が絡み合う。口づける。二人の華奢な指が、お互いの体をまさぐる。愛撫する。交わる。少年は、彼女に入って行く。どんどん入って、そうして、彼女の腹部が膨らんで、少年を取り込んでしまう。巨大に膨れ上がった腹を、彼女はいとおしそうに撫でる。それから、彼女の絶叫と共に、少年が彼女の体を割って出てくる。

全ては、揺れる光の幻影かもしれない。

僕は、宿の部屋に戻って吐き続ける。

--

翌朝、彼女は、いつものように輝く瞳で僕を見つめる。

「昨日、いらしてたわね。」
「気付いてたのか。」
「ええ。」
「あれは、一体何だ?」
「見たままの通りよ。」
「なんておぞましい。」
「なぜ?息子は私だし、私は息子よ?親子ってそんなものじゃないかしら?」

僕は、吐き気をこらえて、店を飛び出す。

それでも、彼女に会いたい。彼女と一緒にいたい。彼女だけが欲しい。息子など要らぬ。

--

その夜、遅く、店の鍵を預かっている僕は、息子の部屋に忍んで行く。

ナイフで、少年の体を、何度も何度も刺す。

それから、宿へ逃げ帰る。

僕は狂ってしまった。部屋に転がった虹の小ビンの炎はいまにも消えそうに儚く揺らめく。

--

血のような朝焼けの中、まだ人気のない早朝の街。

僕は、店を訪ねる。

そこは、血の海。女主人は静かに横たわる。

僕は慌てて駆け寄る。

彼女は微笑む。

「言ったじゃない。息子は私だって・・・。」

ビンの中の虹の光は消えていく。彼女は、次第に冷たくなっていく。街そのものが、形を失っていく。

虹のふもとには誰も辿り着けない筈だったのに。

と、僕は、荒地に伏して涙を流す。


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