セクサロイドは眠らない
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2001年08月30日(木) |
もう、その細い腰が、たまりかねて僕の体の上でうごめく |
果てしない饗宴。いつもの乱痴気騒ぎ。彼女が大声で騒ぎ、男達がもてそやす。僕は、その宴が終わりを告げるのを待ちながら、ズキズキするこめかみを押さえる。だんだん、その安っぽいパーティに付き合うのに疲れるようになった。毎回、顔も名前も知らない男女が騒ぐだけの。
彼女の視線を感じる。
僕にしか分からない合図。
ああ。
彼女は、ふと、その会場から姿を消す。誰にも気付かれないように。
僕も、後を追って、姿を消す。
先に会場の外に出た彼女は、男と一緒だ。男は、寄り添って歩きながら、彼女の尻を掴む。下半身を彼女の腰を押し付ける。足をもつれさせながら、そこいらの植えこみに倒れこんだら、もう、男は我慢できずに彼女のドレスの裾を捲り上げて。彼女は、酔ってケラケラ笑いながら、男にされるままになる。男の動きが激しくなる。彼女の声が低く響く。
僕は、彼らに見えない場所で、その声に耳を塞ぎながら、安っぽい欲情が満たされ終えるのを待つ。
次第に声はとぎれ、そして何も聞こえなくなる。
気付けば、背後に彼女の気配。 「行きましょう。」
僕は無言で立ち上がり、欲望の名残が匂い立つ彼女を車で屋敷に送り届ける。
僕は、彼女に魅せられてから、「影」と呼ばれるようになった。彼女にいつも寄り添う。人々はみな、それを知っている。僕をうらやましがるヤツもいるが、僕が彼女にオスとして選ばれてないとあざ笑うヤツもいる。
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ある日の午後、僕は彼女の部屋に呼ばれる。
「あの男、いたでしょう?この前のパーティの。」 「ええ。」 「あの人をお願いしたいの。そろそろうるさいから。」 「分かりました。」
いつもの彼女の依頼。
心が翳り、うんざりだ、と思いながらも、僕は決して断れない。もう、何度目だろうか。
僕は、ある夜、男の家に忍び込み、いびきをかいて寝ている男の首を締める。男は、ぐえっという音を立てて、動かなくなる。それだけでは駄目なのだ。台所からとってきた包丁でめった刺しにする。血飛沫が飛び散る。僕は、吐きそうになりながら、その手を洗面所で洗う。
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僕はその足で、彼女の部屋を訪ねる。
彼女の部屋は開け放たれ、彼女は待ちかねたように、僕に抱きついてくる。
「やってくれたの?」 「はい。」
彼女は、僕に細い腕をからませて、頭を胸にあずけてくる。
「本当ね。血の匂いがするわ。」 うっとりとつぶやく。
「ねえ。話をしてちょうだい。どんなだった?」
僕は、何度も吐きそうになりながら、男の体を刺した時の感触を語って聞かせる。僕の話を聞きながら彼女は、頬を紅潮させて、あえぐ。
「素敵ね。あなた素敵だわ。」 もう、その細い腰が、たまりかねて僕の体の上でうごめく。彼女の欲望が、もう、ドロドロになって僕のペニスを咥える。
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彼女が男達と交わるのを何度も見て来た。
だけど、違う。
それらと、ここにある物はなにもかも。
僕と彼女の間にあるものだけが、本当の、本物の行為なのだ。
僕は、この幸福のためなら、ずっと「影」でいい。
意思を持たない「影」でいい。
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